1Fが物販、2Fはカフェです。平日の夕方というヘンな時間帯に訪れたためか、客は私たち以外に上品な子連れと海外からの観光客(インド系の男子2人!)のみであり、非常に落ち着いた雰囲気でした。
本物のショコラを取り扱っているため、当たり前のように高いです。JPHの裏技のような注文方法は無く、1皿2,000円弱のスイーツと1杯1,000円のドリンクを注文しなければならないというハードルの高さがあります。このあたり本当にチョコレートが好きな方でないと、お店の価値観についていけないかもしれません。
「全く仕事ができない後輩がいて、あたし、とっても困っているんだけど」注文するが早いか、彼女は漂白されたような表情で言う。「誰にでもミスはある。あたしも間違える。それは仕方ない。でも彼女、手取り足取り教えても、何度も何度も同じ過ちを犯すのね」
「職場で何かミスをしたときは再発防止のために台帳に記入してみんなで共有するんだけど、そういう事務処理レベルのことまでできないわけ」今度やったら三角定規で殴ってコンパスでとどめを刺してやる、彼女は感情をあらわにして息巻いた。
うーん、それはもしかして、仕事ができるできないの問題じゃなくて、国語力が無いだけじゃないかなあ。つまり何故そのようなことをしなければならないのか、何故いま自分が怒られているのかが理解できていないだけなんじゃないの?
ショコラ・ショすなわちホットチョコレートです。おおおー、これはひょっとすると場合によってはJPH超えもあるかもしれない美味しさです。砂糖は一切用いずカカオのみで勝負し、そのフルーティな香りと穏やかな酸味はまさに絶品と評して良いでしょう。量もたっぷり。
ショコラ・グラス。先の液体のアイス版つまりはアイスココアですね。同じく絶品なのですが、冷やっこいため味蕾が鈍感になってしまい、ショコラ・ショほどの衝撃は感じられず。もちろん世に言われるココアとは全く別物の液体であり、これで1杯1,000円というのは意外にリーズナブルかもしれません。
ところで、後輩の国語力欠落問題につき、OECD主催の国際成人力調査すなわち「16歳から65歳までの成人を対象とし、社会生活で求められる能力のうち、読解力、数的思考力、ITを活用した問題解決能力の測定」を思い出しました。その調査の結果は惨憺たるもので、「日本人の3分の1が初歩的な日本語を読めず、同じく3分の1以上の人が小学校3〜4年生の数的思考力しか持たない、パソコンを使った基本的な仕事ができる人は1割以下」という事実がデータとして整理されています。
ムース・オ・ショコラ。メレンゲにショコラの風味を移し、自慢のショコラをたっぷりと削りかけたもの。茶碗いっぱいほどのボリューム感であり結構な迫力なのですが、その口当たりは驚くほど軽く秒で食べ切ってしまいます。ムースの美味しさは当然として、トッピングのショコラがいちいち旨い。
「面白い話ね」彼女はちっとも面白くなさそうに言う。「じゃあ、どうすれば良いってわけ?あたしの教え方が悪いの?上司に相談したら『教育係のあなたがもっと頑張らなきゃ』って逆に怒られちゃうし」
バー・クロッカント。カリカリした生地にムースをのせ、チョコレートでコーティングしたもの。やはり間違いなく美味しいのですが造形上どうしてもスニッカーズ的チョコバーに見えてしまい、せっかくのカフェでフォークとナイフを使って食べる感に乏しい。したがって当店においては先のムースのような3Dタイプのスイーツをチョイスし、その他はテイクアウトでおうちで食べるのが良いでしょう。
まあまあ、その後輩は悪くないよ。足が遅い人に「何でもっと速く走れないんだ!」って怒っても仕方がないのと同じだよ。根本原因はそういう異分子を採用してしまった偉い人たち、あるいは簡単にはクビにできない社会に構造的な問題があるんだよ。その後輩だって何だかわからないけど毎日毎日怒られて辛い思いをしてると思うよ。きっと今ごろFacebookに思いつめたような投稿をして、オッサンたちの気持ちの悪い応援コメントを集めてるところだよ。
食後は1Fのショップを目で楽しむ。ショコラのための温度設定となっているため、半そでだと鳥肌が立つほど寒いです。
「じゃあ、あなただったらどうする?そんな出来損ないの後輩を持った場合」うーん、キミは何もしなくてずっとスマホをいじってるだけでいいよ、キミの分の仕事は全部僕がやっておく、休みたければ自由に休んでいい、って言うかなあ。後輩にだって何か得意な分野ややりたいことはあるはずなので、閑職で無聊を託つ毎日にはそのうち耐えられなくなり、自ら退場していくことでしょう。
何も働いていないのに後輩がお金を得るのはズルい?うーん、そのあたりは寄付と考えればいいんじゃないかなあ。人には向き不向きというものがあるのだ。「あきれた。働き方改革という名のゆとり教育ね」その通り。労働時間が短くなって喜んでるようでは、格差は広がるばかりなのである。
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男、かつ、左党の割にスイーツも大好きです。特にチョコレートが好きですね。JPHが基準なので、スイーツの評価は厳し目かもしれません。
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難解な理論をユルいトーンで柔らかく読み解く専門書。チョコレートに係る基本的な素養から、文学や映画など芸能との関係まで解かり易く解説。ぜひチョコレートを食べながらのんびりと読んでみましょう。