鮨 一條(いちじょう)/人形町

今は昔、「都寿司」があった場所に居抜きでオープンした「鮨 一條(いちじょう)」。かつては「日本橋蠣殻町すぎた」が営業していた場所でもあり、何とも言えない貫禄を感じるファサードです。
一條聡シェフは人形町「六兵衛」で24年間鍛錬を積んだ後に独立。江戸っ子気質のある親分であり、気前よくお年玉をくれそうな叔父さんのような雰囲気です。
ビールは千円を切り日本酒も1合千円~と、この手の鮨屋としては良心的な価格設定。酒のラインナップこそ少ないものの、私は酔えれば大体オッケーなのである。
今回は大将に完全におまかせ。まずはマコガレイ。クリアにコリコリっと始まります。
シャコは凝縮感があり旨味が詰まっています。さっそく冷酒が欲しくなりました。
子持ちヤリイカ。もっちりした食感が面白い。ツメが濃く私好みの味付けです。
蒸し牡蠣。これはまあ、料理というよりも素材です。当然に美味しいですが、見た目以上の驚きは無かった。
ホタルイカにトリガイ。いずれもフレッシュで食べやすい。パンチのある酢味噌の調味がグッドです。
カニとウニ。温度を上げており全体として甘味が増しているような気がしました。
カツオは健康的で逞しい味わい。玉ねぎポン酢に生姜を加えて食べ、青少年のような爽やかさを感じました。
フグの白子。これは見事な味わいですねえ。ネチョっとした表面を恐る恐る割ると、トロリと溶ける官能的な半液体。タレ(?)をたっぷり絡ませて至福のひと時。
にぎりに入ります。ヒラメにバリっと醤油を塗って出すのは珍しい。
サヨリは清澄な味わいなのですが、やはりバリっと醤油を塗り立てます。シャリは赤酢を用いており味が強く、中々に攻撃的な風味です。
赤貝がこれぞ江戸前といった仕様であり食べ応え抜群。当店の主張を聞いたような気がしました。
サバも美味しい。サバそのものの味が濃く、醤油もシャリも全部濃い。
マグロも常識的に美味しいのですが、ここのところマグロに特化した鮨屋も多いため、相対的に印象に残り辛かった。
コハダは私の口には合いませんでした。あまりに酢が強く脱水症状を起こしており、酸味を通り越してただただ酸っぱかった。
他方、煮ハマグリはべらぼうに旨い。思いきり味濃いめに炊いており、トドメに煮詰めを塗りたくるという攻撃性。ギュギュギュとした食感と共に爆ぜる旨味。これは日本酒にドンピシャ。これはにぎりではない、ツマミである。
お椀は貝の吸い物。エキスが濃縮されています。
車海老。ギャルとお邪魔していたからか、ふたつにカットしてくれました。優しい世界。
小柱は貝そのものよりもシャリと海苔の風味の濃さが印象に残りました。
ウニ。そういえばここの軍艦の巻き方は独特で、キレイにくるりんちょと巻くのではなく、かなりの余白を残して流すように固めます。正直なところ食べ辛い。
アナゴは塩とタレの2種を食べ比べ。なのですが、ベースの味付けならびにシャリの風味が強いので、塩でもタレでも有意な差は見いだせず。
ギョクは変わった造形で供されます。ほんのりとした甘味にカステラのような舌触り。
巻物はヒモキュウ。貝のコクとキュウリのフレッシュな香りの対比が良かった。

お会計はひとりあたり2.5万円ほど。タネ質や量を考えればこんなものでしょうか。繰り返しになりますが全体的に味が強く硬派すぎるきらいがあり、人によっては食べ疲れるかもしれません。レーダーチャートの面積がすこぶる広い王道中の王道。江戸前寿司とはこうであると説明したい時にどうぞ。


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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

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