カウンター10席程度の小さなお店。島津千周シェフは26歳と若い。お肌きれい。なのですが、隣客のババアがホストクラブさながらにキャアキャアとうるさい。こういった客に注意ができないのは若さゆえの課題でしょう。
この手の鮨屋としては珍しくきちんと飲み物メニューを用意しており、生ビールは800円、お酒は1合1,200円と悪くない価格設定です。が、泡のボトルが15,000円~とあったので(税サを考えれば2万円近い!)、ワイン党には厳しいかも。ガリが2種でツマミ代わりに無限に飲めてしまいます。
ノドグロで即本番。ぐわー、これは美味しいですねえ。1cmはあろう分厚いノドグロをサっと炙り、ほんのりとした温度のまま口の中でクタクタと溶けていきます。ケチな鮨屋の倍はありそうなポーションであり、先頭打者ホームランでした。
八丈島のマグロ。マッチョな味わいながら雑味はなく、仄かな酸味が心地よい。シャリも美味しいですね。程よい噛み応えと粘り気。味が濃いというわけじゃないのだけれど、不思議と印象に残るライスでした。
スッポンの茶碗蒸し。まずは上澄みのエキスを頂き、その後、少しづつ混ぜながら味変していきます。器のサイズの割にスッポンの身がしっかりと入っており満足の一品。少なくとも京都の「本家たん熊」なんかより全然美味しい。
サワラ。意図はあるのでしょうが、やや強く炙りすぎているきらいがあり、モソっとした食感なのが残念。レア好きの私としてはもっと生でも良かった。
タイラガイについてもそれほど好きな食材ではないので意見差し控え。
おつまみ3連単はカワハギにアンキモ、ホタルイカ。。こういうのは場が繋げて嬉しいですねえ。アンキモは一般的なそれと異なり、何かに漬けているのか濃密な味わいです。
稚鮎は南蛮漬けをイメージしてか甘酢の餡がたっぷり。悪くないのですが、シンプルに塩焼きで食べてしまいたい気もする。
メヌケ。希少な深海魚ではありますが、モソモソした食感であり味わいは中くらい。オカンが作る煮魚みたいな味がしました。
スミイカ。瑞々しくジューシーで、ツルっとした喉越しが最高。
シマエビ。表面はヌメヌメと官能的なのですが、身そのものは意外に弾力があり食べ応えがあります。品の良い甘味がグッド。
イワシ。これは美味しいですねえ。特大で分厚く食べ応え抜群。じっとりとした旨味に口の中で爆ぜる脂。
サヨリは大きく閂(カンヌキ)に近い。透明感のある外観に特有の旨味が乗って実に美味。
中トロの脂の品が良く、赤身の味わいもしっかりと伝わりかなり好きな1カン。これが東京都で獲れるんだと思うと不思議な感じ。
炙ります。一転して味覚が攻撃的となり、まるで焼肉を食べているような感覚。同じ食材でもこうも印象が変わるものなのか。
コハダは程よい締め加減で安定の1カン。
赤貝は大きくて美しく、すなわちビッグでビューティフルです。一口で頬張りムッシャムッシャと至福のひととき。
キンメダイも大きく極厚でマッチ箱2つ分はあるのではなかろうか。軽く炙って香りを引き出し、じっとりとした舌触りを楽しみます。
エビも大きく、ムシャムシャプリプリと、このとき私は絶頂に達しました。
ウニも美味しい。ところでウニってある程度のお店で食べればどれも同じぐらいに美味しく表現のしようが無く感じるのは私だけでしょうか。
アジも肉厚でニャハハとなります。私は前日のランチで北九州「照寿司(てるずし)」を訪れており、大きなにぎりには耐性ができていたはずですが、それでもうっとりとするようなサイズ感でした。
小柱は他のにぎりに比べると影が薄い。タイラガイにせよ、当店の白い貝とは相性が良くないのかもしれません。
シメサバは上品で上品な酸味が感じられ流線形の美しい外観と共に味わいます。
これはネギトロかなあ。マグロの美味しさについては言うに及ばずなのですが、通常の巻物よりも海苔をたっぷりと用いており、海苔の美味しさを楽しむ逸品です。
べったら漬けにギョク。このべったら漬けは美味しいですねえ。はやり分厚く噛み応えがあり、漬物ながらフレッシュな味わいに舌鼓。
お椀で留めてごちそうさまでした。かなり腹が膨れており、「らんまる巻きスペシャル」というマグロ・ウニ・イクラを爆発的に用いたスペシャリテは次回のお楽しみとしましょう。
デザート(?)として、「りんだ」の河野勇太シェフの実家で造られているジュースは飲み放題。和食店のデザートは微妙なことが多いので、このような振り切ったOEMというのも悪くないでしょう。
以上、ひととおりを食べ、自由に飲んでお会計はふたりで5万円を切りました。これはリーズナブルですねえ。この品数この大きさこのクオリティでこの支払金額は素晴らしき食後感です。肩肘張らずカジュアルに楽しむことができるので、鮨の入門編として最適。気楽に旨い鮨を腹いっぱい食べたい際にオススメです。
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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
- すし匠/ワイキキ ←このお店の真価が問われるのは数十年後のはず。
- 照寿司(てるずし)/北九州 ←世界で最も有名な鮨職人。
- すし宮川/円山公園(札幌) ←人生でトップクラスに旨い鮨。
- 鮨とかみ/銀座 ←赤酢のシャリが印象的。
- 鮨さいとう/六本木一丁目 ←価格設定に色々と考えさせられる。
- 東麻布天本/赤羽橋 ←欅坂46のような鮨。
- らんまる/不動前 ←鮨の入門編として最適。
- 紀尾井町 三谷/永田町 ←単純計算で年間3億円近い売上。恐ろしい鮨屋。
- 鮨 猪股(いのまた)/川口 ←にぎりのみの男前鮨を喰らえっ!
- 鮨舳/瓦町(高松) ←真っ当な江戸前。銀座の半額で何度でも通いたい。
- 天寿し/小倉 ←何度でも行きたいし、誰にでもオススメできるお店。
- 鮨 安吉/博多 ←お会計は銀座の半額。ミシュラン2ツ星は荷が重いけれども、この費用対効果は魅力的。
- ひでたか/すすきの ←鮨は好きだけどオタクではないライト層にとっては最高峰に位置づけられるお店。
- 鮨 志の助/新西金沢 ←とにもかくにも費用対効果が抜群すぎる。
- 小松弥助/金沢(石川) ←「まごころでにぎる」を体現する鮨屋。
- 太平寿し/野々市(石川) ←金沢の人が東京で鮨を食べると頭から湯気を出して怒るに違いない。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。