まずは前菜。1時から時計回りにホオズキ、ポワロネギ、パテドカンパーニュ、万願寺唐辛子、ラタトゥイユ、お魚ののマリネ。いずれも気の利いたビストロで出てくる料理と同格であり、万願寺唐辛子は焼きたてで供するなど食べる魅力に溢れます。
山中良則シェフは元々フランス料理出身であり、ジャンルにこだわらず修業されたそうなのですが、火入れの奥深さに魅了され焼鳥店へと照準をあわせたそうです。
ササミにはタプナードを添えて。タプナードとはプロヴァンス地方の名物であり、オリーブをミンチにしてアンチョビやオリーブオイル、ニンニクなどで風味を整えたペースト。肉には少し酢をかけているのかなあ、焼鳥としては強めの酸が印象的。
ワインリストが無い店はビミョーなことが多いですが、当店のソムリエールはヲタク気質すら感じるワインマニアと見て取れたので、相談しながら決めると良いでしょう。産地はアルザスとロワールが多め。値付けは料理の価格設定に比べると少し高めです。
ネギマ。これはすべての秩序が崩壊するほど美味しい1本です。バリっとした食感の外皮に弾力のあるモモ肉。噛みしめる程に溢れ出る肉汁と旨味。ネギのひょっこりとしたアクセントもベストマッチ。本日一番の、というか人生で食べた中で最も旨いネギマでした。
温前菜を挟んできます。やんわりと火の通ったイノシシ肉にカツオと梅でとった出汁をたっぷりと注ぐ。レッドホットチリペッパーズもかくやと思わせるミクスチャークロスオーバーな逸品であり、焼鳥屋でこのような料理が出るというコンセプトが面白い。
つくねは塩です。個人的にはつくねは濃厚なタレと卵黄で食べるのが好きなのですが、この1本に限っては塩が良い。ジューシーで肉そのものの味覚が素晴らしく、細かく刻まれたナンコツが生み出す食感のリズムもグッドです。
赤ワインに参りましょう。最近の焼鳥屋はなぜかワインを出したがる傾向にあり、そのくせワインに係る知識が無茶苦茶であったり、ソーヴィニョン・ブランを用いたピノノワールの赤という珍しいワインを用意している店があったりとちゃらんぽらんなことが多いですが、当店のワイン選びは本物です。
ひざ。コリコリとした食感を楽しむ1本であり、箸休め的な印象を受けました。
レバーには臭味が一切なく、これは液体なんじゃと思えるほどトロトロとした食感。少しふられた山椒の香りもすごくいい。レバーだけに度肝を抜かれる美味しさでした。先のスパイシーなグルナッシュがとても良く合う。
野菜焼き。先のヒザと同じく緩急織り交ぜてくるのが良いですねえ。トマトをしっかりと肉で巻いたり、ズッキーニにラルド(豚の脂の生ハム)をのせたりと小技が光ります。
メインはフランス産の鴨。ぐわー、こんなん完全にフランス料理のメインディッシュやんか。ムキムキと筋肉質でマッチョな味わいを赤ワインで流し込む。レンコンのシャクっとした食感も添えられ至福のひととき。
〆の鶏がらスープもきちんと美味しい。同じ武蔵小山の「まさ吉」の名物ラーメンも悪くないですが、純粋にスープとしての味わいであれば当店に軍配があがる。
しっかり飲み食いして1万円。素晴らしい費用対効果ですねえ。あれだけワインを飲んでこの価格に落ち着くとはフランス料理店としても優秀。焼鳥屋としても創作的で、感覚が研ぎ澄まされた味覚が続きます。焼鳥屋としてはトップクラスに好きなお店。オススメです。
関連記事
イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
- 鳥かど/目黒 ←私的いちばんのお店
- 鳥さわ/亀戸 ←焼鳥業界の最高峰「鳥しき」ののれん分け
- TORISAWA CA10AL(トリサワ カジュアル)/麻布十番 ←この価格で最高峰の味覚を実現している
- シノリ(Shinori )/武蔵小山 ←フレンチ焼鳥。焼鳥屋としてトップクラスに好きなお店。
- 床島/三軒茶屋 ←ふたりで好き放題飲み食いして12,000円程度
- 鳥政(とりまさ)/表参道 ←ランチの焼鳥丼が最高!
- 焼酉 川島/麻布十番 ←トップランカーに比肩するクオリティながら予約が取り易い
- やきとり 嶋家/麻布十番 ←無名ですがオススメ
- 焼鳥 茜/神楽坂 ←ワインと合わせる焼鳥
- こけぴよ/代官山 ←子供と行ける焼鳥屋
- 焼き鳥 丈参(たけさん)/人形町 ←人気ですが店員の態度が最悪
- 瀧口/泉岳寺 ←4,800円のコースにしては素晴らしい出来。〆はトリュフ卵かけごはん!
- 串焼 大助(おおすけ)/大門 ←焼鳥というよりはより高次元な鶏料理
- 【保存版】ミシュランを300店訪れた私が選ぶ、鳥貴族おすすめメニュー7選 ←番外編