シェフはChristian Le Squer(クリスチャン・ル・スケール)。前職の「Le doyen(ルドワイアン)」においても3ツ星を受賞し、三顧の礼をもって迎えられた当館においても3ツ星を獲得。現代フランス料理界の頂点と評して良いシェフでしょう。
席数は50〜60ほど。我々を含めて殆どが外国人でありスタッフも巧みに英語を操ります。そこで私は唐突にカタコトのへっぽこフランス語を話すわけですが、これがもうウケることウケること。我々に接するサービス全員をポップな気分にさせました。
シャンパーニュのグラスは5〜6種の用意があり、見たことのないパイヤールのロゼを注文。サクランボのような香りに爽やかな口当たりが食前酒として最適。しかしながらお会計の明細で1杯39ユーロがついていたので軽く鼻血が出ました。
アミューズから美しいですね。人参風味の生地には爽快感あふれる酸味が詰まっています。塩系オカズ系のギモーブも試みとして面白く、奥のピッツァ的なポリポリも酒が進むスナック。ちなみに土台の派手な赤い部分とサツマイモっぽい箇所は飾りであり食べることができません。
塩系ケーキの上に乗ったキャビアにイクラ(?)。シャンパーニュで乾杯するに最適な味覚です。ちなみにコチラも土台の部分は食べることができませんのでご注意を。
アミューズ、続く。グレープフルーツのソースにグリーンピース。なんてことでしょう、茹でただけのグリーンピースが信じられないぐらい美味しいのです。給食の嫌われ者であるそれとはまるで別物。こんなフレッシュなグリーンピースには出会ったことがありません。
泡が覆いかぶさっていますが、中にはカニやロブスターなどの甲殻類のほぐし身と味噌などが詰まっています。これらの旨味には神秘的な深みがありますね。一本取られたと、思わず唸ってしまう美味しさでした。
パンは3種。さすがはフランスの3ツ星、どのパンにも外さない旨さがあります。個人的にはプレーンなバゲットがお気に入り。写真奥の有塩バターをたっぷり塗って食べれば、それだけで立派な食事となり得るクオリティの高さでした。
今が旬のホワイト・アスパラガス。謎に火入れが均一であり、どこから食べても絶妙に繊維と甘味を感じる仕様でした。タイムやレモンの風味も実に爽やか。それほど高級とは言えない素材でここまでの味覚を完成させるとは、やはり料理とは値段ではないのだ。
メインは鳩を選択。シンプルにグリルしただけの料理ですが、これがもうべらぼうに美味しかったです。酸味を感じるオリーブなどの付け合せも見事なのですが、何よりもまず、鳩が旨い。コンテンポラリーで絵のような盛り付けの料理ながら、ここまで直線的にマッチョな味わいは珍しい。
ワインリストは百科事典のようであり(ワインセラーには5万本以上のボトル!)、客の財布を萎縮させるに充分な厚さなのですが、覚悟していたよりも値付けは悪くありません。絶対額も50ユーロ〜とこの手のレストランとしては破格であり、ホテルの懐の深さを垣間見た瞬間でした。
口直しは何だっけ?酸味のきいた滑らかな味わいだったとは記憶していますが、特殊な味覚ではありませんでした。まあ、口直しとはそういうものであり、それにこれだけの意匠を施すことに矜持を感じます。
メインのデザートの前に小菓子たち。外観からして実に細かい仕事ぶりであり、ひとつひとつの味覚もしっかりしており、一体このレストランには何人のパティシエがいるのでしょうか。個人的にはキャラメルのきいたナッツな一口がお気に入り。
私が選んだデザートはチーズケーキ。銀箔が乗ってるよ。こんなハイカラなチーズケーキは初めてです。チーズケーキとしての味はさておき、中と脇に置かれたバジル風味のソースが秀逸。れっきとしたスイーツであるはずなのに、どことなくオカズ的なニュアンスを含む興味深い一皿でした。
連れのデザートはイチゴ。ホワイトチョコレートで味を整えアクセントにリコリスを用いているとのこと。
メインのデザートの後にはシェフの故郷ブルターニュ地方の名産品、クイニーアマンが供されます。これが静かなるドンというか何というか、ジワジワと心に響く朴訥な味わいでした。
〆にコンフィズリー(砂糖菓子の総称)のカートがやってきます。お好きなものをお好きなだけ。
チョコ好きの私は狙ってチョコばかりをチョイス。いずれもショコラトリーで1粒400円で売り出しても問題のないレベルです。写真左上の箱はお土産用。チョコばっかりを食べている私を見かねてか、塩キャラメル(ブルターニュの名物)を箱に詰めて持たせてくれました。
これが3ツ星だと言わんばかりの完璧なレストランでした。店の風格良し、スタッフの対応良し、料理良し。文句の付け所がどこにもありません。加えて値段が結構安い。これだけ食べて、泡を1杯赤を2人で1本飲んで、ひとりあたりの支払金額は2.5万円ほどです。これを有意義と言わずに何というのでしょう。きちんと前もって連絡すれば予約が取りづらいわけでもないので、パリへの旅行を決めた際には是非どうぞ。
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