リオネル・ベカ(Lionel Beccat)シェフはフランス・コルシカ島出身(写真は公式ウェブサイトより)。「メゾン・トロワグロ」でセカンドシェフにまで上り詰めた後、新宿「キュイジーヌ[s]ミッシェル・トロワグロ」のシェフとして来日し、2012年に「ESqUISSE」へ。
食前酒(シャンパーニュ)とミネラルウォーターは込み料金という明朗会計。2019年10月には全体的な値下げを検討しているなど、東京の高級フレンチとしては珍しい試みです。ブランドブランのキリっとした旨味が火照った身体を冷やしてくれました。
1皿目は梨にカラスミ。それ以上、説明しようが無いほどの梨とカラスミ味でした。
サバ。片方は炙り、もう片方は生で。こちらも前の皿と同じく、見た目以上の何もない味わいでした。これ、目をつぶって食べたらたぶん回転寿司のサバとそんなに変わらんぞ。
リースリングのグランクリュ。私はリースリングという品種をあまり好まないのですが、コチラの1杯は実に厚みのある味わいでグレイトです。量もたっぷり注いでくれるので今夜もハッピー。
ハモそのものは炙ってあるのに出汁はヒンヤリ冷たい。うーん、不味くはないですが、ちょっと何をしたいのかわからないですね。シェフは和食に寄せたいのかなあ。
合わせる白はコチラ。ブルゴーニュらしい上品な樽の風味が心地よく、全体としての味わいの解像度も細かい。料理の力不足を補う素晴らしいペアリングです。
パンドカンパーニュは一般的なそれの味わいでした。
ボタンエビも1匹だけがペロっと置かれているだけであり、味は悪くないのですが、見た目も温度もよくありません。
エビのシェルパを担うのはクリュッグ。熟成を促進するためにあえてハーフボトルで輸入しているそうで、なるほどクリュッグはクリュッグだと言わしめるパワフルな味わいです。
キンキも魚そのものは悪くないのですが、ほんの数口だけで食べ応えに乏しい。はっきり言って立ち飲みビストロ浜町「富士屋本店」のフィッシュ&チップスのほうが美味しいです。
シャトーヌフ・デュ・パプの白。そういうものが存在することは聞いていましたが、飲むのは生まれて初めてです。そしてこれがかなり旨いのである。あの産地は殆どが重めの赤ですが、ボルドーみたいに白の人気が上がっても良い気がしました。
メインはラム。これは今夜の料理で唯一、そしてダントツに美味しかった。こんなに高次元な料理が出せるのに、これまでの迷走っぷりは何だったのでしょう。ピカソが本気出して絵を描けば超上手いみたいな感じなのかなあ。
合わせるワインもポンテカネと最高かよ。当店の料理は全体的に不思議の国のアリス状態ですが、ワインについては正統的な合わせ方で気前も良い。相対的にワインペアリングの素晴らしさが目立ったディナーです。
お茶?ハーブ水?やはり意図が見えない液体を飲んだ後はデザートです。当店のパティシエは代々木公園「PATH(パス)」との兼業であり、かのレストランでのデザートはどっちゃくそ美味しかったので期待で胸が高鳴ります。
ココナッツ風味のヨーグルトに煮込んだルバーブなどなど。おしゃれな外観ですが、味はまあ中くらい。
これはソムリエのちょっとしたギャグでしょう。「Quintessence」というデザートワイン。それにしても「Quintessence」って難しい単語ですよね。この単語に聞き覚えがあるの、フランス人よりも日本人のほうが多いんとちゃうか。
メインのデザートはグレープフルーツ主体でそれなりに美味しいのですが、代々木公園「PATH(パス)」で感じたパンチ力は見当たらず。
小菓子(?)とコーヒーでごちそうさまでした。
うーん、ちょっとどうしちゃったんだろうというレベルの迷走度合いです。初めて当店にお邪魔した際の記憶を拭い去るつもりで訪れたのに、より悪化しています。少量多皿で何を食べたか全く記憶に残らず、これで食べログ4.51(2019年9月)のミシュラン2ツ星とは今世紀最大の過大評価に感じました。
ただ、ワイン・ペアリングの素晴らしさについては既に述べましたし、サービスの技量も全く問題なし。加えてメインのラムについては尊い美味しさがありました。つまり何かが私の好みからちょっとづつズレているだけで、それがカチっとはまれば唯一無二のレストランに化けるのかもしれません。また6年後に来てみようかな。その頃には前菜とメインとデザートだけをアラカルトで注文できると嬉しいのだけれど。
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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
- ガストロノミー ジョエル・ロブション ←最高の夜をありがとう。
- アピシウス ←東京最高峰のレストラン。
- ナリサワ ←何度訪れても完璧。
- ナベノイズム ←世界観がきちんとある。
- ル・マンジュ・トゥー/神楽坂 ←接客は完璧。料理は美味そのもの。皿出しのテンポも良く、とにかく居心地の良いお店。客層も好き。
- TAIAN TOKYO(タイアン トウキョウ)/西麻布 ←流行り廃りに捉われないマッチョな料理。
- ア・ニュ Shohei Shimono/広尾 ←リニューアルしてリベラルに、旨けりゃなんでもいいじゃん的に
- ラフィナージュ(L'affinage)/銀座 ←王道中の王道。銀座とは考えられない値付け。
- ル・マノアール・ダスティン/銀座 ←まさに正統。
- SUGALABO ←料理だけなら一番好きかも。
- エクアトゥール ←天才によって創られる唯一無二の料理。
- ete(エテ) ←美食の行き着く先はお抱えの料理人。
- レヴォ ←人里離れた場所にありながら、日本いや世界でもトップレベルのフランス料理店。
- フロリレージュ ←間違いなく世界を狙える。
- クレッセント/芝公園 ←グランメゾン中のグランメゾン。
- アサヒナガストロノーム/日本橋 ←そこらのフランス料理店とは格が違う。
- ティエリー マルクス ←料理の良さはもちろんのこと、ワインのペアリングが見事。
エスキス