タンモア(Le temps moelleux)/赤坂

ミッドタウンの裏手の住宅街の雑居ビル地下1階にあるフレンチ「タンモア(Le temps moelleux)」。ちょっと外観が北島亭的というかラウンジ的というか、フォント等も含めてレーザディスクのような懐かしさがあります。
店内は白を基調とした素敵な空間です。 店名は「柔らかな時間」という意味。田中いずみシェフは横浜元町や鎌倉のフレンチレストランで経験を積んだ後、渡仏。3年半の修行を経て2018年9月に当店を開業しました。
アルコールペアリングは4杯で4,300円とリーズナブル。きちんとシャンパーニュまで含まれているのが嬉しいですね。ワイン選びのアドバイザーはライターのムッシュ葉山考太郎が務めています。
アミューズは「白レバーと砂肝のコンフィ、クレソンのサラダ」。これがアミューズかと驚くほどの印象の強さならびにポーションであり、さっそく恋に落ちてしまいました。白レバーと砂肝がたまりませんな。酒飲みには溜まらない幕開けです。
前菜は「カツオとソッカのミルクレープ - 2020 -」。ソッカとはニースの名物であるヒヨコ豆のクレープであり、それとカツオを幾層にも重ね合わせミルクレープに仕立てました。これは凄い凝りようだ。味覚も酸味主体で爽やか。
パンはキューブ型のブリオッシュ。前日に広尾「レストラン オカダ(OKADA)」で外観が全く同じブリオッシュを食べたばかりなのですが、味は全然異なります。ブリオッシュにも色々あるのだ。その他、もう一種丸っこいパンも自家製。
お魚料理は「マツカワとパンチェッタの白湯仕立て ~ ベトナムの風 ~」。マツカワとはカレイの仲間であり王様。トロっとした舌触りに強い旨味が特長的で、ヒラメに負けない美味しさです。白湯スープ(?)との相性もピッタリであり、フォーやパクチー、ライムも含めフュージョンな1皿でした。  
メインは「たこ焼きを詰めたウズラのロースト、青ノリのソース」。へ?ウズラにタコ焼き?マジで?と耳を疑いましたが、どうやらマジのようです。ソースがどことなくタコ焼きソースのような味覚に思えてくるのが面白い。
中央で真っ二つに捌いて頂きました。うおー、これは美味しい!本当にタコ焼きがウズラのお腹に入っており、それも奇妙にマッチングしているのです。ウズラの肉は当然に旨いし、タコも乙な味。構成要素それぞれがきちんと美味しい。奇蹟とはコロラリーであり、必然が組み合わさったものである。
デザートは「日本の酒の饗宴 - 2020 -」とのことで、甘酒やみりん、梅酒など日本独自のアルコールがデザートへと変幻自在。ババロアのような舌ざわりの何かがとても美味しかった。
お茶はローストゴボウのハーブティーを選択し、これまた手の込んだ小菓子で〆てごちそうさまでした。

お料理は税込5,800円、ワインは4,300円、サービス料は取らず計ひとりあたり10,100円。このクオリティの料理ならびにワインを摂ってこの支払金額はベリー・リーズナブルであり、食後感は最高です。基本はしっかりとした上で遊び心を感じさせる料理であり、面白く、そしてここが一番重要なのですが、きちんと美味しい。良いお店を見つけました。次回は夜に、フルパワーの料理とワインを味わいにお邪魔したいと思います。


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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。

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ブラチェリア デリツィオーゾ イタリア(BRACERIA DELIZIOSO ITALIA)/恵比寿

恵比寿の人気イタリアン「DELIZIOSO ITALIA(デリツィオーゾ イタリア)」がリニューアルオープン。新たな店名は「BRACERIA DELIZIOSO ITALIA(ブラチェリア デリツィオーゾ イタリア)」であり、熾火(おきび)という炭や薪を使った昔ながらの調理法を用いた料理が自慢とのことです。
店内は厨房を取り囲むカウンター席と、その外側をぐるりと取り囲むテーブル席。テラス席(?)もあって結構な広さです。内装は山小屋を彷彿とさせるウッディな雰囲気。
ランチセットに付随する前菜盛り合わせ。これが結構凝っていて、ジャガイモのスープなど堂に入った味わい。全体として味付けが濃く、昼間からワインが欲しくなります。
パンはシンプル。後の料理のソースなどをつけて楽しむにちょうど良い素朴な味わいです。
私はメインディッシュがひとつ付くセットを注文。この日のお魚はタイだったのですが、これがハンペン2枚分以上はありそうな特大サイズであり、1,800円のランチとしては信じがたい食べ応えです。野菜もたっぷりで健康的。
連れはパスタ。丸々1杯のワタリガニのパスタであり、これが1,200円のランチとは何かのバグかもしれません。ひとくち味見させて頂きましたが、甲殻類の旨味にトマトの酸味、クリームのコクが加わり美味。
食後のお茶に小菓子(イタリアのチョコレート)もついてきました。
驚きの費用対効果です。何でも夜は3,800円でプリフィックスコースを提供しているそうであり、それもまたリーズナブルな価格設定。次回は夜に、自慢の熾火で調理した肉を食べに来ようかな。良いお店です。オススメ!


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恵比寿中華 泰山/恵比寿

恵比寿駅東口から徒歩7~8分。ビール坂の途中にあるビルの2階にある「恵比寿中華 泰山」。2020年2月にオープンしたばかりの新店です。
「和みの空間で味わう本格広東料理」 がコンセプトであり、なるほど個室の内装に始まり女子従業員のコスチューム、九谷焼の器と、色々と和っぽい雰囲気です。今回はランチでの訪問。
全てのランチセットに共通する前菜3点盛り。左上は「大山鶏のよだれソース」で盤石の美味しさ。左下は「ホワイトアスパラ豆腐」で美味しい片鱗を感じさせるのですが、いかんせんサイコロサイズのポーションであり判断が難しい。右の「ホタルイカと春野菜の春巻き」はベリーグッド。パリパリとした食感にホタルイカの苦みと旨味が実に良く合う。
私はメインに「美明豚(びめいとん)の黒酢酢豚」を注文。1,900円です。
この酢豚は斬新。ダイスカットされたケチな肉片ということはなく、そのままトンテキにでもできそうな厚さ大きさを誇る豚肉が気前よく酢豚にされています。酢豚というよりは何かあたらしい豚料理の提案のようでもある。黒酢主体の味付けはオーソドックスで素直に旨い。
スープもグッド。透明な細いやつはフカヒレかなあ。全般的に濃い目の味付けであり、私好みの芸風です。
ライスは一般的な味わい。おかわりOKとのことでした。
連れは「四川麻婆土鍋」がメイン。少し味見させて頂きましたが、肉の直系が大きくムシャムシャと食べ応えがあります。他方、豆腐は悪い意味でフレッシュな舌触りであり、もう少し野趣あふれる力強い豆腐のほうが肉とのバランスは良かったかもしれません。
デザートには自家製の杏仁豆腐に甘夏のソース。ランチセットのデザートとしては実にハイクオリティでありOCです。
いずれのセットメニューも2千円近くするためランチとしては決して安いほうではありませんが、その質は確かであり、結果としてリーズナブルに感じました。個室を使えば会食とかにも良さそうです。まずはランチでどうぞ。


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Grillマッシュ/恵比寿

恵比寿駅から徒歩7~8分ほどの場所にあるステーキ・ハンバーグ専門店。食べログでは3.66ながら百名店入りしています(2020年4月)。
木目調の内装であり、コンパクトなハングリータイガーといった雰囲気です。ゲストは近所の会社員が殆どであり、意外にも女子が多い。
ランチに付随するサラダは、人工的なドレッシングに新鮮でない葉っぱ、、、いわゆるランチに付随するサラダ味です。
「ハンバーグコンボ」という、160グラムのハンバーグがふたつ乗ったものを注文。手前はネギ塩ソース、奥はガーリックソース。いずれのソースも暴力的にどぎつい味わい。ハンバーグそのものは肉の挽き方が細かくカマボコを食べているような食感。ファミレス程度の味わいであり、あまり私のタイプではありません。
プラス250円でカレールーを追加することができるのですが、これもやはりファミレス級の味わいでした。
食後の飲み物が付いて1,950円。恵比寿のランチという意味では、まあ、こんなもんでしょうか。これといって特長の無い無難なハンバーグです。1キロハンバーグなどもあるようなので、そういった企画モノとしてお邪魔するのが良いかもしれません。まずはランチでどうぞ。


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鮨人(すしじん)/富山

富山で一番人気のある鮨屋と言えばココ「鮨人(すしじん)」。食べログ4.24(2020年5月)でブロンズメダル獲得。昼夜2回転づつ1日に60人のゲストを受け入れる驚異的な仕事量の鮨屋です。処理するゲスト数が多いので、意外に直前でも予約が取れます。
木村泉美シェフはもともと建築・設計関連の仕事に就いていたのですが、鮨好きが高じて独学で鮨の道に入り独立開業。月の大半を海外で過ごし、世界的な料理人とのポップアップイベントも数多く手掛けるなど、いわゆる伝統的な鮨職人の斜め上の視点です。
アルコールはビールや日本酒などを頂いたのですが、いずれも1杯千円かそこらでしょう。「ウチは街の鮨屋なんで!」とざっくばらりとした雰囲気の大将。ゲストに対する気遣いがあり、フランクで楽しい雰囲気の鮨屋です。
まずは越中バイ貝。スダチをギュッと絞り、旨味の強い塩でバリっと頂きます。コリっとした歯ごたえも良く、素敵な導入です。
さっそくにぎりが出てきました。プリっと弾けるような食感のエビ。シャリが特徴的で、ギリギリに精米し直前に炊いて赤酢に混ぜて仕上げるそうな。米の一粒一粒に存在感がしっかりとあります。
海老を紅白で。左は富山の名物「白海老」。フレッシュながら舌に吸い付くような甘味があります。
カワハギ。ネギトロのようなミンチ上のものを肝で和えています。シャリとタネの量が反転しているのではないかと心配するほどの頭の大盛であり、味の濃い海苔と共に思わず笑みがこぼれます。
「梅酢餡の茶碗蒸し」。具の無いシンプルな生地に梅酢餡が注がれており、コチョコチョと混ぜてグイっと飲むように食べます。なんでも富山の湧き水を用いて作っており、毎週律儀に汲みに行くのはもちろんのこと、イベントの際にも連れていくそうな。
アジのたたき。まさに健康優良児といった元気いっぱいの噛み応えであり、派手な味付けについつい酒が進みます。ところで昼夜2回転づつをこなすだけあって、大将のにぎりと厨房の連携が完璧。チャッチャカチャッチャカとタイミングよく皿が出てきます。
オニカサゴ。フレッシュで透明感のある味わい。しかしやはり弾力は強く、しっかりと魚を食べているという実感があります。
アオリイカ。細かく細かく包丁が入っており、トロトロと水のような喉越しです。くちどけが見事で口腔内にへばりつき甘味が強調されました。
小丼はシャリにズワイガニを混ぜ込み、ウニとイクラを重ね合わせます。これは当然に旨い多重奏であり、これを不味という人間は極刑に処せられます。
ヒラメは昆布締めされているのですが、しっかりと弾力は残っています。私は料理に食感を求める主義なので、このあたりの魚はガチタイプです。
前述の白海老をコノワタ(ナマコの内臓の塩辛)で和えたものに、ホタルイカのジャーキー。日本酒乾燥機とも言うべき1皿であり、左党には堪らない逸品です。
クロムツ。うおー、これはめちゃんこ旨いですねえ。どでかいサイズにホロホロと崩れる身のこなし、焼き目の香ばしさ。本日一番のにぎりです。
サクラマス。このあたりの名産が続きます。味が濃く迫力のある味覚です。
鰻の白焼き。「さっき捌いたものを焼いただけ」とのことですが、東京のダレた蒸し鰻とは丸で別の食べ物です。バリっ、ザクッ、ジュワ!
サワラは燻製にかけたのか、ハムのような仕上がり。プイィ・フュメとか合いそう。ギョクはバームクーヘンのような重層が特徴的。
大トロは和歌山産。王道中の王道といった味わいです。
このあたりではコハダは獲れないとのことで、マイワシ。程よい締まり具合であり、適度な脂の強さもあって私好み。
鉄火巻き。シャリは少なく海苔とマグロの味覚が支配的であり素直に美味しい。
カサゴとノドグロのしゃぶしゃぶ。うーん、美味しい。程よく熱を通したおかげか甘味が増し、食感にもグラデーションが生まれています。鬼おろしや木の芽のアクセントもすごくいい。
ノドグロのネギマにズワイガニのにぎり。先のしゃぶしゃぶはメスですが、こちらの焼き鳥風では脂が強いオスを用いています。ジューシーで猛々しい脂が堪らない。
かぶす汁。富山の郷土料理とも言うべきごった煮エスプレッソです。魚の骨と血を水だけでひたすら煮詰める、日によって材料によって味の異なるスープ。まさに海の幸を凝縮した味わい。これに麺をぶち込んだだけでラーメン業界を制圧できそうな暴力的な魅力があります。
ラストは穴子。とろとろとしたアタックではありますが、噛み応えをきっちりと残した絶妙な食感です。ツメの調味も強く私好み。
デザートは塩ミルクのジェラートを最中で挟みます。この最中が抜群に美味しい。米の香がプンプンに漂い、まるでおせんべいを食べているかのような、記憶に残る味わいでした。
食後にお出し頂いたお茶。くわー、これは甘い。砂糖の甘さではなく、お茶本来のピュアな甘味が詰まっています。その辺の寿司屋の雑なアガリとは次元の異なる液体であり、強く意志を感じました。
オマケで二番茶をコールドで頂いてご馳走様でした。以上、一通りを食べて所要時間は1時間!速い!新幹線の予約を慌てて前倒ししました。お会計は2万円強と銀座の半額最高か。

味やテンポの良さもさることながら、大将の雰囲気も素敵ですね。思わずアニキと呼びたくなる格好の良いオヤジであり、革ジャンが似合いそう。気さくに声をかけてくれるのですが、手は仕事を継続しており曲芸に近いスループットを誇ります。一方で、映画を早回しで観ているかのようなスピード感であり、いきなり本番が始まって終わってしまったような感覚は拭えないので、人によっては情緒が無いと感じてしまうことでしょう。

勿体ぶらずに旨い魚をひたすら貪り食う、それぐらいの腹積もりでお邪魔すると良いかもしれません。気の置けない仲間同士でどうぞ。


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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

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