羊香味坊(ヤンシャンアジボウ)/御徒町

味坊グループの羊肉専門店。先日、三軒茶屋の「香辣里(シャンラーリー)」において、やはり味坊グループは面白いとの結論に達し、土曜日の昼から飲むことに。平日は1,000円前後のランチメニューがありますが、土日は13時オープンのグランドメニューのみです。
サッポロ黒ラベルは500円。キンキンに冷えたグラスと共にグっといきます。ちなみに味坊名物の冷蔵庫ワイン(冷蔵庫から勝手にボトルを取って飲む)は健在ですが、当店の料理はスパイスをきかせたピリピリ系の料理が多いため、あまりワインは合わないような気がします。

ところで他の客がうるさい。アラフォーの女グループが2組おり、競い合うようにして騒いでいます。土曜の昼から仲良しが集まって酒を飲むことについては何も言いませんが、もうちょっと上品に楽しめないのかね。店員に(全員が中国人)ちょっと注意して下さいと依頼するのですが、私の日本語は理解してもらえないもののニュアンスは伝わったようで、「わかりますよ、あなたの言いたいことは」という素敵な笑顔を引き出すことができました。のっけから店員と心が通じ合い、楽しい食事となりそうです。
連れに「僕の知り合いにあんな下品な女性はひとりもいないんだけど」と感想を述べると「うーん、それはあなたが男だからじゃないかな?女は男の前ではしおらしくするものよ。女同士で集まると、途端に下品でケチになる」なるほど、と膝を打ったころ、我々の隣のテーブルにご新規さん2名が参戦。「ちょっっ、あのテーブル、何であんな騒がしいの?」「普段、話を聞いてもらえる人がいないんじゃない?」と彼女たちも戸惑いを隠さない。

ちなみに隣客はアラサーの女子ふたり(以下A子B子)なのですが、団体客の嬌声に負けじと大声で会話しているので、盗み聞きするつもりは無かったのですが会話が自然と耳に入ってきます。
「よだれラム」。よだれ鶏の羊肉バージョンです。想像通りの美味しさでありラム好きにはたまりません。加えてタレの暴力的な味わいに心を奪われる。中毒性がありタレだけ残っても、この皿は下げないでくれ、と身振り手振りで店員に伝えました。

A子とB子は古くからの友人らしく、A子の外観は辞書の挿絵にしたいほどの陰キャであり、文脈からして数年間はカレシがおらずインセル生活を強いられているようです。他方、B子には最近恋人ができたようで、今回はその近況報告を兼ねての食事の模様。
「ラム肉とパクチーの水餃子」。これはまあ、料理名の通りの味わいです。よだれラムに比べるとダイレクトにラムの風味が届くので、苦手な人はアレかもしれません。というか、ラムが苦手な人はこの店に来てはなりません。

 「あたしの大切なB子を酷い目に遭わせたら、絶対に許さないから」と、ニワトリのように熱り立つA子。いやまずそこはおめでとうから入ろうよ。何で酷い目に遭う前提でストーリーを展開するのか。
「ラム串5本セット」。左からショルダー、ショルダー&キノコ、レバー、ランプ&長芋、ネック。いずれもまあ、ラム肉です。羊は全般的にクセが強いので、鶏肉ほど風味の違いを食べ分けることが難しい気がしました。

「だってあたしはB子を含めて、友達みんなのことを尊敬しているから。尊敬している人に酷いことするだなんて、絶対に許さない」女の『尊敬している』ほどアテにならないものはなく、男子目線に翻訳すると『ここ数ヶ月はまあまあ仲が良い』程度の感情であることを私は良く知っています。
「ラムスペアリブ」のフルサイズです。羊の脂と身の双方をバランス良く食べることのできる料理であり、最も羊らしさを感じたお皿です。ただし脂が強く味わいは単調でもあるので、2人であればハーフサイズで充分でしょう。

「だって、結婚が幸せだとは限らないじゃない?」着地点の見えない論理展開に当惑するB子。「寿退社して専業主婦になっちゃうと、自分の生活ができなくなっちゃう。旦那と子供のためだけに毎日を送るだなんて考えられない。でも、結局のところ、あたしたちの人生ってその程度なのかな」ちょっと待てお前ダンナどころかカレシもおらんやろ。
「ラム肉とパクチーの炒飯」。羊のコク、脂の甘味、パクチーの爽快感が渾然一体となって迫りくる。これまで幾度となく繰り返されてきた食材の取り合わせですが、この食べ方が最もしっくりきました。やはり米は偉大である。

「あたしの人生はこんなものじゃないはずなの。あたしは何のためにここにいて、何のために生きているのかって時々考えちゃう」少しポエムが入ってきました。A子の表情を盗み見すると、その頬には一筋の涙が流れていた。
先の炒飯に魅力を感じたので糖質制限とか言っている場合じゃないです。「白身魚とラム肉の出汁で食べる麺」という料理を追加注文。

こういった発言をウンウンそうだよねと話を合わせるB子はさすがの女子である。この手の会話に男が加わると、すぐに問題点の分析ならびに課題の解決へ向かおうとするため、話が全く噛み合わなくなるものです。
麺は見慣れないテイストで面白くはあるのですが、スープがイマイチですね。料理名こそ面白そうですが、コショウの味が酷く強く、まるでコショーソバを食べているようであり、魚や羊の風味は期待していたほどではありません。

A子よ、四の五の言わずに今日からでもその日のバラを摘みなさい。不幸であること、それは自分が不幸であると思うことなのだから。
結構食べて軽く食べてお会計はひとり5,000円弱。まあ、こんなもんでしょうか。騒がしい客がいなければもう少し印象は違ったでしょうが、ああいったレベルのゲストをお店側が受け入れているので、騒いだもん勝ちのレストランです。大人数でどうぞ。


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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
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