白を基調とした店内に大きな窓からグリーンが飛び込んできます。真冬ですらこの色合いなのだから、初夏の緑が美しい時期なんて憧れる。
中嶋秀之シェフは辻調理師専門学校を卒業後、都内の飲食店で腕を磨き、在ミュンヘン日本国総領事館公邸料理人として渡独。帰国後2005年に独立。
往路の横須賀線で酒を飲んできたのでスティルワインから臨みます。料理に合わせた3杯セットで3千円とお買い得。ただし1杯あたりは100mlを切るほどの量であるため、元気いっぱいの呑兵衛は5杯セットにする必要があるかもしれません。
アミューズが凝っている。揚げたてのフグにグリュイエールチーズをすりおろし、種々のキノコのペースト(?)を忍ばせます。これはもう、アミューズという次元を超越しており、ひとつの魚料理として成立しています。
前菜はヒラメとアオヤギ。ウチワサボテンやチアシードなどを用い意欲的なのですが、調味が控えめでアオヤギの独特の臭みが際立ってしまいました。ヒラメもプレーンで食べるには旨味が不足しており、先のフグに比べてあれれという印象。
続く前菜のテーマは牡蠣。一転、これは美味しいですねえ。しっかりと火を入れ凝縮した牡蠣の旨味に、これまたオイスターソース的な濃厚な風味のソースとトリュフの香り。キンカンの程よい甘さも魅力的。
パンは自家製。コチラはライ麦パンで、(写真にない)もう片方はシンプルなバゲット。シンプルながらも正攻法であり、濃いめのソースと合わせるに適任です。
スペシャリテのビスク。濃密な甲殻類のソースに海老の身そのものとひきわり小麦。ゆったりとスプーンで混ぜ込んで全ての素材を口に含むと海老の甘味、鼻から抜ける香り、穀物の厚ぼったさが感じられる逸品。
私のメインはソイ。マッチョな肉質に濃い旨味。カニのほぐし身が大量にトッピングされているのは嬉しい誤算。サーモンのムースが詰め込まれた野菜(何だっけ)も付け合わせと呼ぶには勿体ないほどのクオリティであり、これが3,600円のコース料理のメインディッシュとは末恐ろしい店である。
デザートは「ボネ」。イタリアのピエモンテ州に伝わるチョコレート風味のプリン。フリフリとした独特の食感に大人ビターなカカオの風味。周りを支えるキャラメルアイスにも正統的な味わいが感じられ単刀直入に美味しかった。
食後のお茶にはカモミールティーをチョイス。お茶菓子のマカロンも折り目正しい味わい。これだけを食べグラスワインを3杯飲んでひとりあたり8千円というのは奇跡の費用対効果です。
ひとつ残念だったのは「クレジット会計のお客様 別途手数料5%頂いております」という、クレジットカード会社の加盟店規約に違反した仕組み。たった数百円ぽっちでゲストに妙な違和感を持ち帰らせるぐらいなら、正々堂々と値上げすれば良いのに。勿体ない。
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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
- ガストロノミー ジョエル・ロブション ←最高の夜をありがとう。
- アピシウス ←東京最高峰のレストラン。
- ナリサワ ←何度訪れても完璧。
- ナベノイズム ←世界観がきちんとある。
- ル・マンジュ・トゥー/神楽坂 ←接客は完璧。料理は美味そのもの。皿出しのテンポも良く、とにかく居心地の良いお店。客層も好き。
- TAIAN TOKYO(タイアン トウキョウ)/西麻布 ←流行り廃りに捉われないマッチョな料理。
- メシモ(MECIMO)/小田原 ←重厚長大なレストランの裏をかく魅力的な設計
- ア・ニュ Shohei Shimono/広尾 ←リニューアルしてリベラルに、旨けりゃなんでもいいじゃん的に
- ラフィナージュ(L'affinage)/銀座 ←王道中の王道。銀座とは考えられない値付け。
- ル・マノアール・ダスティン/銀座 ←まさに正統。
- SUGALABO ←料理だけなら一番好きかも。
- エクアトゥール ←天才によって創られる唯一無二の料理。
- ete(エテ) ←美食の行き着く先はお抱えの料理人。
- レヴォ ←人里離れた場所にありながら、日本いや世界でもトップレベルのフランス料理店。
- マノワール・ディノ(Manoir d'inno)/表参道 ←料理は直球勝負。ワインは高くない。
- フロリレージュ ←間違いなく世界を狙える。
- クレッセント/芝公園 ←グランメゾン中のグランメゾン。
- アサヒナガストロノーム/日本橋 ←そこらのフランス料理店とは格が違う。
- ティエリー マルクス ←料理の良さはもちろんのこと、ワインのペアリングが見事。
- エステール(ESTERRE)/大手町 ←料理もサービスもパーフェクト。外せない食事ならココ。