この日に東京からやってきた女の子とモンパルナス駅で合流し、そこからちょうどアクセスの良い有名店にお邪魔することに。
交通の要衝モンパルナス駅近くのモンパルナス通りはクレープ激戦区。その中でもとりわけ人気が高いのがここ「La Crêperie de Josselin(ラ クレプリ ド ジョスラン)」。
ピークタイムには待ち行列が生じるとの情報だったので、開店と同時に訪れました。マダムを筆頭に店員の感じが非常に良くテキパキと動きも良い。メニューには英語・日本語も記載されており、観光客の受け入れにも積極的です。
「全く酷いフライトだったわ」彼女は世の中を威嚇するように言う。「乗ってる間、ずっと子供がギャアギャア騒いでいるわけ。可愛げなんてまるでなくて、救いがたく退屈で凡庸な2級品」
スペシャリテであり店名を冠した「Josselin(ジョスラン)」。そば粉はガレットの本場ブルターニュから取り寄せているそうな。具材は卵・ハム・チーズ・キノコという王道中の王道な組み合わせ。ハムの塩気が強くチーズのコクにも勢いがあるため、かなりの食べごたえが感じられます。
「ああいう風に落ち着きのない子供って、母親が狭量で独善的だから子供もそう育つのかなって思ってたけど、それ以前に旦那がポンコツなだけかもしれない。夫が全く使い物にならなくて、それを見て妻は勝手にカリカリしてる」彼女の声は大きい。周りの子連れ日本人観光客にこの会話を聞かれはしないかと、関根りさのパッキング動画ぐらいヒヤヒヤします。
コチラは「Finistère(フィニステール)」。具材は卵・ベーコン・ナスのピュレ。ナスの風味は興味深いですがチーズが入っていないため、先のクレープに比べるとパンチに欠ける。ちなみに料理名はブルターニュの県名であり、塩やキャラメル、クレープの中心地です。
ゴールデンウィークに海外旅行に連れて行ってくれるだけ大したお父さんじゃないか。私は会ったこともない父親を同性のよしみでフォローする。
甘い系のクレープも用意されています。コチラは「Chaud-Froid(ショー・フロワ)」。温・冷という意味であり、まずはコアントロー(オレンジ風味のリキュール)でフランベ。まさに目の前で火がついているので臨場感抜群。クレープの中には自家製のヴァニラ・アイス。これが絶品。ヴァニラの香りが濃密であり、ハーゲン・ダッツのヴァニラ味を3倍に濃縮したような風格。
そもそも、こういう事態に陥った根本原因は何だろうね。私は愚痴から問題解決の方向へと舵を切る。うーん、と、大きく眉をしかめてから彼女は言う。「世間体だけを気にして、大した目的もないまま子供を作ったことじゃないかなあ。さらに言うと、適齢期だからとかそういう理由で、好きでもない交換可能な男と現実的な結婚をしたからかもしれない」
もっと言えば、そのような価値観を植え付けた両親にも責任は大いにあるのでしょう。その両親にはまた両親の教育があって、この種の価値観の引き継ぎ行為は現代の呪いに他ならない。江戸時代じゃないんだから、親の小言や世間体なんて自分の人生に関係ないのにな。
クレープはいずれも1枚が10ユーロ前後であり気軽な価格設定。クレジットカードも利用可能。死ぬほど美味しい料理というよりは生活に寄り添う味覚であり、気を張らず気軽に訪れるべきお店です。正午にもなれば地元客と観光客が入り混じり満席に。少し時間をズラして訪れましょう。
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