ドミニク・ブシェ トーキョー(Dominique Bouchet Tokyo )/銀座

ジョエル・ロブションの右腕として活躍し、三ツ星「トゥール・ダルジャン」のシェフを務めたドミニク・ブシェ。パリ本店以外では唯一自身の名を付けたレストランが当店です。ミシュラン二ツ星(写真は公式ウェブサイトより)。
プティ・サレとして登場するのは小さなコロッケと花束状のムース。コロッケは豚足などを用いており、グラタンのような風味で美味。温かいのもとても良い。
暑い日だったので泡を1本注文。シェフのお友達のワイナリーであり、特別に誂えてもらっているプライベートブランドだそうな。果実味が豊かでボリューム感バッチリ。女の子が好きそうな味覚です。
アミューズは甘えびのカルパッチョ。ネットリと官能的な味わいを爽やかにプレゼンテーションしてくれました。ウニやキャビアの用い方も必要十分であり、昨今の高級食材をドバドバ盛り付ければいいんだろ的な投げやりさは1ミリもありません。
バゲットがすこぶる旨い。外皮のパリっとした食感に内部のジューシーな味わい。これは本物中の本物であり、フランス料理そのものです。「鮨屋の実力はギョクでわかる」という都市伝説がありますが、フランス料理においてはパンがそれにあたるかもしれません。
カブにホタテ貝のムースを詰め、アサリやツブ貝を散らし、オマールのビスクソースを注ぎます。これはどうやったって美味しい組み合わせではありますが、ビスクの味わいと貝の食感が強すぎ、肝心のホタテの風味がどこかへ行ってしまったような気がしないでもない。
バゲット以外のパンも完璧。ロブションのようにゴテゴテした味わいのパンではなく素朴なものが続きますが、それぞれがしみじみ旨い。特に奥のハチミツ風味のものは絶品であった。
スペシャリテの「オマールブルーのパルマンティエブールキャヴィア」。オマールのほぐし身にマッシュポテトを乗せオーブンで焼いたもの。ソースが最高ですねえ。オマールの風味はもちろん、たっぷりの酸味にバターのコク、キャビアの塩気が渾然一体となり、やはりフランス料理とはソースであると頷かざるを得ない味覚です。
スズキのポワレ。先の高級食材オールスターズに比べると実にシンプルな食材ですが、調味はしっかりと強く食べ応え充分。バリっとした焼き目も香ばしく、頼もしい味わいでした。
メインは赤毛和牛フィレ肉のロティ。この肉はべらぼうに美味しかったなあ。和牛でありながらギトギトした脂は一切なく、しっとりと赤身の旨さが伝わってきます。付け合わせのアスパラや豆などの差し込み方も的確。そもそもプレゼンテーションが美しい。フランス料理のフルコースって、メインは惰性でどれも同じに感じることが多いですが、当店のそれは俺がメインだと、しっかりとその地位を主張する味わいでした。
デザートも美しい。イチゴを主体としたフォンダンショコラにミルクのジェラートが添えられており、砂糖的な甘さは控えめで素材の風味が色濃く感じる1皿でした。
小菓子も一切の手抜き無し。他店であればメインのデザートを張れるクオリティです。コーヒー豆は東ティモールのものと珍しい。

このお店は本物ですねえ。非の打ち所がありません。これだけ食べて2人で泡を1本飲み、炭酸水と税サを付けて合計4.6万円。高価ではありますが、納得感のある価格設定です。

料理の素晴らしさはもちろんのこと、サービス陣の対応も日本トップクラス。皿出しのテンポも良く、何一つ不自由しないランチでした。重要な会食や構えた食事に適任。次回は夜に、ワインペアリング付きでお邪魔したいと思います。


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