新宿割烹 中嶋/新宿

新宿三丁目駅徒歩数分、ビームスや大塚家具の近くにランチが千円を切るミシュラン1ツ星割烹「中嶋」があります。現店主の祖父は、北大路魯山人が主宰した「星ケ岡茶寮」のシェフであり、父が分家し当店をオープン。現店主はまさに新宿割烹界のサラブレッドであり、ミシュランの1ツ星獲得を始めとしてメディアへの露出も多い。
「平日ランチタイムは30分並ぶ」「終盤は売り切れ多数」とネット上の情報に散々脅されていたのですが、私は水曜日の正午少し前に訪れて待ち時間5分といったところであり、12:30過ぎの退店時にも待ち行列はありませんでした。そうそう、言い忘れていましたが、当店はランチタイムに限ってイワシ料理専門店であり、夜は客単価1万円超の立派な割烹料理屋です。
待っている最中にオーダーを取られるので着席後はスムーズです。ミシュランの威力からか妙に外国人観光客が多く、写真入りの英語メニューがあれば女将も英語は流暢と、こういうお店が未来永劫続いていくのでしょう。
なかなか来る機会はないので、「柳川鍋定食」を軸に、欲張りにも「刺身」「フライ」を追加で注文。ただし周りの客も何かしら追加の1品を注文していたので、たくさん注文したからといって恥ずかしがることはありません。嫌だと思っているのは自分だけで、他人は気にしていないものなのだ。
柳川鍋は少し時間がかかるということで、最初に追加メニューからカウンターに並べられました。本来は定食屋ではありますが、期せずしてひとりコース料理のような構成となっています。

「刺身」はなめろうのような細切れスタイル。骨がきれいさっぱり除去され食べやすい。イワシ特有の嫌な臭みなどは一切なく、脂の甘味と身の甘味が調和し、その辺の寿司屋が尻尾を巻いて逃げ出すレベルです。
「フライ」は下味がついているのでそのままで。揚げに少々の野暮ったさはあるものの、イワシの身そのものはトロリととろける舌ざわりであり実に上品。ブラインドで食べればこれがイワシだと答えられないかもしれません。付け合わせのキャベツは酸味がひしひしときいており、インド料理の漬物を食べているかのような錯覚。モヤシは謎にカレー風味でこれは余計に感じました。
夜はガチな割烹ということで味噌汁のクオリティに期待したのですが、これはまあ、普通の定食屋のレベルです。
他方、お新香は大変美味しい。おそらくは自家製でしょう、ザックリとした素材を感じる舌ざわりに程よい塩味の漬け込み具合。お新香だけで立派な1皿です。
ライスは味噌汁に準じて一般的なもの。1杯のみおかわり無料なのですが、そのおかわり分を大盛りにすることができる気前の良さなので、3杯目に突入する猛者は実質的にはいないでしょう。
真打登場、「柳川鍋」です。地獄の釜から引き揚げられたばかりのような煮えたぎった平鍋に、イワシの切り身がゴロゴロと転がっています。玉子を含む調理ならびに調味は大戸屋の「チキンかあさん煮定食」に酷似しているのですが、具材の質が高いため、990円の定食としてはべらぼうに旨く感じました。やはり料理とは素材なのだ。
好き放題追加したのでお会計は2千円。「ミシュラン1ツ星!」という頭でお邪魔すると、いわゆる普通の定食料理が続くため肩透かしを食うかもしれませんが、千円を切る定食という意味では奇跡のクオリティです。時間に余裕をもってどうぞ。


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