エレベータを降りるとすぐにテーブル席。カウンターが8席にテーブルが1卓と小さなお店。池田一樹シェフは「Wakiya」系列で10年近く経験を積まれたのち独立。壁には脇屋シェフからの卒業証書が掲げられていました。
細長い生ビールは650円。この界隈にしては少々お高めではありますが、そのぶん料理の価格が控えめであるため、プラマイゼロというか着地は実にリーズナブルです(後述)。
サービスとして供される揚げたえびせん。客が着席してから中華鍋で揚げ始めるといった仕組みでありアツアツサクサク。調理についてはマルチタスクを好まず、一品入魂といった形で一皿づつ仕上げていく芸風なので、気長にのんびり過ごしましょう。
よだれ鶏。しっとりと蒸された清澄な鶏肉にコクのある味噌。辛味はほとんどなく旨味主体であり、ビールよりも白ワインな1皿です。
注文から完成まで20分を要する焼きたてのチャーシュー。肉をしっかりとタレに漬けこみ、じっくりテカテカと火を入れていきます。強めの調味にバランスの良い脂。肉そのものの旨味。ここ数年で食べたチャーシューの中では最高クオリティ。
ワインはボトルで4千円台~。全体を通して辛味よりも旨味に軸を置いた料理であるため、ワインで食べるにちょうどよい。
焼餃子はニンニクが強い。柚子風味のタレは想像以上に塩気が強く喉が渇いてしまいました。
赤ワインを一時中断しビールに戻る。ううむ、やはり中華にはビールなのかもしれない。
若鶏のくらま山椒唐揚げ。唐揚げの衣に粒の山椒が仕込まれており爽やかな仕上がり。軽やかな味わいであり無限にパクパクパクと食べ進めてしまいました。
麻婆豆腐は程よい辛さ。しかしながら山椒や唐辛子は影を潜めており、旨味が主体の親しみ易い味わいでした。
3時間以上滞在し、かなり飲んでもお会計はひとりあたり6千円程度。これだけ本格的な中華料理をしっかり食べてこの価格というのは度を越した費用対効果です。ワンオペツーオペといった陣容であり提供速度に難はありますが、予約で2回転といった無粋なことはせず、のんびり過ごしていても放っておいてくれる客あしらい。私の一番好きなパティーンのお店です。今度はランチで麺を注文してみようっと。
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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
- チャイナハウス龍口酒家(ロンコウチュウチャ)/幡ケ谷 ←東京の10,000円以下の中華だとダントツ好き
- センス(Sense)/日本橋 ←あれだけ香港に通い詰めた結果、日本の飲茶が一番とは実に複雑な心境。
- 中華バル 池湖(いけこ)/渋谷 ←度を越した費用対効果。
- 倶楽湾(クラワン)/田町 ←あの水煮牛肉の美味しさは確か
- 味覚/虎ノ門 ←世界一辛い麻婆豆腐
- 飄香/麻布十番 ←十番のランチではトップクラス
- チャイニーズレストラン直城/高輪台 ←空間の居心地の良さや総体的な美味しさには価値がある
- 紫玉蘭/麻布十番 ←税込800円は神のなせる業
- Mott 32(卅二公館)/中環(香港) ←この中華料理はちょっと東京には無い
- Lung King Heen(龍景軒)/中環(香港) ←総合力という意味では香港における飲茶で私的ナンバーワン
- 蓮香居(Lin Heung Kui)/上環 ←好きなものを好きなだけ食べているのにも関わらず、ひとりあたり1,000円と少しという驚異の費用対効果
- 唐閣(T'ang Court)/尖沙咀(香港) ←3ツ星の料理がこの価格帯で楽しめるのは実にリーズナブル
- Shang Palace(香宮)/尖沙咀(香港) ←ミシュラン星付きの飲茶でこの値段ならまあまあ
- 杭州酒家(Hong Zhou Restaurant)/湾仔 ←1杯3,000円の蟹味噌あんかけ麺