席数は30近くありそうです。公開された厨房が臨場感抜群。積み上げられた薪にパチパチと爆ぜる音、独特の火の香りが食欲を掻き立てる。
陶器の白いお椀(?)で飲む微発泡が面白い。果実味が強く食前酒としてはヘヴィですが、このお椀でどう乾杯すれば良いのか、両手で飲むべきなのかなど、同伴者との盛り上がり間違いなしの一工夫です。
佐藤崇行シェフはイタリアじゅうを隈なく訪ね歩き、その土地に根差したパスタ料理のレシピを日本に連れて帰ってくるという奇特な方。パスタを注文するにあたってあまりに選択肢が多いので、自分の好みに芯が無いと途方に暮れるかもしれません。
突き出しには「ティジェッラ」。エミリヤ・ロマーニャ州はモデナで食べられる「おやき」のようなパンです。濃厚なサラミを挟み、長期熟成したパルミジャーノ・レッジャーノで旨味を付与して食べ応えのある先頭打者。
前菜はイチヂクに生ハム。希少な緑のイチヂクは、赤のそれほどわざとらしい甘さは無く、生ハムと一緒に食べるにちょうど良い風味でした。
プロセッコをボトルで頂きます。当店で供される食材ならびに飲料は全て生産者と直結しており、「直接会った方のもののみ取り扱っている」と胸を張る。スタッフは食材やワインの出自をしっかりと理解しており、聞くとすぐに検索するプロ意識の無いレストランとは大違いである。
低温調理した鶏肉にたっぷりのフルーツ。アスリートも納得のヘルシーな1皿です。鶏肉は適度に瑞々しさを保ち、ジューシーな食感。いずれのフルーツも味が濃く凝縮感がありました。
私が選んだパスタは「ビーゴイ」。ヴェネト州の漁師町由来のパスタであり、蟹の旨味がたっぷり詰まった私好みの一皿です。麺は太く申し分のない美味しさですが、個人的にはも少し固ゆでタイプのほうが好みです。
自家製パンは天然酵母で焼き上げる本格的なもの。外皮のカリカリが上質なドーナッツのようで美味。
連れが選んだパスタは「トロフィエ」という手打ちパスタ。ソースはジェノベーゼ。松の実、バジリコ、山のチーズ、ニンニクと間違いのない構成要素。ニンニクとバジルの香りが食欲を呼び起こし、チーズの旨味が堪らない1皿です。
メインの薪焼き料理は豚肉をチョイス。安曇野の放牧豚と最上の素材を薪火でジュワっと焼き上げます。表面は焦げるほどにバリバリとした食感で、肉そのものは保湿されてジューシーという矛盾。脂の1滴まで美味しさが感じられる、上質なメインディッシュでした。
私のデザートはヨーグルトのスープ。果物やナッツなど自然そのものの味わいであり、こうった食生活を毎日続けたいなと思わせるヘルシーさ。
連れが選択したのは王道のティラミス。ティラミスというよりももはやマスカルポーネチーズの塊であり、濃密な脂質と程よい調味のバランスが最高で、最高レベルのティラミスです。
結構な満腹感で適度に酔い、ひとりあたり1.2万円でした。食事内容は間違いなく上質で皿出しのテンポも良く、サービススタッフの対応も申し分ありません。一方で、調理そのものはシンプルではあるものの、完成形に至るまでのプロセスが非常に難解であり、カジュアルな雰囲気に誘われて出かけると面食らうかもしれません。どちらかというと玄人好みのヲタク向け。ある程度イタリア料理を食べ込んでベーシックとは何かを掴んでから訪れると楽しみが増すでしょう。
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恵比寿も十番に負けず劣らず良い街ですよね。1度住んで、片っ端から食べ歩いてみたいなあ。よそ者ながら印象に残ったお店は下記の通り。
- ALTRO!(アルトロ) ←十番カラペティ・バトゥバ!の姉妹店。居心地最高。
- KINOE(キノエ) ←食事が割安。自由度も高い。
- CarneSio east(カルネジーオ イースト) ←なんて素晴らしい費用対効果なのでしょう。
- スブリデオ レストラーレ ←チーズ好きのカーバ神殿
- ガストロノミー ジョエル ロブション ←やはり最強。季節ごとにお邪魔したい
- ラ ターブル ドゥ ジョエル ロブション ←超高級ファミレス
- ビストロアム ←フレンチの出オチ最強選手
- ユーゴ・デノワイエ ←3,000円切るランチでこのレベルなら大満足
- レストラン間 ←日本で最もカリテプリに優れたお店なんじゃないか
- ビストロエビス ←うちの娘もああいうふうに育つと良いんだけれど
- 恵比寿くろいわ ←料理学校の和食クラスの生徒の料理を食べてるみたいな気分
- えびすの安兵衛 ←超行列店。高知名物「屋台餃子」を恵比寿の地で!