店内は奥に細く、カウンターがズラりと並びます。奥の個室風の席も含めれば席数は思いのほか多い。
ドミニク・コルビシェフは「トゥールダルジャン(La Tour d'argent)」など日本で20年以上活躍している知日派。出汁などを多用し、バター・クリーム・小麦粉などを使わずに胃にもたれない優しいフレンチを目指します。
ワインのペアリングがびっくりするほど安い。食前酒がシャンパーニュに、食事に合わせたワインが4杯もついてたったの4,000円です。下手をすると酒屋で買って飲むよりも安いかもしれません。
カボチャのスープ。野菜の味がはっきりと感じられる、ペーストに近い存在感のある一皿。
アボカドをベースにたっぷりのカニ肉を乗せ、甲殻類の旨味のジュレで固める。これはもう、どうやったって美味しいですね。甲殻類アレルギーの方であれば発狂しそうなほど密度の高い味わいです。
白のワインはカニの旨味を邪魔することなく清澄な味わい。ソムリエが理論派で、これとこれとこれがこうだからこうなんです、と簡明直截に説明してくれるのが凄く良い。
宮崎県の鰻。フランス人の手による鰻は煮込んでしまう料理が殆どですが、当店のそれは日本風(?)にバリっとやかれています。シェリービネガーソースの酸味が一般的な鰻の味わいとはまた違った魅力を引き立てる。
ドイツのリースリングは酸味がシェリービネガーソースに寄り添い、一方で、ハチミツのような味わいも印象的。
フォアグラのフラン。コッテリとした味覚。王道中の王道。安心して食べることのできる美味しさです。
香りが豊かで2014年ながら熟成感もあり、果実味が強い。量もたっぷり注いでくれ、くどいようですがペアリングがお得です。
メインはガツンと肉。「出汁などを多用し、バター・クリーム・小麦粉などを使わずに胃にもたれない優しいフレンチ」との事前情報により物足りない事態も覚悟していましたが、なかなかどうしてズバンとハッキリした料理も出してきます。フランと同様に安定的な味わい。
うーん、こんなに気前よくジャブジャブとワインを注いで、このお店は経営が本当に成り立っているのかと不安になる。ここまで計5杯4,000円。ある意味では酒飲みと下戸の間で印象が大きく異なるお店かもしれません。
パンが出ないなあと思っていると、炊き込みご飯が登場。これは、まあ、企画モノですね。もちろん日本人として米の美味しさは大歓迎ですが、あまりここで炊き込みご飯を出す必要性は感じられませんでした。
デザートのポーションも大きい。ドミニク・コルビ流のシンプルで親しみやすいミルフィーユであり、満腹の胃袋にも上手に納まります。
小菓子にも手抜きなし。ごちそうさまでした。
いずれの料理も美味しくワインの合わせ方も完璧、そして何より大変リーズナブルであり、満足度の高い食事でした。ズバ抜けて美味しく一生忘れられない逸品というものは見当たりませんでしたが、この費用対効果の良さには代えがたい。サービスも的確。フランス料理入門編としてベストなお店と言えるでしょう。
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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
- ガストロノミー ジョエル・ロブション ←最高の夜をありがとう。
- アピシウス ←東京最高峰のレストラン。
- ナリサワ ←何度訪れても完璧。
- ナベノイズム ←世界観がきちんとある。
- ル・マンジュ・トゥー/神楽坂 ←接客は完璧。料理は美味そのもの。皿出しのテンポも良く、とにかく居心地の良いお店。客層も好き。
- TAIAN TOKYO(タイアン トウキョウ)/西麻布 ←流行り廃りに捉われないマッチョな料理。
- ア・ニュ Shohei Shimono/広尾 ←リニューアルしてリベラルに、旨けりゃなんでもいいじゃん的に
- ラフィナージュ(L'affinage)/銀座 ←王道中の王道。銀座とは考えられない値付け。
- ル・マノアール・ダスティン/銀座 ←まさに正統。
- SUGALABO ←料理だけなら一番好きかも。
- エクアトゥール ←天才によって創られる唯一無二の料理。
- ete(エテ) ←美食の行き着く先はお抱えの料理人。
- レヴォ ←人里離れた場所にありながら、日本いや世界でもトップレベルのフランス料理店。
- フロリレージュ ←間違いなく世界を狙える。
- クレッセント/芝公園 ←グランメゾン中のグランメゾン。
- アサヒナガストロノーム/日本橋 ←そこらのフランス料理店とは格が違う。
- ティエリー マルクス ←料理の良さはもちろんのこと、ワインのペアリングが見事。