ひまわり食堂/富山市

富山駅から徒歩で20分ほど。「総曲輪(そうがわ)」と呼ばれる飲み屋街からもうひといき東に向かった石倉町にある「ひまわり食堂」。「ゴエミヨ2020」にも掲載され、富山イチとも名高いイタリアンです。店名がすごくいい。
店内は入ってすぐのカウンター席が4席に、奥にテーブル席がいくつか。ピカピカに磨き込まれたキッチンが舞台のように輝きます。駐車場もあるようで、地元の方のほとんどは車で来ていました。

田中穂積シェフは建築関係の仕事から料理の世界へと転身。都内やイタリアのイタリア料理店にて腕を磨き、地元富山にてUターン開業。
酒が安い。生ビールは600円からそこらであり量も多く、また、グラスワインは800円~。ペアリングという仕組みは無いようですが、ビールの後はお料理に合わせて適当に持ってきてもらいました。
まずはアジのマリネ。健康的で味の強い魚がコロンと盛り付けらえており可愛らしい。中には揚げたジャガイモやピクルス(?)が詰め込まれており、初っ端から凝りに凝った1皿です。
アニョロッティ ダル プリンへのオマージュなのか、水餃子が出てきました。企画モノでもなんでもなくガチの水餃子なのが面白い。ワインビネガーで酸味を足して乙な味。
バイ貝をパクチーソースで頂きます。貝特有の臭みをパクチーの風味でマスキングし、燻した風味の肝でコクを与えます。白ワインにぴったりである。
パンは自家製でしょうか、小さいながらも凝縮感があり小麦の良さが感じられるもの。かなり美味しい。
エンドウ豆に枝豆に空豆を、黒部で造るヤギのチーズと共に頂きます。豆それぞれの緑の味わいとホクホクの食感を、嫌みの無いシェーブルと共に楽しむことができました。
生しらすと岩のりのスパゲッティ。これは美味しいですねえ。磯の香りが強烈に食欲を誘い、海由来の独特の塩気が食べ進める手を止めません。ねっとりとした食感も楽しい。
わ、なんだこれ。マスのコンフィを揚げたマスカツです。確かに富山の国技と言えば「ますのすし」ですが、そのマスをコンフィにして薄い衣で揚げるとは、ありそうでない料理です。優しい魚の味わいにカリサクとした衣の食感、行者ニンニクのパンチのあるソースと、およそ傑作と呼ぶに相応しい1皿です。
メインは池田牛のランプの炭火焼き。ごくごくシンプルな調理ですが、素材の良さを引き出すにはコレが一番という結論でしょう。サイズも大きく、ガシガシ切ってモグモグ食べてワインをガブり。至福のひと時。
付け合わせのサラダもシンプルな使用ですが、野菜そのものが滅法旨い。肉を山ほど食べた罪悪感を中和してくれる名脇役でした。
デザートは黒糖のクレームブリュレ。リッチに用いたバニラに品の良い甘さ、ほろ苦いトップが印象的。味わいの密度が高く、食後感をググっと押し上げてくれました。
結構飲んだし、肉もしっかり食べたし、お会計は2万円弱かなあと予想していると、何とひとりあたり1.3万円で済みました。なんなんだここは。途中、皿出しが遅い場面もありましたが、それがどうしたと全てを圧倒する費用対効果の良さです。
コスパの良さはさておき、料理そのものが凄く美味しいのがいいですね。こねくり回すことなく、いま何を食べているのかハッキリとわかる味と量。記憶に残る料理です。北陸に来るとつい海鮮系から鮨和食の流れとなりがちですが、それらを1回休んででも来るべきお店。オススメです。

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