龍天門(リュウテンモン)/恵比寿

ウェスティンの広東料理レストラン「龍天門(リュウテンモン)」。2018年にリニューアルオープンし、料理長も和栗邦彦シェフへとチェンジ。香港で修業を積んだ広東料理一筋30年の実力派。ミシュラン1ツ星です。
ホテルのダイニングだけあって広い。個室やらボックスシートやらを含めると100席以上あるのではなかろうか。サービス料は13%に消費税が10%でメニュー表で見た金額よりも全然高くつくので慎重に。ウェスティンはSPG系のホテルなので、その筋の上級会員だと20%オフになります。それにしても空いている。
「どこもガラガラね」ナショナルフラッグキャリアに勤める彼女は小さな溜息をついた。「こんな時でも乗ってくれてありがとね。あたしよりもあなたのほうが飛行機に乗っている回数、多いんじゃないかしら」彼女は自虐的に笑う。ちなみにこの写真は私が4月の中旬に乗った際に撮ったもの。777に10人も乗っていませんでした。
我々は最も安いランチコースを注文。「三種前菜盛り合わせ」は鶏肉・鴨肉・鯛の南蛮漬け(?)。鶏肉が深みのある味わいで美味しかった。

「今となっては飛行機が公共交通機関で一番安全なんじゃないかなあ。常に機外から新しい空気を取り入れてるし、フィルターもついてるし、そもそも人は乗ってないし」
「蒸し点心三種」はエビギョーザにイカシューマイ、ミンチ肉を包み込むもち米。美味しいのですが唯一無二の何かは無く、いわゆる一般的な高級中華料理店のそれと同等です。

「みんなスタンバイで家でじっとしてる。この前1ヵ月ぶりに仕事があったんだけど、4月のお仕事はその1往復だけなのよ」家でじっとしてるだけでお金が貰えるんだから最高じゃないか、私はからかうと「あたしはお金が欲しくてCAになったわけじゃない」と小さく睨み返されました。
大根餅はジャンクな味覚であることが多いですが、当店は実に実に上品で、大根の風味がきちんと伝わってきます。揚げ点心はエビだったっけな?味そのものよりも食感が記憶に残りました。
連れが選んだ「ガツのスープ」。調味が薄く上品すぎるとのことでした。個人的には店員が「ガチのスープです!」と言っているように聞こえておかしかったです。

「せっかく制服も変わったのに、まだ1日しか着てないんだよね。乗る時も知らない人ばっかりだし、まるで違う会社になったみたい」彼女の眉間には皺が寄りっ放しだ。まあまあ、今の環境でベストを尽くそうよ。つらい時でもベストを尽くすんだ。
私が選んだ白菜(チンゲン菜?)のニンニク炒め。クリアな味わいで美味しいのですが、やはり繊細で清澄すぎるきらいがあり食べ応えに乏しい。

「今日の飲食業界は明日の航空業界ね。でも、みんな補償だ何だって騒いでるのはちょっと違うと思う。自粛の協力金とか一律10万円とかじゃなくって、ボトルネックの医療資源の強化に戦力を集中投下するべきだと思うんだけれど」趣味コロナの彼女はなかなか鋭いことを言う。
ご飯ものと麺類は連れと半分づつ頂きます。こちらは牛肉あんかけ飯的なもの。これ系の牛肉はモソモソでエグ味が出ているのが常ですが、当店のそれは実に柔らかく、茶色だというのに気品あふれる味わいでした。
選択肢にはなかったのですが、追加料金で担々麺。龍天門の代名詞とも言うべき裏メニューであり、表メニューの何よりも有名になってしまったスペシャリテです。

上質な白ごまがエスプーマっぽくきめ細やかに泡立っており、目をつぶって食べれば前衛的なフランス料理のソースを舐めているかのよう。麺も細麺ながら食感が強く、わが心の担々麺白ごま部門でトップに躍り出ました。
付け合わせのザーサイがめちゃんこ旨い。こういった何でもないオマケのレベルが高いのが名店の名店たる所以でしょう。

「そういう意味で、ANAの医療用ガウン縫製支援は凄く良いことだと思うけどね。それを『女性差別』とか言って、外野がヤイヤイ言ってくるのは原辰徳。自分たちは全く手を動かすつもりもないくせにね。とりあえずは前に進み始めた、問題があれば適宜修正する、それでいいじゃない」
デザートのマンゴープリンも絶品。その辺のゼラチンぶよぶよなものとは一線を画し、俺はマンゴーを食べているということがはっきりとわかる、果実味溢れる甘味でした。

お会計は飲み物を除いて4,500円。ラグジュアリーホテルのダイニングのランチと考えればこんなものかもしれませんが、倍払えばマンダリンの「センス」で食べ放題に持ち込めることを考えると、やっぱりちょっと高いなあ。
一通り食べた中では担々麺がダントツに美味しかったので、これを単品で注文するのが勝ちパターンなのかもしれません。おや、ホームページを見てみると、平日限定で飲茶オーダーブッフェをやってるじゃないか。今度はこっちを試してみようっと。


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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
1,300円としてはものすごい情報量のムック。中国料理を系統ごとに分類し、たっぷりの写真をベースに詳しく解説。家庭向けのレシピも豊富で、理論と実戦がリーズナブルに得られる良本です。

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