今村将人シェフは「レストランひらまつ広尾」や「ひらまつパリ」などで研鑽を積み、「アイコニック」で料理長を務めた後に賢島へ。ひらまつ初のホテルの料理長として抜擢されました。
最初に本日使用する食材をプレゼンテーション。びょんびょんと動く伊勢海老に透き通った瞳のキンメダイ、今からでも成長を続けそうなヤングコーンと、これはもう、食べる前から今夜の勝利を確信しました。
アミューズは小さなサンドイッチ。このあたりのイノシシをリエットにしたものであり、フォアグラと共にイチジクのジャムで頂きます。生命力を感じる強い味わいに舌鼓。
涼しげな前菜は伊勢海老、ミル貝、アオリイカと志摩湾の三種の神器が出そろいました。いずれも完璧にフレッシュで美味。海の出汁を用いた調味にアクセントのカラスミもすごくいい。シャンパーニュにとてもよく合う。
フォアグラと岩ガキのリゾット。何だかすごい組み合わせである。しかしながら、フォアグラのコッテリとした舌ざわりの岩ガキの凝縮された旨味(かなり火を入れている)が良く合っており、バーンナックルを喰らったかのような衝撃を覚えました。大麦の食感やゴボウの風味も大地を感じて美味しかった。
パンはベーシックに美味しい。今夜の料理は素材が力強いので、これぐらいプレーンなものでちょうど良かったです。
キンメダイとグリーンアスパラガス。これは素材もむっちゃ旨いし調理も完璧です。パリっと焦げた香ばしいかおりに弾力のある歯ざわり、しっとりとした舌ざわり。じんわりとにじみ出るキンメダイそのものの味わい。アスパラも緑の味わいが強く、眩い美味しさです。
ゴロンとしたアワビはもちろん志摩産。キンメダイ同様に押し返すような弾力がありつつも、噛み始めればシットリとジューシーでとにかく美味しい。ホタテガイのムースの迫力も抜群であり美味そのもの。ヒゲまで食べることのできるヤングコーンもスポーティーな味わいであり、本日一番のお皿でした。
お肉料理の前に、その肉から取った出汁を少々。ぐわー、これはコッテリまったりメタメタに旨いですね。かなり攻めた味わいであり、骨メタしそうなほど濃い。このまま麺でも入れてしまいたいほどの頂点を極めた美味しさでした。
メインディッシュは松阪牛。もう、このあたり地元の食材オールスターズであり、料理人としては楽しくってしょうがないのではないでしょうか。ただし意図してか非常にヌルい仕上がりであり、内部に組み込まれた桃の冷たさ相俟って、牛の脂ばかりが悪目立ちしてイマイチでした。他方、付け合わせの水ナスはメロンのようにフルーティーで抜群に美味しかった。
フィナーレを飾るのは鯛茶漬け。ズルい〆かたである。ヅケにした(?)鯛がゴロゴロとぶち込まれており、茶漬けというよりも魚料理に近い迫力。これを美味しくないという人間はこの世に存在しないであろう。
デザートの始まりはパートフィロ(薄いパリパリの生地)に包まれた甘い何か。普通に美味しくこの一口に罪は無いのですが、やはりデザートよりも温度帯が低いメインディッシュに対する不満が呼び起こされました。げに恐ろしきかな食べ物の恨み。
トロピカルフルーツが百花繚乱。果物それぞれの味わいが非常に強く、刺激的な美味しさです。それでも酸味が結構強いためアッサリとパクパク食べ進めることができました。
安定のミニャルディーズにひらまつブレンドのハーブティーでごちそうさまでした。いやー、美味しかった。盤石なひらまつ系列の調理レベルに加え、伊勢志摩の食材の凄味が発揮された割と最強系のディナーでした。1泊2食付きプランなので夕食に係る費用は恐らく2~3万円ほどであり、このクオリティの料理とワインを考えれば大変リーズナブルと言えるでしょう。
やはりひらまつの料理は絶対的に安定していますね。都心はライバルが多く結果として影は薄くなりがちですが、地方のひらまつはその調理レベルをそのまま持ってきた上に地元の食材無双となるので、僻地に来れば来るほど魅力が発露するように感じます。こうなったらひらまつ系列のホテル全部に泊まっちゃおうっと。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。