食べログでは4.55(2020年4月)でゴールドメダル獲得と、焼鳥屋としてだけでなく飲食店として東京を代表する1店となりました。
池川義輝シェフは人材派遣会社でサラリーマンとして働いた後に焼鳥の道へ。中目黒「鳥よし」で修業を重ねた後に独立。頂点を極めたにも関わらず焼き場に立ち続ける様は求道者そのもの。「カンテサンス」岸田シェフに通じる凄味を感じました。そう、私は料理人が厨房に立たずに監修という名のビジネスに走った時点でその店は終わりと考えているマイルドな保守なのです。
飲み物のほとんどは千円以内に収まる、いわゆる普通の居酒屋価格です。客層も良いですね。いわゆる予約困難店には予約困難という点にだけ価値を見出すオラついた阿保な客が多いのですが、当店は昔馴染み主体というか、1~2人で焼鳥をしみじみと味わうゲストが多かった。BGMが無いのも良いですね。炭がパチパチと爆ぜる音が心地よい。
まずはお通し。恐らく自家製のものでしょう。素材よし漬け具合よし。高級和食で頂くものに比肩する美味しさです。また、大根おろしは箸休めに最適。おかわりとしてなんぼでも持って来てくれます。
かしわ。いわゆるモモ肉です。ムキムキマッチョな歯ごたえで、肉食ってるなあと印象付けてくれる1本です。ちなみに鶏肉は福島産の「伊達鶏」を丸鶏のまま生産者から仕入れているそうな。
砂肝。塩コショウのみのシンプルな調味であり、シャキシャキとした食感が楽しい。そうそう、当店はおまかせコースのみであり、ストップをかけない限り永遠に出続けます。腹8分目ぐらいで「そろそろ」と声がけすると、現在準備している数本を出して終わりという仕組み。
かわ。近めの強火でガっと炙り、脂身の嫌なクセはどこへやら。
なんこつ。こちらも塩コショウのシンプルな調味。ザクザクコリコリと独特の食感です。
白玉。うずらの卵です。表面はしっかりと火が通っているのに、黄身は半熟。どうやって串に刺しているのだろうか。
はつ。心臓ですね。牛や豚のハツに比べると繊細ではありますが、カットがナイスにビッグなのでムシャムシャと食べ応えがあります。
ぎんなん。かなりの強火で炙っており、ホックリとした食感とバリっとした歯触りの対比がグッドです。
オクラもズバっと強火で攻めてきます。バスバスとした表面にトロりと流れ出る中身の滑らかさよ。
つくね。これは美味しいですねえ。ハンバーグのようにしっかりとしたサイズ感なのですが、口に含むとハラハラと解けるような口当たり。
せせり。しっかりとした歯触りであることが多い部位ですが、当店のそれはジューシーに柔らかい。肉と脂身のバランス感覚が素敵でした。
肉のラストは血肝。サラっとしたタレで味付けされた深みのあるレバー。独特の臭みは見当たらず、口の中で表面が決壊し、何とも美味なるダム決壊です。
厚揚げ。やはり強火でバリっとした食感ですが、内部はツルツルとした豆腐の滑らかな舌触り。薬味の存在も見逃せなく、〆の1本として最適でした。
アガリとして鶏スープが供されます。今夜の集大成とも言うべき濃厚な味わいであり、ああ、これでラーメンが食べたい。
連れは鶏のスープを用いたお茶漬けを注文。味見させて頂きましたが、海苔の風味が結構強く、先のスープとはまた印象が異なる。レアめの鶏肉がドカドカ入っているのも二重丸。
お会計はひとりあたり8千円強。おおー、これはお値打ち!最近のちょづいた焼鳥屋はすぐに1万円を超えてくるのに、トップオブトップで飲み食いしてこの支払額というのは嬉しくなる。
大将をはじめとして従業員全員がホスピタリティに満ちており、ゲストに緊張感を強いることなく心から焼鳥という文化を楽しめることができます。唯一無二の絶品!という料理というわけではなく、日常に寄り添うごくごく普通の焼鳥であり、とにかく基本に忠実。毎日でも食べたい素朴さがあり、ある種の美学を感じました。オススメです。やっぱ焼鳥ってこうだよなあ。
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