氏家健治シェフはホテルオークラ東京、赤坂アークヒルズクラブ、レストランマエストロなどで活躍の後、1998年に「ケンズカフェ東京(KEN'S CAFE TOKYO)」をオープン。もともとはイタリアンカフェレストランだったのですが、デザートとして出していたガトーショコラの人気が沸騰し持ち帰りたいという要望が頻出。それがきっかけでテイクアウトでの販売が開始され、結局ガトーショコラのテイクアウト専門店に業態を変えたそうな。
クーベルチュールには最高級製菓用チョコ「ドモーリ(DOMORI)」のものを使用。元々は「ヴァローナ(VALRHONA)」のものを用いていたそうですが、当店のガトーショコラに魅了された「ドモーリ」オーナーのジャンルーカ・フランゾーニが直々に「ドモーリ」を起用して欲しいとオファーがあったそうな。
用いる素材は上記のショコラにバター、卵、砂糖のみ。こんなにケーキ感すごいのにグルテンフリーです。シェフはレシピを公開しており、ある意味シンプルで素朴な黒い塊。映えないスイーツと言えるでしょう。
日本で主に流通するガトーショコラはパウンドケーキ的もっさりした食感のものが多いですが、当店のそれはトロりとした舌ざわりでフォンダンショコラに近い。正真正銘のブルターニュ系ガトーショコラであり、とにかくショコラの風味が強い。濃厚・濃密・凝縮といった表現がピッタリの味わいで、上質な生クリームやミルクアイスなども添えたくなります。ゲランドの塩も併せてプレゼントして頂いたのですが、なるほど塩のコクと旨味、ミネラル感と相俟って乙な味。
冷やすと硬度が生じ、フォンダンショコラから生チョコへのような食感に遷移します。温めても良し冷やしても良し。いずれにせよ抗いがたい旨さがここにはあり、口どけと共に高貴な香りがグラデーションを放っていく。余計な調味など一切なし。ショコラとはカカオすなわちフルーツであるという本来の素材の良さがビンビンに伝わるガトーショコラです。
百貨店でもイベント的に販売されることがあるそうですが、基本的に新宿御苑本店での予約販売であり、入手は実に困難。おまけに1本3,000円という高価格。しかしながらそれらデリバリとコスト問題を遥かに凌駕するクオリティの高さがこのガトーショコラには詰まっています。わが心のガトーショコラ第1位は新宿にあった。
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男、かつ、左党の割にスイーツも大好きです。特にチョコレートが好きですね。JPHが基準なので、スイーツの評価は厳し目かもしれません。
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難解な理論をユルいトーンで柔らかく読み解く専門書。チョコレートに係る基本的な素養から、文学や映画など芸能との関係まで解かり易く解説。ぜひチョコレートを食べながらのんびりと読んでみましょう。