山崎/西麻布

西麻布の和食「山崎」。山崎志朗シェフは赤坂「もりかわ」で修業を積んだ後、「チウネ」「アカ」など欧米系でも経験を積んだ後に独立。ミシュラン1ツ星です。
厨房をぐるりと取り囲むL字カウンター8席。客席のほうがやや高い位置にあり、厨房の様子が丸見えです。席の間隔が狭く他のゲストの顔は丸見え会話は丸聞こえなので、接待やしんみりしたデートには厳しい。場所柄かオラついた客も多かった。
和食店には珍しく飲み物メニューがありました。ビールは700円だか800円だかで、日本酒も千円強~と、この手の料理店としては良心的な価格設定です。ただ、慇懃無礼な従業員たちの酒の押し売り感が半端なく、これから〆のゴハンだというタイミングで追加の酒を勧めてくるのは思考が停止していると言わざるを得ません。
ホタルイカ。おお!これは旨い!実にフレッシュで雑味がなく透き通るような美味しさです。ホタルイカといえば日本酒で食べるのが定番ですが、こちらに限っては白ワインが欲しくなる味わいでした。
飯蒸し。小柱やフキノトウがゴロゴロと入っており美味。紫蘇の花の香りに酸味のある漬物(?)の隠し味もグッドです。
お椀は桑名の特大ハマグリを。いくつかの個体をネトネトした何かで団子状に繋いでおり、ハマグリという食材の新境地を見出します。ただしスープは上品を通り越してバカ舌の私には物足りなく感じました。
うるいと空豆を白和えで。フランス料理を思わせる濃厚で綺麗な白和えです。
マコガレイは昆布締めとプレーンなものの2種。肉厚でグリグリとした食感。じっとりと旨味を増した昆布締めも良し、ちり酢でサッパリ食べるのも良し。
肝はタレ焼き。控えめなアンキモといった味覚であり、トロンとした舌触りが記憶に残りました。
金目鯛の塩麴焼き。金目鯛を何日か熟成させ、炭火でバリっと焼き上げます。スモーキーな香りが食欲をそそり、じっとりとした食感の肉が粘り強い味わいを放ちます。めちゃんこ旨い。本日一番のお皿でした。
タケノコは香りが良いですね。ただし量がとてつもなく多く、木の芽味噌やワサビをたっぷり付けても途中から飽きが来てしまいました。
肉料理はミスジに花山椒。悪くはないのですが、欧米系肉料理推しの私としては、まあこんなもんかなという印象です。それにしても花山椒を有難がる文化がここ10年ぐらいで急成長しましたが何でなんでしょうね。個人的には実のほうが旨いと思うのだけれど。
お食事はうすい豆のゴハン。付け合わせの筋子の旨味、並びに留め椀の規範的な味わいが心に残りました。
2種類目のゴハン。今度は白米にそぼろ、漬け込んだ卵黄です。万人受けする味わいであり、正直さっきのミスジよりもこうやって食べたほうが美味しく感じました。
デザートはミルクのジェラートに日向夏のコンポートをトッピング。これは抜群に美味しいですねえ。専門店を凌駕する味わいであり、コロナを記念してジェラートだけテイクアウトしたいレベルです。
玉露もナイス。茶葉の甘味がしっかりと感じられる絶妙な温度帯でした。
お会計で驚き、お会計はひとりあたり4万円を余裕で超えました。ビール小瓶と1,200円の日本酒しか飲んでないのに何故why?スタッフに内訳を尋ねると、今夜の料理代金は32,000円(税サ別)とのこと。えー、ネット予約時に27,000円(税サ別)って明記してるのにそりゃないよ。何の理もなく予約時から2割も高く、税サを含めれば6千円以上も追加で徴収されるのはビジネスパーソンとして物凄く違和感。そんな商取引ってある?6千円って言ったらあんた、日本でトップクラスに旨い中華「南方中華料理 南三(みなみ)」で一通りの料理を楽しめますからね。

たった6千円で料理に対する全ての印象が台無しになりました。最初からこの価格を告知されていれば何とも思いませんでしたが、後出しジャンケンは精神的にキツい。こんなことがしたくて料理人になったのかなあ。ガッカリだ。


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