東京店を統べるのはパリ店でも活躍した大森雄哉シェフ。テーブル席や個室などはあるものの、あくまで主体はカウンター。まるで鮨屋のように料理人の手元を覗き込みながら食事を楽しむことができます。
「いい?マッキーは女の子なの。『未練タラタラで女々しいよね』とかじゃなくって、女の子そのものなんだって」槇原敬之『もう恋なんてしない』の話、続く。この日はバツイチアラフォーのお姉さまに意見を伺います。
とても大きいアミューズ。その正体はヤングコーンであり可食部はヤングコーン1本分なのですが、これだけドーンと来ると客としてはオオゥと感じざるを得ません。イチゴとスナップエンドウを添え、ミモレットをたっぷりとトッピング。蓋を開けてみれば単純な仕様ですが、印象深い1皿でした。
銚子であがったキンメダイ。ひんやりと冷たい状態で、表面だけバーナーで炙り軽く焼き目を付けます。ソースはタプナード。キンメダイはコッテリと食べることが多い主役級の食材ですが、なるほどこういったサッパリとした食べ方も悪くないですね。
パンはとても普通。結論から述べると全体を通してお料理が素晴らしかっただけに、パンの位置づけがどうにも貧弱に感じてしまいました。
「どうしてわかってくれないのかなあ」だから世の男は、と腕組みをして鼻を鳴らす。「対偶?バカじゃないの?字面通り受け取ってよ。あの歌は、同棲相手にフラれて未練タラタラな歌なの。それ以上でも、それ以下でもない。『君の郵便が未だ届いてるから、まだまだワンチャンあるかもしれん』みたいなくだりがあるけど、あれ、違うから。引っ越したばかりで忙しいだけだから」よくもまあパっと歌詞(しかも2番)が頭に浮かぶものだと舌を巻く。彼女が昭和末期に活躍した経歴は伊達ではない。
長崎の穴子。洋食のフライのように揚げたものであり、ありそうでない料理です。タルタルソースをたっぷりとつけてまるで洋食のよう。フレンチ×和食というコンセプトがクローズアップされていますが、何なら日本の国民食のような芸風に感じました。
もちろんあの曲が未練タラタラソングだってことぐらい私にだって理解しています。問題は『もし君に1つだけ強がりを言えるのなら、もう恋なんてしないなんて、言わないよ絶対』の部分。結局、恋するの?しないの?どっちなの?
タルトには帆立とウニ。美味しいのですが、ホタテの味覚が支配的でありウニの風味に乏しい。ウニそのものが目に見えないのが良くないのかなあ。裏方にまわると実は地味な存在なのかもしれません。やはり料理とは目で食べる部分もあるのだ。
清澄な身質な豚肉をしっとりときめ細やかに火をいれます。ソースも控えめにバターソースのみ。肉の香りは良いのですが、やや塩気や旨味に乏しく印象が薄い。やはり私は重厚な調味を好むのだなと得心しました。
「『もう恋なんてしないなんて、言わないよ絶対』は二重否定で、つまり『絶対恋愛する!』って意味ってことはわかるよね?」そこまでは私もクリアに理解しています。
デザートはバナナにキャラメルアイスのそのエスプーマ(?)。上品な甘さとほろ苦さが相まって、大人の気配を感じされる甘味でした。
「でもそれは、『強がり』なわけよ。想像してみて。フラれたばかりのマッキーがオネエ言葉で『また恋人作るもんね!ベーっっだ!』って、舌だして元恋人に強がってるのよ。ただそれだけの歌」おおー、なるほど。あれから色んな人とこの歌詞の意味について意見交換してきましたが、今までで一番しっくりきた解説です。理解。これにてこのテーマは終了。
コーヒーもきちんと美味しい。ごちそうさまでした。
食事だけだと5,400円。これだけのクオリティの料理を揃えてこの値付けはリーズナブル。皿数も多く、しっかりと食べた気分になります。次回は夜にフルパワー、かつ、気合いの入ったペアリングで臨みたいと思います。
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- アピシウス ←東京最高峰のレストラン
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- ル・マンジュ・トゥー(Le Mange-Tout)/神楽坂 ←接客は完璧。料理は美味そのもの。皿出しのテンポも良く、とにかく居心地の良いお店。客層も好き。
- SUGALABO ←料理だけなら一番好きかも
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