パリ屈指の肉職人、ユーゴ・デノワイエ。「世界一の肉屋」とニューヨークタイムズが評し、ジョエル・ロブションやアラン・デュカス、ピエール・ガニェールなど、フランスの名だたるトップシェフたちが指名買いすることで有名です。
「牧場地から皿の上までが肉職人の仕事」と言い切り、「1頭あたり最低1ヘクタールで放し飼い」「ストレスを与えないよう輸送は家族構成で」など、ユニークな哲学をお持ちの方です。
彼の肉を用いるレストランが、2015年に仏国外初の店舗として恵比寿に出店したのですが、本国の「グローバル戦略の見直し」という不明瞭な理由により一時閉店。その後、日本の経営者がクラウドファンディングで資金を集め日本での展開を引き継ぎ、リニューアルオープンです。
1階はカウンター席中心のカジュアルな空間であり、精肉やシャルキュトリーの販売も行っています。
私が前回ランチでお邪魔した際はカウンター席での食事でした。今回は2階のメインダイニングにて。気楽なビストロといった雰囲気で、客単価は1万円を超えるというのにサンダルに半パン・Tシャツのニーチャンがいたりします。
ワインが安い。グラスのシャンパーニュは確か千円台前半だった気がします。ボトルで飲んでもシャンパーニュは7千円台と、酒飲みに優しいお店。我々は食事に合わせてのペアリングを注文。
1皿目はスペシャリテの「牛のタルタル 雲丹のあしらい」。ねっとりと官能的な舌ざわりに甘味の強い脂が旨い。種々のスパイスを混ぜ込んで、生肉原理主義としてはガチウマイ1皿です。ただし私は肉を食べに来たのでウニは不要かも。そのぶん肉を増やして欲しかったな。
スペシャリテの「ブータンノワール SUGIURA Style」。おなじみ豚の血入りソーセージですが、当店は珍しくテリーヌ型での提供です。語感ほど味覚はグロくなく、粗挽きの豚肉に血のコクが入り混じりコッテリと美味しい。ところでこの料理のスペルはBoudin noirであり発音は「ブー
ダンノワール」なのですが、メニューには「ブー
タン」と記されており、そのへん誰も注意しないでこの店大丈夫かと心配になりました。
ワインは南西のタナ主体で。当店のペアリングは料理の郷土と産地を合わせてくる教科書通りな芸風であり、保守的な私としては居心地よく飲めます。1杯の量はソコソコ多く、これで3杯3,780円というのはお得かもしれません。
「ポロネギのテリーヌ ビネグレットとトリュフの香り」。思いがけずお野菜が出てきました。たっぷりのネギが凝縮されておりネギ好きとしては堪らない1皿。一方でやや水分が抜けすぎているきらいがあり、また、トリュフの香りは全く感じられません。
合わせるワインはソーヴィニョン・ブラン。香りが強く爽やかな口当たりであり、まさにソーヴィニョン・ブランといった味覚です。
メインは「熊本あか牛」と「フランス牛」の食べ比べ。いずれも部位はモモの部分で各80グラムとボリューム満点。なるほど肉推しのお店だけあってステーキとしては文句なしの美味しさです。ただしやはり焼いた肉は焼いた肉でしかなく、その感動には限界がありました。日本にはレベルの高い焼肉屋が山ほどあるので、シンプルに肉だけを食べるという行為については不感症が進んでいるのかもしれません。
ワインはボルドー。ワインのチョイスは全くブレず好印象。肉の量に比べてワインが少ないので、もうちょっと調整してくれると嬉しかった。
デザートは「シェフのこだわり チョコレートの植木鉢」。定番のチョコレートムースです。このプレゼンテーションは
10年近くも前から日本で流行っているので、それを「こだわり」というのはちょっと草です。
たっぷりのコーヒーでごちそうさまでした。
前回お邪魔したのはランチであり、たった3,000円でユーゴ・デノワイエ尊師の肉が食べれるのかと小躍りしたものですが、今回のディナーは食事だけで1万円を超えており、その印象のギャップにうろたえます。
日本上陸時は予約が全く取れず、入店できたとしても肉の供給が追い付かないなど嬉しい悲鳴が上がっていたのですが、今回のディナーは我々含めてオープンからラストまでで3組だけでした。うーん、どうしちゃったんだろう。ブーダンではとてもセンスを感じたので、肉一本で勝負するのはもうやめて、シェフの創造性を駆使した肉寄りビストロで勝負したほうが良いのかもしれません。
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恵比寿も十番に負けず劣らず良い街ですよね。1度住んで、片っ端から食べ歩いてみたいなあ。よそ者ながら印象に残ったお店は下記の通り。
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