チェックインにつき、ファーストクラスだからといって特別扱いということはありません。対応は至って標準的なものであり、スタバの店員のほうがよっぽど愛想が良いです。
チェックイン後すぐに悪名高い保安検査場を通過。成田もしくは世界の大都市の空港であればファーストクラス客とビジネスクラス客の動線は分けられていることが多いのですが、羽田は同じ。もちろんVIPについては秘密の入り口を利用するのでなかなか議論にはなりづらいですが、こればっかりは航空会社ではなく空港の仕様なので、解決への道は遠いでしょう。
入管を抜けた後、そのままファーストクラスラウンジへ。詳細は別記事にて。
いよいよ搭乗。機体にもよるでしょうが、基本的にファーストクラスは他の乗客と乗り口が異なります。ビジネスクラスの場合、後から乗り込んでくるエコノミー客から無遠慮な視線を投げかけられる場合がありますが、ファーストクラスの場合は動線が丸っきり異なるので、その他の搭乗客と接することはまずありません。
今回の機体にはファーストクラス席は8つあって、実際に利用しているのは5人でした。エコノミーであれば50人ぐらいは乗れそうな空間を5人で贅沢に使うことを考えれば、片道150万円という価格設定もある意味では妥当に感じます。
私にあてがわれたシート。漫画喫茶の広めの個室程度の面積でしょうか。ひとりあたり3つの窓を占有することになります。
設備を操るためのボタンが山のようにあり、それらを全て理解するまでに1時間近く要しました。そう、私は電化製品を買えば説明書を1ページ目から熟読するタイプなのです。
離陸までの間はCAが入れ替わり立ち替わり挨拶に来てくれるので、選挙活動でもしているかのような気分になります。妙齢の方が多く、そのまま蓮舫と入れ替わっても問題なさそうな、知的でエレガントな方ばかりです。CAというよりかは取引先の社長の秘書と接しているような感覚。基本的には慇懃無礼なので、ワンチャンあるかという気分には一切なりません。
食事の監修は日本におけるトップクラスの料理人たち。洋食か和食を選択でき、フランス料理愛好家の私としては当然に洋食を所望したのですが、「本日は洋食が大変人気で、、、」と困り顔のチーフ・パーサー。ほほう、ファーストクラスだからって何でもかんでも融通がきくわけじゃないんですね。結局は他の親切なゲストが「和食でもいいよ」と言ってくれたっぽく、無事、私は洋食にありつけることができました。
アペタイザーとして海老にスモークサーモン、フォアグラ。美味しいですが、いわゆる陸の上のパーティにおけるフィンガーフードレベルです。
こちらは野菜(?)との土佐酢ジュレ和え。結構美味しい。土佐酢のジュレの味覚がはっきりしており、やはり味付けの濃い料理は分かりやすくていいですね。
続くシャンパーニュはクリスタル。私の最も好きなメゾンのひとつであり、その中でも最高峰に位置づけられる銘柄です。柑橘系の香りにトーストのようなニュアンスが含まれ、香りがとても良い。全体を通してバランスもよく、ややもすると先のサロンよりも美味しく感じました。
前菜はキャビアにミモザのペーストに最中。まずはキャビアをちょこんとつまみ、おシャンパーニュをゴクり。至福のひととき。最中に色々挟んでしまうと味が決まらなくなってしまうので、今回はキャビアだけ単独で頂きました。
メインディッシュにはお魚を注文。超高級魚であるキンキをこのポーションで食べることは中々ありません。春キャベツの甘味やトマトの出汁など、調味についてもセンスが良い。これは陸の上のレストランでさえも中々出会うことのできない、相当にレベルの高いお料理でした。
パンはいくつかの種類から選ぶことができ、そら豆を注文。これが、うまい。生地の食感ならびに小麦の香りが良く、加えてそら豆のホックリとした歯ざわりもたまらない。キンキに続いて陸の上でも充分に勝負できるパンでした。
続いてコント。テタンジェが誇る上級銘柄であり、キレイな果実味に仄かに香る熟した果物の香り。グレープフルーツ調の味覚が支配的であり、実にフレッシュ。先の2本に比べると格としては見劣りしますが、味わいという意味では充分に比肩する美味しさです。
もう少しつまもうと、アラカルトでおつまみセットを注文。左端の牛サーロイン串がいいですね。上質な牛なのか、歯を入れた瞬間にジューシーなエキスが流れ出てき、噛みしめるごとに味わいが広がる。山椒の香りも食欲をそそる。
サーロインに敬意を払って赤ワインを。ヨーロッパ路線だとクスダのピノを置いているらしいのですが、今回はアメリカ路線であるため、園のピノを。日本人夫妻がカリフォルニアで造り出すワインであり、アメリカらしくボリューム感のある味わい。おそらくアルコール度数も相当高いでしょう。先の肉に負けない力強さを感じました。
〆に神楽坂「石かわ」監修の「天然蒸し鯛の胡麻茶漬け」を頂きました。鯛そのものならびに出汁は悪くないのですが、ゴハンがちょっとイマイチですね。まあ、機内食とはそういうものである。
デザートはたっぷりのイチゴ。若干アメリカ人的なセンスの盛り付けですが、イチゴそのもの品質は非常に良かったです。
プチフールとして神谷町「SUGALABO」が関与している大納言フィナンシェを。これはフィナンシェとしては相当レベルが高い。バターたっぷりの生地に豆のホックリとした食感が堪らない。これは是非、陸の上で焼き立てを食べてみたいところです。
食後のお茶にはロイヤルブルーティーのクイーン・オブ・ブルー。1本5,000円もする最高級の水出し紅茶であり、日本が誇る最高峰のストレートティーです。これは酔いが覚める美味しさ。こんなにピュアな紅茶を飲むのは初めてかもしれません。本日最も記憶に残った液体でした。
ショコラはJPH。陸の上では見たこともないサイズですが、味覚はJPHそのもの。JPH芸人としてこのような特殊な作品に出会えるのは嬉しい限り。
食後はトイレでパジャマにお着替え。ファーストクラスであっても、お着替えステップがあることを除けば普通のトイレです。ただし乗客8人に対してトイレは2つと潤沢な空間づかいではある。
パジャマはユニクロの上下1,000円のスエットより質は悪いため、持って帰って何度も着るには難しいでしょう。私はNYでの4泊で着倒し、そのまま捨てて帰ることに決めました。
アメニティはエトロとのコラボなのですが、中身は大したものは入っていません。ポーチがえらい女子やなあと眺めていると、男性向けのアメニティキット(左上の資生堂)を持って来てくれました。
着替えた後は完全にリラックスモード。映画を見たり本を見たりパソコンしたりケータイをいじったり。このあたり自宅でゴロゴロするのと何ら変わりはありません。インターネットはさすがに遅い。ファーストクラス客はネットの利用料は無料ではあるものの、回線はビジネスやエコノミーとの共用であるため、SNSの閲覧すら厳しいレベルでした。
お手洗いに行く際に「そろそろ寝ます」とCAに告げておくと、寝具の用意をしてくれます。私は中肉中背で寝相も良いので、熟睡に充分足る広さです。
5〜6時間は寝たでしょうか、すでに機体は北米大陸に差し掛かっています。まずは朝シャンと、クリスタルを所望したのですが、クリスタルは売り切れでサロンはまだあるという不思議な誤算。加えて先に飲んだ時よりも適度に炭酸が抜けており、果実味をダイレクトに楽しむことができた気がします。
酒のお供にJPHをお願いしたのですが、あれはひとりひとつまでとのこと。少し恥ずかしい。代わりにゴマのシュークリームと、トリュフ風味のショコラを持ってきてくれました。
灯りがついて窓が開かれると朝食タイム。和洋の定食などもあったのですが、私はアラカルトで巣鴨「japanese soba noodles 蔦」とのコラボ作品を。気圧の関係で仕方ないかもしれませんが、麺の茹で加減がイマイチですね。加えてスープもぬるい気がします。
まだまだいけると判断し、熊本ミシュラン1ツ星「洋食の店 橋本」が監修したチキンカレーを。このカレーは相当に美味しい。陸の上であってもここまでのレベルの欧風カレーは中々巡り合うことができません。ライスも先のお茶漬けに比べると全然美味しく感じました。
そうこうしている間にJFK着。12時間という飛行時間を感じさせない居心地の良さ。あと10時間は乗れそうな気がします。しかしながら、エコノミークラスとビジネスクラスの快適度合いは段違いに異なるものの、ビジネスクラスとファーストクラスの快適さはそう変わらないなと感じました。スペースの広さや食材・酒の価格が倍になったからと言って、幸福度が倍になるわけではない。それではなぜファーストクラスというバカ高い座席が存在し続けるのか。それはズバリ「プライバシーの確保」に他ならないでしょう。
他クラスの搭乗客とは動線が完璧に分けられていることは既に述べましたが、ファーストクラス内であっても漫画喫茶の個室状態であるため、他のゲストについて存在は認知しつつも顔を合わせることはまずありません。人に見られたくない・人には言えない関係での旅行には最適な移動手段でしょう。
ではなぜ今回はファーストに乗ることができたのか。そのカラクリについてはまたいずれ。マイルとかじゃないよ。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。