霜止出苗(シモヤミテナエイズル)/札幌

札幌の知る人ぞ知るフランス料理「五十嵐」の五十嵐シェフが約1年の充電期間を経て、すすきのから少し離れた中島公園近くに「霜止出苗(シモヤミテナエイズル)」をオープン。お店に看板は無く、軒先でソムリエールが待っていてくれます(写真は食べログページより)。
ランチは14:00~と変わった時間から一斉スタート。料亭のようなアプローチであり、靴を脱いで畳敷きの掘りごたつ的カウンターが6席のみというカッコいい空間。背中側にある桐箪笥のワインセラーが圧巻です。
飲み物メニューは特になく、ソムリエールに飲む量を伝えて後はお料理に合わせてもらいます。最終的な支払金額から逆算するに1杯2千円もしなかったはず。
まずはふきみそ。味噌はほとんど用いておらず大地の味わいをフルパワーに引き出します。これは酒が進む。
イワシとカズノコの塩麹漬けだったけかな?当店は小皿が恐るべきテンポの良さで連続的に提供されるため、フラッシュ暗算的に脳みそを使う食事です。そしてどの皿も例外なく酒を呼ぶ。
サヨリと梅の酢漬け。サヨリのフレッシュな味わいに梅のコリコリとした食感ならびに酸味がベストマッチ。
ホタテにホタルイカ。はっはっはっ、これはもう完全に酒飲みの発想ですねえ。思わず日本酒に手が伸びそうになりました。これでいてシェフはフランス料理出身だというから恐れ入る。
アンキモ。いったん濾してから成型しているためか非常に滑らかな口当たり。いわゆる肝っぽい臭味はどこにもなく、ブラインドで食べればアンキモだとは答えられないかもしれません。
つぶ貝とキウイフルーツ。コリッコリに健康なツブ貝にキウイの甘味と酸味が綺麗に寄り添います。調味で酸を強めており、白ワインによく合いました。
鰤とパイナップルのスモーク。ハムのようなタッチのブリの凝縮感といったらない。塩漬けしたパイナップルからもスモーキーな薫香が漂い、どこまでもオシャレなガリを食べているような気分になりました。
ヒラメに片栗。片栗とは春の山菜であり実にパワフルな味わいです。厚く切りつけられたヒラメと共に見た目以上に食べ応えのある一皿です。
カスゴにやはり山菜。そうそう、当店の山菜はシェフ自らが山に入って採取してくるものであり、新鮮という次元を通り越して野性味すら感じさせてくれます。
メヌケに山菜。植物の名前に疎く山菜としか記すことができず申し訳ない。こちらも魚の身のカットが大きく、ムシャムシャと魚喰ってる感を演出してくれます。
塩辛にアスパラ、フキノトウ、行者ニンニクなどなど。塩辛の旨味に野菜たちの甘さがズバっとハマり、輝かしいセンスを感じさせる調味でした。
特大のホタテにじっくりと火を通し細やかに包丁を入れます。味付けはバニラ風味のキャラメル。これは普通に醤油系統の味付けのほうが私は好きかもしれません。
行者ニンニクのワンタンに解禁したばかりのシャコ。ジュワっとジューシーなシャコに行者ニンニクのパワフルな味覚が迫りくる。ワインをガブり。朕は国家なり。
スペシャリテのコハダのテリーヌ。見てください、これ全部コハダなんです。上品に締めたコハダを大場やショウガなどと共に幾重にも折り重ね、生ハムで巻き付けます。紛うことなきコハダなのですが、鮨屋で食べるコハダとはまるで別の料理を食べているような気がしました。
茶碗蒸しには特大の牡蠣が加わり、トップをウニが飾ります。強烈な存在感を放つ食材であるはずなのに、不思議と調和している不思議。これが、料理だ。
〆の食事はキンキ、毛ガニ、ウニの贅沢三昧な混ぜご飯。これはもう、文句なしに旨いですね。スタンハンセンにパイプ椅子を持たせたような反則技的な美味しさでした。
留め椀(?)に甲殻類のスープ。毛ガニの味わいが毛ガニよりも詰まっており、後の毛ガニ2.0である。
魚介のすり身がたっぷり詰まった玉子焼きで〆てごちそうさまでした。

飲んで食べて2.5万円。これは安い。ニトリも真っ青のお値段以上です。北海道の食材の素晴らしさはもちろんのこと、無駄を削ぎ落し余計な手を加えず、素材の良さを存分に引き出す調理でした。手際の良さは圧巻の一言であり、設計図が目の前のプロンプターに投影され、それに従い光の速さでテキパキとコースを完成へと押し進めます。頼りがいのある大将の雰囲気にも素敵で、思わずアニキと呼びそうになりました。

札幌の鬼才ここにあり。超オススメ。次回は夜にお邪魔します。


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