「
シグネチャー」「
ケシキ(K’shiki)」「
タパスモラキュラーバー」などミシュラン常連店が集うマンダリンオリエンタル東京。今回は私のお誕生日祝いということで、広東料理の1ツ星「センス(sense)」にお連れ頂きました(写真は公式ウェブサイトより)。
37階のため眺望が抜群。
九龍の「天龍軒(TIN LUNG HEEN)」を彷彿とさせます。夜は東京ディズニーランドで打ち上げられる花火も見えるそうな。「たまには中華もいいでしょ?ココ、点心の食べ放題だから、大食漢の〇〇さん(私の名)と来ようって、ずぅっと前から企んでたの」
前菜3種盛りで開演。奥は肉をしっかりと煮込んだもので赤ワインが欲しくなる。北京ダックは王道の味わい。手前のクラゲはカットが大きくブリブリと歯ごたえがあり美味しかった。
スープは3種からのチョイスであり、私は「蟹肉入りパンプキンスープ」を選びました。スープは高級フレンチで登場するそれと同等の味覚であり、カボチャの甘味と出汁のバランスが素晴らしい。白眉はカニ。どうしてもカニは主役に置きたがる傾向にありますが、脇役として上手くアクセントとして存在していました。
「海老の香り揚げ 香港海鮮市場スタイル」。ネーミングセンスはちょっとアレですが、大ぶりの海老をガリっと高温で揚げており、ジャンクな調味と共に脊髄反射で旨い。これはあと10個は食べれるなあ、とニヤついていたのですが、コチラは食べ放題には含まれないとのこと。しゅん。
さてお待ちかね、ここからは点心のメニューの中からお好きなものをお好きなだけ。注文する数も自由自在であるため、我々は全種類制覇を目指して1人1種1粒づつ注文していきます。手間のかかる客で申し訳ありません。
まずは小籠包。肉の風味がしっかりとした芸風です。
「海老入り蒸し餃子」「たらば蟹と海老のクリスタル蒸し餃子」「トリュフときのこの蒸し餃子」。海老なだけで私は満足なのに、たらば蟹まで加えてしまうとは割と最強系です。トリュフの扱いも上手く、ブワっと香る黒いダイヤに舌鼓。
2019年は5回も香港を訪れ飲茶の有名店を食べ歩きましたが灯台下暗し、当店の点心が一番美味しかった。
「帆立の蒸し餃子」「鮑をのせた豚肉と海老の焼売」。前者は素材そのものの味わいが強烈であり良い出汁が出ています。後者は闊達自在な組み合わせであり、それぞれの素材がいちいち美味しく白旗を挙げてしまいました。
「海老とニラ入り餃子の香り焼き」。こんなに美味しいニラ饅頭は食べたことがありません。しかもどの点心にもいちいち海老が入っているのが嬉しい。エビマシュランとしては至福のひとときである。
「牛カルビの黒胡椒蒸し」。味は悪くないのですが、ちょっとヴィジュアルがイケてませんね。味の濃い箸休め程度に捉えることとします。
大根餅が絶品。大根餅って、大根と言いつつ全然大根の味が感じられないことが多く、メロンソーダはメロンの味がしないという方程式に似ているのですが、当店の大根餅は大根が原型を留めた形で焼き込まれており、質の高いおでんを食べているかのような錯覚を覚えました。もちろん素材としてはカニやエビなどには敵いませんが、こと大根という素材の料理としては東大理Ⅲ級の偏差値です。
「豆苗と東星ハタの蒸し餃子」。東星ハタとは沖縄原産の希少な魚だそうで、ハタ特有の弾力に矛盾するようですがフワフワとした食感が感じられデイドリーミングな美味しさでした。
「海老すり身と野菜の湯葉まきオイスターソース蒸し」。うひょひょ、えっちだねえ、コッテリとしたソースを纏った湯葉の中にはまた大量の海老が入っています。これまでの点心とは芸風の異なる、かなりジューシーな一皿でした。
「蒸し豚スペアリブブラックビーンソース」はさっきの肉と同様に映えません。こういう料理はドカっとした量で、ゴハンと共に食べるとまた印象が違ったかもしれません。
「海老入り揚げワンタンのスイートチリソース」。くどいようですが、海老です。ワンタンがバリっと高温で揚がっており、ザクザクとした食感が楽しい。それ単体でしっかりと甲殻の味が感じられたのでソースはつけませんでした。
「季節の野菜入り蒸し餃子」はその名の通り野菜だらけの餃子なのですが、これまでのAB連打プレイとはまた違った印象を持たせるものであり、これはこれでかなり旨い。
「鶏モミジの豆鼓蒸し」はミスターコラーゲンといった方向性。日本では中々お目にかかれない料理であるため、異文化コミュニケーションとしての楽しさがあります。
「叉焼包」は終盤に食べるにはキツめの生地の厚さですが、内部のとろとろチャーシューは絶品。この中身だけゴハンにかけたりしたら最高なんだろうな。
連れの内臓が絶滅の危機に瀕していたため、彼女お気に入りの点心をおかわりしてフィニッシュです。ふたりが合意に至った結論は「たらば蟹と海老のクリスタル蒸し餃子」「トリュフときのこの蒸し餃子」が天下無双ということでした。
「最後にお食事ものなどはいかがでしょうか?」と店員が煽ってくるスタイル。望むところだ、と、「鶏肉と干し貝柱の蒸しご飯 蓮の葉包み」をシングルプレイ。干し貝柱の出汁がお米にたっぷりと沁み込んでおり、鶏肉のジューシーでミンチーな食感も堪らない。終盤でこの美味しさを感じさせるとは恐ろしい子。
他方、「香港麺の焼きそば」は大して美味しくありませんでした。麺が細すぎコシやコクというものが感じられません。
連れがお誕生日プレートを用意してくれました。添えられるスイーツが月餅など中華風のものなのが面白い。ロウソクが2本立てられていたので、「健康」と「安全」のふたつを祈念して炎を吹き消す。
通常のデザートの杏仁豆腐もついてきます。これがまたきちんと美味しく、この日は暴力的な食べ方をしてしまいましたが、次回は夜にコース仕立てで楽しみたいなと期待を持たせるフィナーレでした。
大大大満足のランチでした。
あれだけ香港に通い詰めた結果、日本の飲茶が一番とは実に複雑な心境です。しかもお好きなものをお好きなだけとか最高かよ。ただしアルコールは市価の5~6倍と信じられないほど高価なので、そこは飲茶の形式に則り手の込んだお茶をポットで飲むのがコスパ最強説かもしれません。お腹を空かせてどうぞ。
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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
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