こちらも古い蔵を改装した店舗であり天井が高く雰囲気抜群。カウンター10席ほどにテーブル席がいくつかとそれなりに収容人数は多いのですが、17時の開店と同時に予約客で殆どの席が埋まります。必ず予約をしていきましょう。
日本酒は1合千円前後とまあ、居酒屋としてはこんなもんでしょうか。グループであれば四合瓶で注文してしまったほうが良いかもしれません。地元のお酒が多く観光客にとっては嬉しいラインナップです。
お通しのきんぴら。お通しと侮るなかれ、ゴボウそのものの味が強くアクセントに用いられた肉(?)のコクと相まって魅力的なきんぴらごぼうでした。
「今朝獲れたばかりのアナゴがある」とのことで、天ぷらにしてもらいました。オーダーは紙に記載して店員に手渡す方式であり、順不同で配膳されるのはご愛敬。肉厚のアナゴはフンワリむっちりした食感であり、カレー塩をたっぷりつけて地ビールが進みます。
お造りの10種盛り合わせ。店主の魚に対する思い入れは尋常でなく、伊勢湾を中心とした天然の近海物に仕入れを絞っています。冷凍モノ養殖モノは一切用いず、良い魚が入らない場合は営業を取りやめるという徹底ぶり(その場合は電話連絡アリ)。なるほど魚はどれをとっても一級品であり、ムキムキマッチョでフレッシュなものばかり。やはりお造りとは新鮮さであると、昨今の熟成魚ブームに一石を投じるクオリティでした。
こちらも獲れたばかりのサザエをバター焼きにしてもらいました。ただし調味は控えめであり、サザエそのものの貝の味わいがいつまでも口に残る逸品。
あら炊き。この日の魚はカンパチです。こちらの味付けはコッテリと濃く、カンパチの強い脂にピッタリ。うっかり白米を注文しそうになる美味しさです。
たこぶつ。やはりマッチョで猛々しい味わい。
15種類以上の魚介類を用いた海鮮コロッケ。コロッケというよりは魚介類のミンチカツであり、超高級タコ焼きといった風情です。複雑で奥行きのある味わいであり、本日のアイデア賞でした。
さばの塩辛。美味しいのですが、想像以上に塩気が強く日本酒だけではややキツい。やはり白米が欲しくなる味わいです。
せっかくだから肉料理もと、伊勢赤鶏もも肉をタレ焼きで。雑味がなくあっさりとした味わいです。
〆の食事に私は伊勢志摩名物の「手こね寿司」を注文。「手こね寿司」とは鰹や鮪などの赤身の魚をタレに漬け込み、シャリと合わせて食べるもの。当店は鰹や鮪に限らずその日のイケてる魚すべてがブチ込まれます。シソやガリが混ぜ込まれており万人受けする味わい。
連れは鯛茶漬け。やはり今朝揚がったばかりの鯛がゴロゴロと入っており、茶漬けというよりも魚を食わせる1杯です。
日本酒を中心に結構飲んで、ひとりあたり9千円弱と大変リーズナブル。雰囲気としては居酒屋ですが魚のクオリティでは高級割烹顔負けであり、都心の気取った店で似たような料理を食べれば3倍は請求されるレベルの料理です。この店を悪くいう人は恐らくいない。お伊勢さんへのお参りの帰りに是非どうぞ。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。