御料理 辻/麻布十番

オープンしてすぐにミシュラン1ツ星を獲得して話題となった店。店主は表参道の「太月」で腕を磨き2017年夏に東麻布の地で独立。カウンター6席に個室2つの小さなお店です。住所としては地下なのですが、上手くお庭が見える仕様となっており解放感があります。ちなみに上の階は新橋から移転してきた北欧系「スブリム」
お酒は生ビールが800円に日本酒が1合1,200円~と、まあ、こんなものでしょうか。他方、ワインが思いのほかリーズナブルであり、シャンパーニュのボトルは8,000円から。モノによっては酒屋で買うのと殆ど変わらない価格設定のものもありました。
名刺代わりに差し出されるのは白子とコウダケの春巻き。これが一本取られる旨さであり、まさにコウダケと称して良い香りの良さです。白子の風味は少しもクドくなく、生地の部分もパリっとしており実に軽い。
お椀はスッポンの玉子豆腐に九条ネギと下仁田ネギ。上品な出汁に逞しいスッポンの肉。噛めば噛むほどに旨味が出てきます。これがネギかというほど食べ甲斐のある太い下仁田ネギに、香りの良さは九条ネギで役割分担。ううむ、何てセンスの良いお椀なんだ。中国帰りの連れは「この料理は中国にはちょっと無い」と唸っていました。
刺身は九絵と炙ったサワラ。旨味の強い塩で一口、お次は清澄な醤油で一口。いずれも淡白ながら存在感のある味覚であり、心あらわれる味わいです。
焼き物は黒ムツ。筋肉質で弾力のある身質であり、ちょっと濃いめの調味もグッド。焼き目と脂身のバランス感もすごく良い。付け合わせにはジャガイモの子分のようなものであり(何て言う食材でしたっけ?)、素揚げでホクホクと美味しい。
盛り合わせ。失礼ながら、麻布の地で8,000円のコースでここまで凝った食べ応えのあるコースに出会えるとは思っていませんでした。12時から時計回りで黒豆、鶏団子、そら豆、ワカサギ、味噌、タコの柔らか煮、貝とヌタ、中央は氷魚(ひうお)と言って鮎の稚魚。よくもまあこんなにも品数を作れるもんだとマジリスペクト。
炊き合わせはブリ大根。完全無欠のブリ大根。ブリの旨さは当然として、大根の美味しさに度肝を抜かれました。
お食事は今が旬の子持ちヤリイカとフキノトウを京都美山のコシヒカリで炊き込みます。
イカの旨味がわざとらしくなく上品。イカの苦味とフキノトウの苦味が溶け合い大人の味わい。おそらく2合近くありましたが2人で完食。
お菓子は大納言の葛焼きにうぐいす餡と死ぬほど手間がかかっています。葛焼きのもっちりとした食感にうぐいす餡のグリーンな爽快感が心地よい。

料理は8,000円、お酒を2合飲んでひとりあたり1万円と少しに着地しガッツポーズ。良い店ですねえ。バカみたいに高級食材を使わなくたって素晴らしい日本料理は構成できるのだという好例。高級食材ばっかり使ういばりくさった食事よりも、やはり旬やテロワールを最大限に活かした料理が私は好き。金で買えるものばかり買っているようでは二流である。

オススメです。今度は夜にお邪魔します。


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麻布十番には日本料理店も結構多いのですが、割高であることが多いです。外すと懐が大ダメージを受けるので、信頼のおける口コミと、味覚が似た友人の感想に頼って訪れましょう。
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