アラン・サンドランスより譲り受けたレストランを「L'Arpege(ラルページュ)」として改変。アンヴァリッド地区ロダン美術館のすぐ近くにあります。ミシュラン3ツ星。
メインダイニングは地上階なのですが、外国人客は全員が地下のカーブのような空間へのご案内。恐らく英語に達者なスタッフを集中的にアサインするためでしょう。韓国2テーブル、日本2テーブル、アメリカ1テーブルと不思議な連合軍の完成です。
ワインは絶対額も値付けも高い。最も安いシャンパーニュでも150ユーロ〜と強気の価格設定です。選んだ1本はコチラ。黒ブドウ主体でボリューム感があり、気泡が滑らかなのが印象的。
アミューズは野菜のタルト。ビーツとセロリと何だっけ?軽い味わいで食事をスロースタートさせてくれます。
食事は昼夜同じメニューであり、9皿420ユーロと非常に高額。アラカルトでも前菜は100ユーロ、メインは200ユーロ前後とかなりの高級店です。野菜のみのフルコースがあるのはシェフの矜持といったところでしょうか。
アミューズにしてスペシャリテの卵が登場。ほんのりと温かい卵にシェリービネガーで酸味を与え、メープルシロップで優しい甘味を付与。シンプルですが実に旨い。大した素材を使わずともしっかりと美味しい。これが、料理だ。
パン・ド・カンパーニュに有塩バター。正攻法の味わいで美味しいのですが、1種のみというのは少し寂しい。もう少しバラエティ豊かに楽しみたかったです。
ところで、先の卵を食べ終わってから皿出しがストップしてしまい、30分近く間隔が空いてしまいました。これが高い費用対効果を誇るてんてこまいなビストロであれば許容できるのですが、多くのスタッフを抱えた超高級3ツ星店としてはアウト。
待ちに待った前菜。スペシャリテの野菜のラヴィオリです。が、これは全然美味しくないですね。土臭さの残るハーブティーのような液体に、旨味に乏しい餃子がチラホラ浮かんでいるだけです。「えびすの安兵衛」の水餃子のほうが10倍美味しい。これで1皿1万円というのは高杉晋作です。
テンポは悪いしメシは不味いしバカ高いしでブチ切れそうになっていたところ、「サプライズです」と、注文していない料理が供されました。おお、これもスペシャリテのビーツのタルタルではないか。他のテーブルのアラカルト客には提供されていなかったので、恐らく注文量(≒支払金額)に拠って「サプライズ」の大小が変化するのでしょう。
なるほど野菜料理に心酔するだけあって高クオリティ。素材の濃い味に上品な味付け、卵を加えた味覚の変遷など、ビーツの料理としては最高峰の味わいに心がほぐれる。ゲンキンな漢である。
スタッフたちがニヤニヤと嬉しそうに盛りつけ前の料理をプレゼンテーション。見て下さいこの量を。奥のオマールが連れのメイン、手前の鳩&仔羊が私のメインです。規格外のボリューム感に周囲のテーブルの視線が集中します。
「シェフのニュー・クリエイションです!」と、アラカルトメニューの説明の際、スタッフが半分笑っていたので毒を食らわば皿までと注文。ラムと鳩を一体化させて調理させた(写真の骨付きがラム、濃い赤が鳩)料理。調味は悪くないのですが、ラムと鳩の火入れの頂点は異なるはずであり、どうにもどっち付かずな調理という印象。死ぬほど別々に食べたい。まあこれは、シェフの悪ノリに付き合った客にも責任があります。
連れのオマールが激しい。先のプレゼンテーションは見せる用かと思いきや、本当にそのまま1匹を持ってきました。成人男性の前腕ほどのサイズ感。一口どころか3分の1ほど頂きましたが、味もきちんと良いのが凄いですね。肉のような食感にエビの乳の風味を聞かせたソース。付け合せのキノコや豆。どれをとっても一級品です。二郎系の盛り付けではあるが素晴らしく美味しい。日本で出すには勇気の要る料理でしょう。これで1皿210ユーロというのは割安かもしれません。
オマールで腹がパンパンに膨れたので(何という幸せ!)デザートはパス。小菓子を幾つか頂いてフィニッシュです。
お会計はひとりあたり4.5万円。割安なランチメニューを設けていないことを考慮に入れ、特大のオマールまで食べたことを考えると、そう悪くはない価格設定のような気がしました。空間づくりは至って普通のレストランであり、料理についても野菜に傾倒など若干不思議ちゃんの気があるため好みが別れるかもしれません。食事の機会が限られる旅行者としてはセカンドグループとしての位置づけでどうぞ。
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