フニクラ(funicula)/代々木上原

徒歩0分の「メゾン サンカントサンク(MAISON CINQUANTE CINQ)」に秒で見切りをつけた彼女に連れられてやって来ました。駅北口出てすぐの好立地であり、外壁や木の雰囲気が妙に上原っぽく感じます。
古民家を改装したワインバル。テーブル席はどことなく和の空気が漂い、カウンター席はまさにかぶりつきのシェフズキッチン。目の前でパスタが躍る様を眺めているも料理のうち。1人客の受け入れも盛んなようで、常連らしきシングルが目礼で出入りする様に憧れる。
仕切り直しで生ビール。つやつやとした外観にクリーミーな舌触り。サーバーがきちんとメンテナンスされており酒に対する愛情を感じました。たしか600円かそこらの値段であり、グラスワインも1,000円を切ってくる良心的な価格設定です。

「ここ何日かで、昔関係のあった男たちから立て続けに連絡が来るんだけど」元カレが結託して壮大なドッキリでも企んでいるのかしら、警戒の色を滲ませながら彼女は言う。
自家製ピクルスは600円。このボリューム感600円という価格設定は非常に良心的ですね。私は自宅冷蔵庫に自家製のピクルスを常備しているのですが、自分で作る手間暇などを考えれば、この皿の価値がしみじみと伝わります。

「あ~、いるよねそういう男。数か月~数年ぶりに『元気?いま何してんの?』とか前触れなくLINE寄越してくる連中」と、もうひとりの連れ。「つまり『ヒマすぎてたまたま思い出したから久しぶりにセックスしない?』って意味だよね?だから全部シカトしてる」それは考え過ぎだろう、私は全人類のオスを代表して反論する。
旬野菜のカポナータは600円。味の濃い野菜がギュっと詰まり、トマトのマイルドな酸味が全体を優しく包みます。うーん、リーズナブルだなあ。それでいて客層が安定しているのがこのお店の魅力ですね。その原因は3.28と食べログの点数が振るっていないからではなかろうか。点数を高いものから順番に巡っていく情弱を寄せ付けないのだ。

男はそんなにセックスのことばかり考えているわけじゃないよ。一部にそういう連中がいることは否定できないけれど、30歳を過ぎた男性の大半は「できるに越したことはないが、色々と面倒なことも多く手に余る」程度にしか捉えていないけどね(タケマシュラン調べ)。
じゃがいものニョッキ トマトソース。出来合いのニョッキとは異なり、ジャガイモのザラつきまでが感じられる滋味あふれた逸品。やはりトマトの酸味が伸びやかで円みがある。

そりゃあ女の子にとって性行為はリスクが大きいことは承知しているけれど、それは男にとってもホットポテトであって、いつ爆発するかわからない手榴弾を抱えるのと同義だから。
桜エビと春キャベツのパスタ。200グラム以上はありそうな特大サイズ。我々は二次会でお邪魔しており〆の炭水化物で訪れたのですが、ちょっと注文する量の目測を誤ったかもしれません。それほどボリューム感の溢れる1皿でした。

全く話は逸れますが、フランスにおける避妊はピルが主流だそうです。フランス人女性の大半はピルを飲んでおり(もちろん保険適用)、その根拠は「自分の人生は自分でコントロールする」だそうな。まあ、パートナーに任せて望まない妊娠をしてしまっても後のカーニバルなので一理ある。
パスタ、続く。ワタリガニのトマトクリーム スパゲッティ。先のパスタに比べると麺量は少な目ではありますが、見た目の迫力と海の旨味で良い酒のツマミになりました。今回は満腹で注文できませんでしたが、炭火で焼く有機野菜や天然酵母で生地から作ったピッツァなども実に美味しそう。次回は1次会からお邪魔したいと思いました。

「でもさ、一度ヤっちゃうと、もうダメだよね。興味が失せちゃうっていうか。相手のことを好きでヤリたくてヤったってことは事実なんだけれど、ただの良い思い出になっちゃう。続く先は何もない」続く先は何もない、か。彼女の冷たい美しさに触れた気がして、私は居住まいを正した。


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