マルゴット エ バッチャーレ(Margotto e Baciare)/西麻布

「JDを連れていけばヤレると思う」「店員の目の前でチュウすればグラッパがサービスされる」「ふたりで行ってお会計は17万円だった」などなど、私の周りでピンク色の話題が事欠かないエロい系フレンチの最高峰、西麻布「マルゴット エ バッチャーレ(Margotto e Baciare)」。シェフはトロワグロ兄弟よろしく加山ブラザーズ。「モナリザ」「かんだ」「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」「リューズ」「カンテサンス」など華々しい経歴です。
店内はカウンター席と通常のダイニング、個室がいくつか用意されており、我々は個室にご案内頂けました。「こ、個室で良かった。客の女の子、びっくりするほどの美人ばっかりなんだもん」と顔を引きつらせる連れ。BGMに60~80年代のロックミュージックが流れているのが面白い。
ワインはお料理に合わせたペアリングをお願いしました。また、ホワイトデーにお邪魔したのでお店からのプレゼントとして一輪のお花が。
さて本題。店名の「マルゴット」とは日本語の「丸ごと」の意。ドラクエ的宝箱の中には値札付きのトリュフが並んでおり、自由に手にとってチョイスすることができます。いずれも1万円を超える価格ではありますが、フランス料理屋でこのクオリティの黒いダイヤをこの価格で丸ごと楽しめるのは割安です。ちなみに「エ バッチャーレ」というのはイタリア語で「キスをする」という意味とのこと。デュフフ。
たっぷりの毛ガニ、ベースは茶碗蒸しというべきかフランと言うべきか、出汁がたっぷりきいたものであり、このまま和食店で出されても文句の無いクオリティ。
トリュフに見立てた黒いコロッケの中には牛タンが。温かいアミューズを出すお店はシェフの意識が高いことが多いので、この時点で今夜の食事の安心感を手に入れることができました。
播州赤穂の生牡蠣「サムライオイスター」。六本木一丁目「エディション コウジシモムラ」のスペシャリテに比肩する完成度であり、こういった料理をサラっと出せるのは店として相当にレベルが高い。
購入したトリュフが磨かれていよいよ登場。スライスの厚さを調整できる機器を用いて、その料理にあった厚さで用意して下さいます。
固めのクレープ生地にマッシュルームを挟み込み、加えてトリュフをトッピングするという仕様。バターのように妖艶な香り。
「キャビア最中」はひとりあたり3,000円の追加料金を要しますが、必食の1皿。塩気の奥に感じられる品の良い甘味。磯の香り。やっぱりキャビアは空の上よりも陸の上で食べるべきですね。このクオリティのキャビアをこの量で3,000円というのは破格。儲けなんてないのではなかろうか。
「旨味と香り」と題したコンソメ。とにかく香りが豊かであり、おおぶりなワイングラスで味わいにピッタリ。まずはそのまま楽しみ、続いてトリュフを削り入れて楽しむという二段階発射方式です。
ここで一旦トリュフはお休み。バカみたいに何でもかんでもトリュフかけるというわけではありません。じっくりと火を入れたホワイトアスパラガスにホタルイカ。ホワイトアスパラガスの外観が長ネギのようであり、一見、和食のようにも見えます。ホタルイカの濃密な味わいに日本酒が欲しくなる。
パンはシンプルなコロンとしたパン。パワー系の料理が続くので、これぐらい素朴なものんでちょうど良い。バターがお店のロゴを模ったもので手が込んでいます。
「磨宝卵」という大変ありがたい卵の卵黄を、フレンチトースト的な生地の上に置き、トリュフを削って頂きます。卵黄と黒トリュフのコラボは言わずもがなの最強コンビなのですが、個人的には周りのソースがお気に入り。仄かな酸味を湛えた濃密なソースであり、みじん切りにしたトリュフが上手く活かされていました。
お魚料理は甘鯛。松かさ揚げのように皮目がパリっと調理されており、やはり和食のような印象を受けます。付け合わせの菜の花やタケノコもすこぶる旨く、この店はトリュフなんか無くてもフランス料理としてかなり鋭いレベルに達していると感じました。
メインは牛肉かエゾジカかのチョイス。エゾジカはプラス3,800円と強気の価格設定。なるほど直球勝負の調理でありこの料理に関してはトリュフの存在が霞んでしまう程の肉の味が強い。ただ、トリュフ丸ごと1つが1万円強、キャビアが3千円という追加料金にくらべると、このエゾジカでプラス3,800円というのはめちゃくちゃ割高に感じました。
〆の炭水化物は「つや姫」。シェフ自らトリュフを削って仕上げてくれます。お店のコンセプトからしてエグザイル調のオラついた方を想像していましたが、実際は笑顔な素敵な好青年。謙虚で真面目でファンになってしまいそうです。
左が卵かけごはん。右が自家製の海苔の佃煮ごはん。ゆかりのような黒い粒々は全てトリュフです。トリュフはさておき、米の取り扱いが天下一品ですね。シンプルな料理ではありますが計算に計算を重ねたプロセスが感じ取れました。
デザート1皿目はキンカンにヨーグルトのアイス。急遽口腔内がサッパリと整えられます。
メインのデザートはヴァニラのアイスクリーム。これでもかというほど濃厚なヴァニラアイスクリームに、残ったトリュフを全て使い切ります。
お茶菓子はやはりトリュフを模したもの。プレゼンテーションも可愛い。トリュフはふたりでかなり贅沢に使ってちょうど1個という具合。お手洗いから個室に戻った際に、部屋中にトリュフの香りが満たされているのが嬉しい。
上質なアールグレイで〆。ごちそうさまでした。

お会計はひとりあたり4万円強。あれだけのトリュフ料理とキャビアを食べてこの価格というのはリーズナブルな方でしょう。食事に比べるとワインは少し割高なので、めっちゃ飲む人はお気をつけて。コンセプトと立地に引っ張られてか客層が少し独特で、付き合いの浅い女子と訪れるにはハードルが高い。しかし料理そのものは芯のある本物のフレンチ。トリュフ関係なしに普通のフランス料理屋も姉妹店として出して欲しいなあ。


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