優勝したその週末にお花を持ってお邪魔しました。ネットが発達しSNSでコメントを残すだけの関係が色濃くなる中、オールドスクールなお祝いを徹底するのが私流。軒先の看板には今夜も予約で満席との案内。
店内には古くからの常連やワインスクールの生徒たち(彼はアカデミー・デュ・ヴァンの講師だ)で溢れており目のまわる忙しさ。おまけにコンクールが終わって気が抜けたのか、若旦那は足の肉離れを起こしており、動きが普段よりも幾分スロウ。今となっては笑い話です。
さて、シイタケをシンプルに焼いたもの(2ピースあったけど食べちゃった)。まさに素材といった味わいに上質な海苔の風味が駆け抜けます。
里芋とカリフラワーのすり流し。すり流しとは私の好物のひとつであり、ピカールに言ってキューブ状の冷凍食品としてデビューさせたいほどです。やや土っぽさを感じる野趣あふれるカリフラワーの風味に舌鼓。
本日のお刺身の白組はヒラメ、エンガワ、ホタテ、太刀魚、甘海老。ヒラメならびにエンガワがいいですねえ。冬の到来を告げる身の締まりに脂の量。日本酒が進みます。
紅組はカツオ、ブリ、中トロ、シメサバ。ほう、カツオ。旬の頂点は過ぎたことは周知の事実ですが、なるほどあえて出すだけあって迫力のある個体であり、厚切り由来の歯ざわりも相まって美味。シメサバも絶品。軽く締めているため酸の主張は穏やかで、代わりに冬の脂が幅をきかせています。
腹の出た鮎。中には大量の卵が詰まっており、ある意味では残酷な天使のテーゼなのですが、その卵をスープに解きほぐして頂く玉子スープの旨さといったらない。頭も尻尾も全てを食べ尽くし、日本酒でグイと飲み干します。
サワラは西京漬けで。ムッチリとした身の厚さに悶絶。コースが進むにつれて調味がクレッシェンドしていき、当然に酒量も増える。
にぎりに入ります。どでかい海老が入ったので包丁でふたつにナイスカット。それでもひと口におさまりきらないほどのサイズであり、海老好きには堪らない逸品。
サンマ。今年は不漁というニュースが流れていますが、あるところにはあるものです。不漁で高価だか何だか知りませんが、個人的にサンマはもっと評価されるべき素材と考えており、はっきり言って鰻よりも全然美味しい食材でしょう。
すじ抜き。当店のスペシャリテ(と、私は勝手に位置付けている)であり、必ず食べるべき1カンです。マグロの脂の乗った部分から丁寧にスジを取り除き、上質なネギトロをたっぷりとにぎりで食べるような名品。
イクラ。やや小粒で凝縮感に溢れる味わい。調味も強く海苔の風味も心地よい。鮨と見せかけて酒が進むツマミです。
ウニもかなりの量。近年、外観が整ったものを軍艦でなく握りでウニを出すお店が増えましたが、個人的にはやはり海苔の風味が欲しい。こういった伝統的な軍艦巻きにも理由はあるのだ。
ホクホクと炊きあがったアナゴ。私はあまりお燗酒は好まないのですが、このにぎりに関してはそれでも良かったかもしれません。何しろ若旦那はコンクールにおけるお燗のつけ方につき、会場をどよめかせた手技の持ち主だそうなので。
追加でトロタク。マグロの旨味にタクアンの食感がコリコリと響きます。
刺身でブリも良かったことを思い出し、追加でブリを2枚づけで握ってもらいました。軽く塗られた醤油をはじき返すほどの脂の量であり、モリモリといった食感と相俟って最高のフィナーレでした。
ちなみにこの日のラインナップはコチラ。これだけの種類の酒をロジカルにサイエンティフィックに出し続ける芸風はさすがのチャンピオン。見事としか言いようがありません。若旦那の応援団が多くグルーヴ感に満ちたディナーでした。
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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
- すし匠/ワイキキ ←このお店の真価が問われるのは数十年後のはず。
- すし宮川/円山公園(札幌) ←人生でトップクラスに旨い鮨でした。
- 鮨さいとう/六本木一丁目 ←価格設定に色々と考えさせられる。
- 東麻布天本/赤羽橋 ←欅坂46のような鮨。
- 紀尾井町 三谷/永田町 ←単純計算で年間3億円近い売上。恐ろしい鮨屋。
- 鮨舳/瓦町(高松) ←真っ当な江戸前。銀座の半額で何度でも通いたい。
- 天寿し/小倉 ←何度でも行きたいし、誰にでもオススメできるお店。
- 鮨 安吉/博多 ←お会計は銀座の半額。ミシュラン2ツ星は荷が重いけれども、この費用対効果は魅力的。
- ひでたか/すすきの ←鮨は好きだけどオタクではないライト層にとっては最高峰に位置づけられるお店。
- 鮨 志の助/新西金沢 ←とにもかくにも費用対効果が抜群すぎる。
- 小松弥助/金沢(石川) ←「まごころでにぎる」を体現する鮨屋。
- 太平寿し/野々市(石川) ←金沢の人が東京で鮨を食べると頭から湯気を出して怒るに違いない。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。