ALDEBARAN(アルデバラン)/六本木

2018年夏のオープン以来、六本木でジワジワと人気を集めつつある「ALDEBARAN(アルデバラン)」。高級焼き肉店と同じ和牛使う1日30食限定のハンバーガー専門店。店主は千葉松戸市の名店「R’s」出身であり、その実力はお墨付き。六本木は旧テレ朝通り沿い、「ノック」の並びにあります。
ゲストを遮断するかのような入り口のドア。なんでもコロナ的な何かの対策の一環のため、店内での待ち行列はお断りであり、ケータイ番号を記帳しておくと、席が空いた際に呼び出してくれるという仕組み。平日で1時間、休みの日であれば2時間待ちはザラという店ですが、ヒルズのすぐ近くでもあるので、時間つぶしのアイテムには事欠かないでしょう。
勇気をもってドア空け地下へと降りていきます。アメリカのサイコ系の映画の犯人の隠れ家に踏み込むようなドキドキ感。
11:00オープンのところ11:20に訪れ、何とか待たずに席につくことができました。ドラクエみたいな椅子があったりDJブースがあったりグランドピアノがあったりと、およそ収納効率とは無縁の世界が広がります。当店のボトルネックはあくまで調理であるため、これだけがらんどうな席配置、かつ、店内客の少なさであっても注文から配膳まで40分待つことになりました。
飲み物は別注文であるため吝嗇家の私は飲み物はナシで臨みます。が、「お水はミネラルウォーターをボトルで200円にてご用意しております(食後にはお口直しのレモン水をお出ししております)」と気になる記載がメニューにあり、飲み物は断ったはずなのにすぐに水が提供され、こ、これは200円徴収されるのくぁ?とドキドキしたのですが、「お口直しのレモン水」が最初に出された格好でした。
どこでも飲める飲み物に数百円を支払うのであれば、この店でしか食べることのできない料理に追加で払いたい派。ポテトはハンバーガーに付随するのですが、追加でオニオンリングとチキンナゲットを頂きました。このチキンナゲットが絶品であり、ファストフードのそれとは次元の異なる何か別の食べ物のようです。必食。
注文から40分後、「リアルバランバーガー」が到着しました。アルデバランとはおうし座で最も明るい恒星のことであり、それにかけての星型プレートでしょうか。聖闘士星矢世代の私にとっては否応なしにテンションが上がります。ちなみに現在、惑星探査機パイオニア10号がアルデバランへ向けて飛行を続けていますが、アルデバランに最接近するのは約200万年後だそうです。
「リアルバランバーガー」黒毛和牛100%のパティに卵・チェダーチーズ・あめ色になるまで蒸した玉ねぎ、そしてたっぷりのテリヤキソース。肉の香りが良いですねえ。食べる前から、あ、このハンバーガーは美味しいだろうなという確信めいたものが感じられました。
ふたつにカットしてもらうことも可能ですが、私はバーガー袋に入れ、丸のままかぶりつきました。バンズがちょっと他にはない味わい。ジトっとした歯触りであり、バターで揚げ焼きしているような食感であり、ブリオッシュ的に油分を感じます。
パティも美味しい、というか、全体として一体感のある料理であり、ハンバーガーというよりも他の何か完成された料理を食べているような感覚です。バンズの油分とパティの肉汁、玉ねぎのエキス、ソースと卵黄のトロトロ感。それぞれの素材の境界線が実に曖昧であり、この店では私ではなく詩人が来るべきだったかもしれません。

これまで世界で最も美味なるバーガーは芝公園「マンチズ バーガー シャック」と考えていたのですが、その座を脅かすほど卓越した味覚を感じました。もちろん当店とマンチズでは芸風がまるで異なるので、同じ土俵で比べるべきではないのかもしれません。
「リアルバランバーガー」の1,700円にミニサイズのナゲットとオニオンリングを追加してお会計は1,950円。ハンバーガーとしては高価格な部類に入りますが、ここまで料理として完成しているのであればむしろ割安と評して良いレベルです。ダニエル・ブールー(Daniel Boulud)が手掛けたフォアグラ入りバーガーを5千円で食べた経験があるのですが、もはやアレがギャグに思えるレベルです。
1日30食限定で売り切れ仕舞い、客を待たせることに何の罪悪感も持っていない(ように見える)のも良いですね。実力さえあればこっちのペースで仕事を進めることができ、客はそれに合わせて来いというシステム。料理業界の働き方革命を体現したお店です。「飲食業界は長時間労働で、、、」とボヤく連中は腕を上げろ、話はそれからだ。


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