井出商店(いでしょうてん)/和歌山駅

ご当地ラーメン「和歌山ラーメン」の火付け役となった井出商店。1953年創業と半世紀以上、和歌山の胃袋を満たし続ける有名店。ちなみに「和歌山ラーメン」と言えば醤油ベースの豚骨醤油ラーメンの『車庫前系』と豚骨ベースの豚骨醤油ラーメンの『井出系』に分かれるのですが、その名の通り当店は『井出系』の総本山にあたります。
店の近くに漂う独特の豚骨臭。和歌山駅から徒歩約10分弱であり、駐車場もたくさんあります。営業時間は11:30~23:30と通し営業であり観光客の強い味方。土日ともなれば行列も生じるそうな。きっかけはTVチャンピオン。「日本一うまいラーメン決定戦」で無名ながらも全国の並み居る強豪店を押さえて優勝し、続いて新横浜ラーメン博物館に出店するなどで一気にスターダムにのしあがったのです。
店内は壁にぐるりと張り巡らされたカウンター席に大きなテーブルがひとつ。20人も入ればギュウギュウでしょう。「水はセルフ」と大きく注意書きがありますが、感じの良いお兄さんがニコニコと持って来てくれました。
「中華そば」を注文。和歌山のラーメン店では「中華そば」略して「中華」と呼ぶのが一般的であり、「ラーメン」とはあまり言わないそうです。麺やチャーシューの量が変化するだけのシンプルなメニュー構成は好感が持てます。
卓上には和歌山ラーメン特有の仕組みである「ゆで玉子」と「早寿し」が配置されています。「早寿し」とは紀州名物の腐り鮨「なれずし」を十分に発酵させていない状態の鯖寿司である「早なれ」のこと。食べた個数(1個100円)を会計時に自己申告します。ちなみに和歌山では早寿しを食べることを前提に麺量が設計されているため、普通盛では量が少な目とのこと。
数分で着丼。スープを味わうと、あれだけ強烈な豚骨臭を放っていたにも関わらず意外にマイルド。トロミも少なく円みのある味わいです。トッピングはチャーシューにメンマ、なると、ネギであり、一般的なラーメン屋のそれでした。
麺は博多よりもやや太めのストレート。デフォルトでは少し柔らかいので、麺硬め原理主義者の方は事前にそう伝えておきましょう。味はまあ、よくある豚骨ラーメン屋の麺の味です。

良くも悪くも普通でした。量の少なさや味のパンチを考慮に入れると700円という価格設定はやや高く感じます。恐らくは「TVチャンピオン」の時代から何も変わっておらず、進化し続ける首都圏のラーメンからは取り残された感が伺えます。もちろん変わらないことも大切な価値のひとつ。あまり神格化せず、「和歌山ラーメンの火付け役となった老舗」程度のつもりでカジュアルに訪れましょう。


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