イタリア料理 樋渡/芝公園

芝公園・田町・浜松町の3駅の中心地点にあるイタリアン。この手のシャレオッティレストランとしてはちょっと変わった立地です。樋渡さんという方がシェフというわけではなく、シェフの実家の屋号を引き継いでの店名のようです。原耕平オーナーシェフは麻布十番「ラ・コメータ」、表参道「フェリチタ」、神保町「ジロトンド」を経て独立。
ドアを開けてドン引き。シャツがズボンから出たうだつのあがらないリーマン連中が手を叩きながら奇声を上げています(写真はぐるなび公式ページより)。連れも「ねえ、ココ、大丈夫?」と不安を隠さず屈託そうに眉根を寄せる。内装はフルオープンキッチンでカッコよく、ハコだけで見れば「落ち着いた大人の」「しっとりとした雰囲気」であることは間違いないのですが、客層はワタミや鳥貴族と大差ありません。
ワインリストは無くソムリエールと相談していくスタイル。イタリアのナチュール寄りのラインナップであり、値付けは意外に安い。まずはボトルでコチラの泡を。酢もかくやとした強烈な酸味が特徴的。
それにしても、このお店は雰囲気のコントロールが全くなってないですね。じっくりとゲストを観察してみると、基本的には飲み食いが好きな善男善女が多いのですが、冒頭の低俗な連中が明らかに場を乱しており、それでも店員は知らんふり。常連なのか金払いが良いのか知りませんが、ああいうのを放置していても中長期的に見れば良いことなど何もない。

連れとの会話が成立しないぐらいにうるさくなり、酔ったオヤジが我々の座席近くを用もなくフラフラと歩き回るようになったので流石にこちらから注意しましたが、ここ数か月で訪れたカッコよさげなレストランでは最低の客あしらいでした。
本題に入りましょう。最初の1皿目はマダイのスープ。魚の出汁の風味が強烈で、和食にすら感じられる、旨味を楽しむ味わいです。寒い1日だったので、身も心も温まる演出です。
前菜盛り合わせ。物凄まじい種類であり、仕込みが大変だろうなあ。思いきりの良い酸味のエスカベッシュ(南蛮漬け)が先の泡にピッタリ。リエットが滑らかな舌触りで心に残りました。
パンは思いのほかそっけない。特長の無いひとかけらが置かれるのみで、パン好きの私としては若干サゲです。
ホワイトアスパラガスに卵のソース(?)。アスパラが実にジューシーで王道の味わい。トリュフの使い方も品が良く、完成度の高い1皿でした。
ラビオリにはたっぷりのチーズを詰め、さらにチーズを振りかけます。こちらも基本に忠実の万人受けする味わい。もうちょっと量があったほうが記憶に残るかもしれません。
フキノトウのリゾット。冒頭のスープの春菊に始まり、季節感のある素材が続くのが良いですね。なかなかしっかりとした調味であり酒が進む米料理。
メインはジャージー牛と和牛をかけあわせた面白い牛肉。ムファサのように逞しい肉質であり、噛むごとに旨味が溢れてきます。メタボ体質な和牛とは一線を画す味わい。調味は塩コショウとシンプルなのですが、脇に添えられたオリーブと玉ねぎのマリネ(?)の酸味が程よいアクセント。付け合わせのグリーンも新鮮で味が濃く、アラカルトでグリーンサラダが食べたくなるほどの品質です。
デザートはワインと巨峰(だっけ?)を主軸に置いたジュレとシャーベット。さっぱりとして美味なのですがお口直し的でもありやや物足りない。フィナーレを飾るには重厚長大な甘味が好きなのです。
エスプレッソと小菓子で〆てご馳走様でした。ふたりで1本+1杯づつ飲んでお会計はひとりあたり1.5万円。思ったよりも高くつきましたが、それは1万円のコースを注文したからであり、最安値5,000円のコースやアラカルトで注文すればもう数千円抑えられたかもしれません。
また、ひとりあたり1万円を超える価格体系であり、このオシャンティ感溢れる内装であれば、冒頭の下品な連中は早々につまみ出すべきだとするのが私の考え。客層の管理につき、悪気はないがやる気もない当店の方針には些か疑問を覚えました。料理は悪くないのに勿体ない。


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