ボッテガ(BOTTEGA)/広尾

広尾の商店街を抜けた路地裏の地下。店名はイタリア語で「工房」のこと。開店7か月で1ツ星獲得。以来、とにかく予約の取れないイタリアンとしてその地位を主張し始め、実際わたしも席を確保するのにとても苦労しました。
カウンター8席、テーブル4席の小体なお店(写真は公式ウェブサイトより)。笹川尚平シェフはピエモンテ「リストランテ・グイード」を皮切りにカンパーニャ、トスカーナ各地で修業。帰国後は麻布十番「カーザ ヴィニタリア」のシェフを11年務めた後、独立。
よく飲みよく食べる4名でお邪魔したのでワインはボトルで頂きます。泡は9,000円~とイタリアンにしてはかなり高め。値付けそのものは悪くないのですが、そもそもの絶対額が高いものが多い印象です。
お料理は郷土料理を基本としたシンプルなもの。アラカルト注文も可能ですが、今回はコースでお願いしました。
最初の前菜はハムやサラミの盛り合わせ。豚の脂がじっとりと溶け、セクシーな味わいです。
パンは複数種あり、いずれも素朴で料理を邪魔しない味わいでした。
前菜2皿目はブッラータ。モッツァレラに似たチーズにクリームが練りこまれたような食感のフレッシュチーズ。ただしチーズだけでなく、脇に添えらえた完熟トマトや柑橘系の味覚が抜群の組み合わせを演じてくれました。
自然派で華やかな香りを持つこの1本。わざとらしいビオ感はなく、賑やかな味覚のワインでした。
白烏賊のローストと夏野菜の煮込み。これはもう、べらぼうに美味しいですね。イカの旨味を感じさせる独特の香りに黒いダイヤが寄り添います。野菜たちも素材そのものとして心強い味わいであり、本日一番のお皿でした。
白魚とからすみのタリオリーニ。頭の大盛と言うべき白魚の量に嬌声が上がる。パスタはシェフが毎日手打ちしているそうで、アドホックな味わいに納得。カラスミも気前よく振舞われ味覚を全体として統一。
メインは黒毛和牛のローストと夏トリュフ。部位は芯々(シンシン)。内モモよりもさらに内側にある、中央付近の芯の部分。モモ肉とは考えれないほど柔らかく、一方で、赤身としての屈強な味覚も堅持。マルサラをベースとしたソースも大人の味わい。
赤ワインも肉にピッタリの味わい。果実味が豊かで、太陽のパワーを元気いっぱいに感じる1本でした。
デザートは2種から選択することができ、私は九州のマスカルポーネチーズをシンプルに頂きます。これが、絶品。今まで食べたどのマスカルポーネよりも美味しい気がしました。畢竟、フレッシュチーズとは鮮度が全てである。ゲンコツほどの大サイズも嬉しい。
連れはパンナコッタに黒系ベリー。乳の風味が濃密であり、これはこれでありよりのありでした。
食後の飲み物としてコーヒーなどは当然のこと、グラッパやリモンチェッロも選択できるのが美味しいですね。マスカルポーネの風味を口に残したままリモンチェッロを含み新たな味覚を創出する。なんとも社交的なフィニッシュでした。
お会計はひとりあたり2万円弱。うーん、ちょっと高いなあ。料理1万円は納得感があるとして、やはりワインの絶対額がイタリアンにしては高く感じました。そういう意味で、あまりお酒を飲まない女子などにとっては最高のお店なのかもしれません。

料理は「カーザ ヴィニタリア」のきれいめ系から野太い男性的なものに移行したという印象。食後はシェフが挨拶に来てくださり、料理に対して実に真面目な印象を受けました。次回はアラカルトでお邪魔して、スペシャリテの「トリッパ、ギアラ、小腸の煮込み」を食べてみようっと。


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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
十年近く愛読している本です。ホームパーティがあれば常にこの本に立ち返る。前菜からドルチェまで最大公約数的な技術が網羅されており、これをなぞれば体面は保てます。

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