ぼてやん多奈加/富山

富山と言えば豊富な漁場や日本酒などをイメージしがちですが、ソウルフードの最右翼は意外にも「お好み焼き」だったりします。しかもその仕様は「四角い」「厚さ4センチ」「マヨネーズの海」と、大阪や広島の人間からするともはや異次元の別の食べ物。
一番人気のあるお好み焼き屋は「ぼてやん多奈加」。富山駅前すぐにある複合ビル「富山CiC」の地下にあります。食べログでは百名店に選出され、秘密のケンミンSHOWでも取り上げられました。
その「ぼてやん多奈加」 、とにかく並ぶことで有名。注文から焼き上がりまで最低でも30分、混雑時は90分も要することがあり、恐ろしく回転の悪いお店なのです。開店は11時なのですが、一時期は9時台から並んでいた人もいたとかいないとか。
さすがにお好み焼きのためだけに時間の限られた旅行者が何時間も待つのはキツいので、裏技(?)としてテイクアウトを活用しました。電話でも予約できるそうですが、繋がらないことが殆どであり、直接行って注文するのがストレスが少ないでしょう。
お店に入り、店員のお姉さんに持ち帰りである旨を告げます。オーダーと名前、携帯電話番号を告げ、先払い。焼き上がり予定は50分後なので、そのころにまた戻って来るよう指示されました。横目でチラりと見える製作途中のお好み焼きたち。おおー、たしかに座布団というかクッションというか、四角い!分厚い!
ぴったり50分後にお店に戻ると、すでにラッピングの上、発泡スチロールの保冷ボックスの中で注文品が待機していました。「いかそば」と「ぶたたま」。いずれも780円です。
まずは「いかたま」。これは別に普通の焼きそばですね。太麺であるのが特徴的ではありますが、特にコシがあるとか何かとかはありません。普通の屋台の焼きそばと大差なし。神保町「みかさ」大門「りょう」のほうが圧倒的な迫力を感じます。
主題の「ぶたたま」。繰り返しになりますが、四角いです。テイクアウト用のパックに怖いくらいにスッポリと収まっています。恐ろしい子。一口サイズのキューブ状に切り込みが入れられており、フレンチトーストのような印象も受けました。外皮はサクサクに香ばしく、内側はフワフワと優しい食感。具材はキャベツが主体です。
加えて津波のようなマヨネーズの量。私はマヨネーズは好きな方ですが、それでもさすがにこのビジュアルには腰が引けてしまう。

総括すると、食感こそ印象的ではあるものの、味わいはマヨネーズとソースの風味に負けてしまっており、まあ、中くらいのお好み焼きです。これは決して当店の悪口を言っているわけではなく、そもそもお好み焼きとはそういう食べ物です。そういう意味で、あまり思い入れのない観光客が何時間も待って食べると肩透かしを食う恐れがあります。あくまでソウルフードと理解した上で訪れましょう。


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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。