ICARO miyamoto(イカロ)/中目黒

中目黒で一番のイタリアン、と言っても良いでしょう。ミシュラン1ツ星「ICARO miyamoto(イカロ)」。食べログは3.99(2020年4月)と圧倒的な高評価であり、ブロンズメダルを獲得しています。店名はギリシャ神話のイカロスより。
店を統べるのは宮本兄弟。弟の宮本義隆シェフは北イタリアで修業し帰国、ワインオタクの宗隆兄ちゃんがサービスを務めます。
グラスワインは千円強から始まる手頃な価格設定。ペアリングという仕組みは特に無く、客の気分に合わせながら上手くグラスを開けていくという流れです。お料理もアラカルトでの注文が基本です。
桜マスの軽い燻製とブッラータ。ぐわー、このエモいポーションは何なんでしょう。100グラムは超えていそうなサイズ感であり、先頭打者ホームランです。じっとりと甘いレアな部分と火が通った部分、パリパリに香ばしい皮目と味覚のグラデーションが楽しめる逸品です。
ソップレサータ(soppressata)のソテー。ソップレサータとは豚の色々な部位の煮凝り的なものであり、トスカーナ州のシエナ地方の郷土料理です。フレンチだとテット・ド・フロマージュですね。下ごしらえの時点で脂が落とされており以外にサッパリ。加えてソテーもしてあるので、濃厚ながらもパっと食べやすい一皿でした。
パスタに入ります。スパゲッティはサクラエビのトマトソースで。サクラエビの旨味ならびに全体として塩気が強く、炭水化物ながら酒を呼ぶ味わい。
手打ちのパッパルデッレは濃厚なエゾ鹿の煮込みソースで。肉がゴロゴロとたっぷり入っており、途中からパスタ料理なのか肉料理なのかわからなくなってしまいます。もちろん赤ワインにもピッタリ。
フォカッチャは素朴な味わい。北イタリアの郷土料理主体でコッテリした味わいが続くので、パンはこれぐらいシンプルなものでちょうど良い。
十勝ハーブ牛の炭火焼き。部位はランプであり、腰からお尻にかけての大きな赤身です。脂身は少なくサッパリとした味わいでスイスイと食べ進めることができます。肉質もきめ細かであり、肉の美味しさがパーフェクトに引き出された調理です。
連れのデザートはチョコレートのテリーヌ、ピスタチオジェラート添え。ひとくち頂きましたが、このジェラートは美味しいですねえ。空気をたっぷりと含んだ滑らかなタイプです。
私はピスタチオのクレームブリュレにリコッタチーズのジェラート添え。やはりジェラートが抜群に旨い。その辺のアイスクリーム屋のそれとはまるで異なる食べ物と捉えたほうが良いでしょう。
紅茶で〆てごちそうさまでした。お会計はひとりあたり1.4万円であり、これだけ食べてそこそこ飲んでこの価格であれば大変お値打ちです。客層も良く、ちゃんとわかっているゲストが多い印象。流暢なサービスや皿出しのテンポの良さなど文句をつけるところは何ひとつなく、近所にあったら何度でも通ってしまいそうな良いお店でした。


食べログ グルメブログランキング

関連記事
イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。

日本のイタリア料理の歴史から現代イタリアンの魅力まで余すこと無く紹介されており、情報量が異常なほど多く、馬鹿ではちょっと読み切れないほどの魅力に溢れた1冊です。外食好きの方は絶対買っておきましょう。

関連ランキング:イタリアン | 中目黒駅祐天寺駅代官山駅

鳥しき/目黒

恐らく世界でもトップクラスに予約が困難な焼鳥屋でしょう。2010年に焼鳥屋として初めて1ツ星を獲得し、その後も維持し続ける「鳥しき」。分店としては目黒「鳥かど」、六本木「鳥おか」、京都「鳥さき」、NY「鳥えん」などがあり、暖簾分けとしても都内に多数を展開します。
食べログでは4.55(2020年4月)でゴールドメダル獲得と、焼鳥屋としてだけでなく飲食店として東京を代表する1店となりました。
池川義輝シェフは人材派遣会社でサラリーマンとして働いた後に焼鳥の道へ。中目黒「鳥よし」で修業を重ねた後に独立。頂点を極めたにも関わらず焼き場に立ち続ける様は求道者そのもの。「カンテサンス」岸田シェフに通じる凄味を感じました。そう、私は料理人が厨房に立たずに監修という名のビジネスに走った時点でその店は終わりと考えているマイルドな保守なのです。
飲み物のほとんどは千円以内に収まる、いわゆる普通の居酒屋価格です。客層も良いですね。いわゆる予約困難店には予約困難という点にだけ価値を見出すオラついた阿保な客が多いのですが、当店は昔馴染み主体というか、1~2人で焼鳥をしみじみと味わうゲストが多かった。BGMが無いのも良いですね。炭がパチパチと爆ぜる音が心地よい。
まずはお通し。恐らく自家製のものでしょう。素材よし漬け具合よし。高級和食で頂くものに比肩する美味しさです。また、大根おろしは箸休めに最適。おかわりとしてなんぼでも持って来てくれます。
かしわ。いわゆるモモ肉です。ムキムキマッチョな歯ごたえで、肉食ってるなあと印象付けてくれる1本です。ちなみに鶏肉は福島産の「伊達鶏」を丸鶏のまま生産者から仕入れているそうな。
砂肝。塩コショウのみのシンプルな調味であり、シャキシャキとした食感が楽しい。そうそう、当店はおまかせコースのみであり、ストップをかけない限り永遠に出続けます。腹8分目ぐらいで「そろそろ」と声がけすると、現在準備している数本を出して終わりという仕組み。
かわ。近めの強火でガっと炙り、脂身の嫌なクセはどこへやら。
なんこつ。こちらも塩コショウのシンプルな調味。ザクザクコリコリと独特の食感です。
白玉。うずらの卵です。表面はしっかりと火が通っているのに、黄身は半熟。どうやって串に刺しているのだろうか。
はつ。心臓ですね。牛や豚のハツに比べると繊細ではありますが、カットがナイスにビッグなのでムシャムシャと食べ応えがあります。
ぎんなん。かなりの強火で炙っており、ホックリとした食感とバリっとした歯触りの対比がグッドです。
オクラもズバっと強火で攻めてきます。バスバスとした表面にトロりと流れ出る中身の滑らかさよ。
つくね。これは美味しいですねえ。ハンバーグのようにしっかりとしたサイズ感なのですが、口に含むとハラハラと解けるような口当たり。
せせり。しっかりとした歯触りであることが多い部位ですが、当店のそれはジューシーに柔らかい。肉と脂身のバランス感覚が素敵でした。
肉のラストは血肝。サラっとしたタレで味付けされた深みのあるレバー。独特の臭みは見当たらず、口の中で表面が決壊し、何とも美味なるダム決壊です。
厚揚げ。やはり強火でバリっとした食感ですが、内部はツルツルとした豆腐の滑らかな舌触り。薬味の存在も見逃せなく、〆の1本として最適でした。
アガリとして鶏スープが供されます。今夜の集大成とも言うべき濃厚な味わいであり、ああ、これでラーメンが食べたい。
連れは鶏のスープを用いたお茶漬けを注文。味見させて頂きましたが、海苔の風味が結構強く、先のスープとはまた印象が異なる。レアめの鶏肉がドカドカ入っているのも二重丸。

お会計はひとりあたり8千円強。おおー、これはお値打ち!最近のちょづいた焼鳥屋はすぐに1万円を超えてくるのに、トップオブトップで飲み食いしてこの支払額というのは嬉しくなる。

大将をはじめとして従業員全員がホスピタリティに満ちており、ゲストに緊張感を強いることなく心から焼鳥という文化を楽しめることができます。唯一無二の絶品!という料理というわけではなく、日常に寄り添うごくごく普通の焼鳥であり、とにかく基本に忠実。毎日でも食べたい素朴さがあり、ある種の美学を感じました。オススメです。やっぱ焼鳥ってこうだよなあ。


食べログ グルメブログランキング

関連記事
イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。

それほど焼鳥に詳しいつもりは無いのですが、私のコメントが掲載されています。食べログ3.5以上の選び抜かれた名店を選抜し、お店の料理人の考えを含めて上手に整理された一冊。

関連ランキング:焼き鳥 | 目黒駅白金台駅

ホテルモントレ沖縄 スパ&リゾート/恩納村

2013年に恩納村にオープンした「ホテルモントレ沖縄 スパ&リゾート」。沖縄有数のビーチ「タイガービーチ」に面して建つ全客室オーシャンビューのホテルとして話題になりました。
ブリティシュコロニアル調。プールやビーチなどを擁しておりファミリー向けではあるのですが、その範囲でも精いっぱい雰囲気を出している印象です。レストランが多数あり、ショップやコンビニまで併設されているメガリゾートです。
我々は「スーペリア」に滞在。40平米ほどの広さでありそれほど大きいというわけではありませんが、動線が良く居心地が良かったです。ちょっと変な匂いがしたなあ。あれは何だったんだろう。
風呂トイレは別であり、洗面所は中くらいの広さです。アメニティに特筆すべき点はなく、このあたりの仕様はファミリー向けの宿命といって良いでしょう。
風呂も壁紙こそは派手ですが、一般的なマンションのそれと同程度であり、必要最低限といったところです。
ウェルカムドリンク(?)としてカヴァが用意されていました。テラスにてシュワっと一服。リゾートステイの醍醐味です。
テラスからの眺望。眼下にはプライベートプールが。未だ閉園中の時期だったのでひとっこひとりいませんが、ウェイブプール・インフィニティプール・ウォータースライダーなどなど、ホテルのプールとしてはかなりの規模です。
プールのお隣には「タイガービーチ」が。プライベートビーチではなく、歴史ある公共のビーチであり、コザにあった米兵向けの飲食店「タイガークラブレストラン」が由来だそうな。
その他、天然温泉やサウナ、屋内プール、フィットネスセンターなども兼ねそろえており、ファミリー向け総合力という意味では沖縄トップクラスのリゾートと言えるでしょう。
若いカップルやシニア層には微妙かな。子連れのファミリーや3世代家族でどうぞ。


食べログ グルメブログランキング

関連記事
1年で10回沖縄を訪れることもあります。1泊15万円の宿から民宿まで幅広く手がけています。
TACが世に出した一風変わった沖縄本。もはやガイドブックではなく参考書の域です。非常に情報量が多く、かつ、うまく整理されており読みやすい。大判ではないので持ち歩きやすいのも素晴らしいです。オールカラーの割に高くない。数多ある沖縄ガイドブックの中では突出した存在です。

関連ランキング:旅館 | 恩納村

銀座 大石/銀座

四ツ谷の体育会系フレンチ「北島亭」の大石義一スーシェフが独立。瞬く間に予約困難店となり、食べログのポイントも4.37(2020年4月)を記録するなど快進撃を続けます。
内装は北島亭とは丸っきり異なり、鮨屋のカウンターのような誂えです。大きな身体から愛嬌たっぷりに発せられる大きな語り口が楽しい。常連にも一見客にも分け隔てなく接してくれ、小倉「照寿司(てるずし)」に近い昂奮を覚えました。
最初にバター茶。アールグレイに塩やバターを加えた液体で内臓を温め、今後迫り来る津波のような量に備えます。そう、当店は北島亭のエスプリを引き継ぎとにかく量が多いことでも評判です。
ドリンクメニューに細かく値段は記載されていませんでしたが、逆算するに恐らく1杯千円かそこらでしょう。ボトルワインも1万円を切るものが多く、銀座のおフランス料理としては控えめな価格設定です。
名刺代わりに差し出される1品。グジェールの生地にホタテやホタルイカをたっぷり挟み込み、卵黄とキャビアをトッピングします。これはもう、反則級の美味しさですね。皿に盛り付ければ立派な1皿になるものをフィンガーフードにしてしまう気前の良さ。
生ウニのコンソメゼリー寄せ 。北島亭ラヴァーであれば誰もが愛するスペシャリテですが、当店は大石大将流にテーラリングされており、アワビやボタンエビが加わるなどパワーアップ。素材が華やかになった分、その素材の良さを活かすためかコンソメの旨味は控えめです。それにしても豪華な料理だ。ホテルのレストランならこれだけで3,800円を請求されても文句は言えません。
「とにかく量が多い」と方々から脅されていたので、パンは味わうというよりはソースを拭う用途にしか用いませんでした。
トロカツオにレフォール(西洋わさび)。シャリ(?)には25年熟成のバルサミコ酢を用いており、カツオの脂質とバルサミコの爽やかさが程よくマッチしています。
スッポンのコンソメ。素朴な一皿ですがスッポンの美点を最大限引き出しています。辛うじて形を保っている小カブを少しづつ崩しながら立体的なスープへと変化します。
八寸は青首鴨のテリーヌ、菜の花、野菜のゼリー寄せ、毛ガニのサラダ。見目麗しく、それぞれきちんと美味しく、量も多い。特に青首鴨のテリーヌがいいですねえ。野性味溢れる逞しい肉をベリークリアに仕上げています。
「しのはら」よろしく助手より最中が手渡されます。 中身はフォアグラのムースにキンカンのコンポート。アクセントにチョコレートではなくカカオニブを用いているのが心憎い。グランマルニエ(オレンジのリキュール)の香りもセンスが良い。
エスカルゴを日本流にサザエで用意します。中にはサザエの身だけでなくシイタケやタケノコも。たっぷりのバターが見た目ほど濃くないなと思ったのですが、なるほどハマグリの出汁で伸ばしてケインにならないようにしているとのこと。
お魚は根室産のキンキ。なのですが、バックに控えるホワイトアスパラガスの存在感がやばたんまる。これはもう、魚料理というよりもアスパラ料理です。ソースにはタケノコを多用しており、木の芽の風味もベストマッチ。
こちらも北島亭のDNAを引き継ぐラム肉。手前の脂身が無いバージョンは岩塩パイで包んでじっくりと時間をかけて火を通します。実に清澄な味わいであり、ブラインドで食べればラムだと答えられないかもしれません。他方、奥の骨付き部分はたっぷりと脂がのっており、肉というよりも脂の香りと甘味を楽しむ1品。香草パン粉やマスタードを用いて脂っぽさを中和します。
こちらも古巣へのオマージュでしょうか、お口直しにスイカのジュースにシャーベット。
肉料理2皿目は飛騨牛のランプ肉。厨房の奥にDJブースのような焼き台が備え付けられており、そちらの炭火で丁寧に丁寧に焼かれていたものです。表面はちょっぴり焦がしており食欲をそそる香り。肉そのものは語幹や見た目よりも軽やかな味わいであり、赤ワインがゴクゴク進みます。付け合わせのポテトグラタンなど、何でもない料理が美味しいのが本物の証拠です。
オマール海老を先の焼き台で焼き、大きな土鍋で炊いたゴハンに放り込みます。ほぅーらほらほらエビだよーん。
もう少し調理を加え、ブイヤベース風味のリゾットが完成しました。タレの美味しさはもちろんのこと、追加で加えられたボタンエビの甘味が強烈。オマールのツメの部分はフライにされており、〆のお食事ながら何とも手の込んだ1品です。
ゴハンものがもう1皿。〆のカレーです。小麦やバターなどを用いておらず、素材の旨味や出汁のみを用いたもの。意図的に調味を控えているためか、これまでのパワー系料理に比べると若干物足りなさを感じました。個人的には手綱を緩めず駆け抜けて欲しかったです。
デザートはイチゴのミルフィーユ。目の前でパイが焼かれカットされクリームとイチゴに順々に挟み込まれていくライブ感が楽しい。前任地のデザートはとにかく素朴で話題でしたが、やはり甘味は見た目も味も派手な方が私は好きです。
ハーブティーで内臓を労い、ごちそうさまでした。
お会計は3.5万円ほど。これだけの質の多量多皿コースを食べて、それなりに飲んでこの支払金額はリーズナブル。オープンキッチンのフランス料理屋は多いですが、ここまで客にガンガン絡んでいく芸風のフレンチは斬新。大将の愛されキャラも含め、他所ではなかなか真似できない芸当でしょう。従業員同士の仲が良さそうなのも見ていて気持ち良い。自分が働くならこういう職場だなあ。告るデートとかではなく、大食いの友達とワイワイ楽しみにいきましょう。オススメ!


食べログ グルメブログランキング

関連記事
「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。

関連ランキング:フレンチ | 銀座一丁目駅東銀座駅銀座駅