ポンドールイノ(Pont d'Or Inno)/三越前

フランス料理界の重鎮、井上旭シェフが手掛けるレストラン「ポンドールイノ(Pont d'Or Inno)」。井上旭シェフは21歳でフランスへ渡り、三ツ星「トロワグロ」や「マキシム・ド・パリ」で腕を磨いた後、帰国後は31歳の若さで銀座「レカン」の料理長に就任。その後の活躍は説明するまでもないでしょう。店名は日本橋の繁栄を祈念して「Pont(ポン=橋)、d’Or(ドール=黄金)」。
これぞフランス料理とも言うべき重厚長大な接客ならびに客層。こういうお店には港区おじさんはやって来ないので雰囲気はとても良いです。ランチコースはいくつかあるのですが、皿数によって値段が変わる従量課金制度。お料理の説明がディズニーランドのアトラクションのような語り口であり、聞いているだけで腹が鳴る。
ランチの料理代金に比べるとワインは相対的に高く感じます。表参道「マノワール・ディノ(Manoir d'inno)」では寧ろ割安に感じたのですが、あれはディナーだったからかなあ。そういう意味で「水でいいです」組にとっては驚愕の費用対効果を誇るランチでしょう。
前菜はアスパラガスにホッキ貝。アスパラガスが美味しい。本当に美味しい。別段ややこしい調理をしているわけではないのですが、素材の味そのままに美味しかった。他方、ホッキ貝には重層的に味を重ねており、ジューシーな貝の風味と相俟って奥行きのある味わいです。
ブリオッシュ(?)でしょうか。バターがきいて食べ応えがあります。この後のパンはシンプルなバゲットであり、ソースが自慢のイノ系列であればこれぐらいがちょうど良い。
メインは仔羊をチョイス。シンプルな1皿ですが単刀直入に旨い。肉の美味しさは当然として、添えられたヤングコーンとそのヒゲやアスパラソバージュで前の皿の余韻を引っ張るあたりセンスを感じます。右手前の脂が強い部位には実山椒でアクセントを置くなど論理的な1皿でした。
デザートは杏仁豆腐風味のアイスクリームにマンゴーたち。美味しいのですが、イノと言えばワゴンデザートであり、公式ウェブサイトにも
「※すべてのコースにワゴンデザートとコーヒー、紅茶をご用意しております。」と記載されているのに何の断りも無しに1皿で済ますのは色々と違うと思う。夢から覚めた瞬間です。
ワゴンデザートは楽しみにしていただけに残念ではありますが、全体を通してみればやはりイノと唸ってしまう、抜け目のない構成でした。お会計はひとりあたり1万円ほどであり、この料理とこの接客・雰囲気を考えると妥当と言える支払金額でしょう。絶対に失敗できないディナーなどに最適。安心安定のイノ系列でした。

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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。