カウンター十数席のみの素敵な店内。温かみのある木と無機質なコンクリートが妙にマッチし、NYあたりのイタリアンレストランのようでもある。全くもって新店であるためガラ空きでした。
ハートランドの中サイズで乾杯。これが所謂パイントにも迫ろうかという特大サイズ。十番の飲食店でこの量を800円で飲めるのは有難し。
「最近は生活も安定してきて、創作意欲も枯れてきちゃった」彼女は贅沢な溜息をつく。「やっぱ恋とかしなきゃダメなのかなあ。やっぱりあのヒリヒリした恋の熱量は麻薬的ね」その通り。もしよければ、私が生活を不安定にして差し上げよう。
お通し(?)の野菜スティックが彩り豊か。苦味や甘味など複数の味覚が詰まっており、旨味の強い味噌と共に素敵なアミューズでした。
「そういう意味で『もう恋なんてしない』の議論は興味深かったわ」なんとタイムリーな。私の中では『また恋人作るもんね!ベーっっだ!』という強がり説でカタはついたのですが、その数週間後である今日にある粘着な男が再び絡んできたのです。
「もちろん旦那との穏やかで幸せな毎日を放り出して恋のバトルフィールドに飛び出すつもりなんて無いんだけど」彼女は恐らく恋の浮き沈みの際に放出されるホルモン的な何がが濃いのでしょう。
「とりわさ」を注文すると、1皿を2人に取り分けて頂けます。これで1人分。軽くつまむつもりが唐揚げ数個分はありそうなボリューム感。肉そのものの味が強い割にクリアでもあり、爽やかな調味と共にベリーナイスな1皿でした。
焼鳥に入るといきなり「つくね」が出てきました。個人的にはドロドロのタレにたっぷりの卵黄を漬けて食べるのが好きなのですが、この1本は別格。粗目に挽いてほどよく食感を残しつつ品の良い調味で食べさせる。今までに無い斬新な1本でした。
日本酒は奈良の「風の森 純米こぼれ酒 秋津穂」を注文。私の大好きな酒造のひとつです。日本酒はその殆どが1合1,200円とやや高め。ちなみに当店はワインの品ぞろえが立派であり、神楽坂「茜」の芸風に割と似ています。
「レバー」。歯で挟むとトロリととろける濃厚な1本。臭みや雑味も排除されており、赤ワインが欲しくなる。
私の場合、もう恋なんてしたくないですね。もちろん渦中にいるときはエキサイティングなのですが、振り返ってみるとイラつくことばっかりだった、ということが殆どです。私は心おだやかに暮らしたい。
「むね」。こちらは水分が飛んでしまっており瑞々しさに欠けました。個体差なのか何なのか、まあ、そんなこともあるでしょう。
彼女は身を乗り出して聞く。「じゃあ、キミにとっての楽しみって、何?」それは旅行と食事でしょう。2019年上半期は地球1.8周分の旅をした。私は皆さんが想像している以上に旅することと食べることに執着しており、地図を眺めている時間はアマチュアとしてはトップクラスに長いほうだと自負しています。
「ふくらはぎ」。恐らく意識して食べるのは初めての部位です。語感ほどマッチョな食感ではなく、どちらかというとモモに近い歯ざわりでした。
「え~っ、オリンピックとか楽しみじゃないわけ?当選しなかったの?」その時期はシチリアにいる予定だから、応募すらしていない。私は事務的に返す。「そういうのにあまり興味が無くて応募しない人はいるけれど、わざわざその期間に海外旅行を入れる人は初めて聞いたわ。だって、1年以上も先の話だよ?仕事とか大丈夫?」
トウモロコシは「ゴールドラッシュ」という品種。香りが良く甘味もたっぷりであり、夏祭りを想起させる味覚です。
大根はおろしというよりもみじん切りに近く、食感がしっかりと残っていて私好み。水分と分離して旨味が流れ出ちゃうので、あまり目の細かい大根おろしは好きじゃないのです。
それにはタモリの名言『遊びだぞ!真剣にやれよ!仕事じゃねぇんだぞ!』を引用したい。仕事なんてものはいくらでも換えがきくものであり、その程度のものである。他方、プライベートな遊びは自分の人生の質に直結するものであり、自分自身でしかコントロールできません。
「はし」と言われる部位。このあたり私は全く詳しくないのですが、恐らく何かの端にあたる部分なのでしょう。コリっとした強めの食感。少し臭味がある。
「もも」は王道の味わい。表面はバリっと炙られており、内側は程よく瑞々しい。肉そのものの味覚も申し分なく、これを美味しくないという日本人はいないでしょう。
「ちょうちん」。きんかんと呼ばれる卵になる前の卵黄と、ひもと呼ばれる卵管が一体化。濃厚なきんかんは私の大好物なのですが、あまりに濃密かつ独特の風味もあるため好みは分かれるかもしれません。
濃密な「ちょうちん」に負けじとビールを注文。トロピカルな香りにフルーティで飲み口。ややスパイスの風味も感じられます。価格は1,000円。もうちょい安いと嬉しいです。
「休みが取れたら行く」という旅行スタイルでは行けてもせいぜいハワイ程度。空や海は広く、ここではないどこかへ行きたいのであれば、行きたい場所をまず決めて、それを達成するにはどう働くべきかを逆算して取り組んでいくしかありません。
「淡路の新玉葱」。まさに旬、まさに素材といった味わいであり、瑞々しくスイート。
ちなみに既に確定している旅先を記しておくと、2019年下期は和歌山、座間味島、久米島、台湾、石垣島、札幌、ハワイ、コタキナバル、南米。2020年はアメリカ中南部、フィンランド、シチリア、シンガポール、アフリカが内定しています。もちろん隙間にチョイチョイ小さな旅行は挟んでいくつもり。
「つなぎ」。心臓と肝臓を繋いでいる部分であり、ハツの食感とレバーの濃密さが同時に楽しめる逸品。ゴリっとした食感にドロっとした味覚が続き、ラストにしてベストな1本でした。
コースには鶏のスープもついてきます。澄んだ味わいで美味しいのですが、「つなぎ」の迫力に圧倒されている面もあり、意外に冒頭で飲んでしまうのも良かったかもしれません。
一通り食べ、そこそこ飲んでひとりあたり8千円強といったところ。私は焼鳥にそれほど詳しくはありませんが、トップランカーに比肩するクオリティであることは間違いなく、立地と予約の取り易さを考えれば実に使い勝手の良いお店でしょう。「鳥かど」みたいなお店も良いけれど、予約を取るのがダルすぎる。やっぱり焼鳥は思い立った日にバっと食べに行けるのが一番です。
関連記事
- 麻布十番グルメまとめ ←ほぼ毎日、麻布十番で外食しています。その経験をオススメ店と共に大公開!
- 麻布十番で300軒食べ歩いた男の麻布十番オススメランチ7選!
- 麻布十番で300軒食べ歩いた男の麻布十番オススメディナー7選!
- サマンサタバサ社員に贈る、東麻布おすすめランチ7選!