田熊一衛シェフはLes enfants gatesを経てフランスのドミニクブシェに勤務。その後もフランスの有名店のシェフを歴任し2017年に帰国したというバリバリの経歴です。
恐らくは十数坪しかない小さな店内(写真は食べログ公式写真より)。カウンター数席にテーブル席が少しと、下手をすればそのへんのラーメン屋よりも小さいかもしれません。その中に料理人が4~5人にサービスが2人、加えて満員御礼のゲストと、まさにすし詰め状態の店内。コンセプトは面白いのですが、ちょっと落ち着きがない。
アミューズが魅力的。プチトマトの中から特製のプチトマトを2つピックアップします。名赤の中にはバジル、黄色の中にはパッションフルーツ。果実味豊かでテンアゲ。食べれない石ころの中から食べれる石ころを探すよりも夢があって安全。
サーモンのリエットを葉を模ったクッキー(?)で挟みます。パリっとした食感の奥にシャケの円やかな旨味。
オニオングラタンスープの再構築でしょうか。すりおろしたチーズの上に濃密なタマネギスープ、小タマネギの中にはアールグレイのエスプーマ。このような企画モノには難色を示すことが多い私ですが、この料理は素直に美味しい。柔らかな鶏肉の調理やタコによる食感の変化など、ちょっと普通ではない工夫が随所にみられ、その全てがきちんと旨い。
宮崎産のカツオの表面をバーナーで炙り、ビーツと共に頂きます。ソース(?)にトマトのエッセンスを用いているのか仄かな酸味が記憶に残りました。
メインは鴨。基本的にはIH調理の店内ですが、この肉の表面ばかりは炭火焼きに拘っていました。見た目通りの正統的な味わいで美味。白眉は付け合わせとソース。バターで火を入れたゴボウと素揚げしたゴボウの食感の対比が面白く、肉汁のソースとバターのソースのコントラストも興味深い。複雑な組み合わせながら全てが完璧に調和しており、もっと彼の色々な料理を食べてみたいという気にさせてくれます。
デザートは「フリュレ」。リンゴをチョコレートでコーティングしたような造形であり自然と笑みがこぼれます。
中身はチョコレート風味のムース(クリーム?)にドロっとした果実。ひんやりと冷たく、しかしながらアイスクリームほど慌てて食べる必要もなく、量もたっぷりでのんびりと楽しめる逸品。罪深い美味しさです。ひとつひとつビンに入れてテイクアウトすることもできます。
白金高輪に新星現る。何とも鮮やかなお店でした。前衛的な料理ながらその全てがきちんと美味しいのが好感が持てますね。加えてこれだけのややこしい料理をかなりのスピード感をもって出し切る段取りの良さには舌を巻く。シェフがテンパることは決してなく、スタッフたちに適確に指示を出し効率よくストーリーをまとめていく余裕は長年大箱で働いてきたからこそでしょうか。しかも料理は5,000円ポッキリとか最高かよ。
課題はちょっと落ち着けない点。やはり店のキャパに比べて登場人物が多すぎに感じました。狭いカウンター席の背中をサービスがビュンビュン通り抜けていくので、ゴルゴ13的に背中に立たれるのが苦手な方はどうにもくつろげないでしょう。
また、カジュアルな空間でポンポンとテンポ良く出されるため、料理に対するありがたみに欠ける部分があり、仮にこれらをより厳かな雰囲気の中で恭しく供されるのであれば更に美味しく感じるのではなかろうか。人は雰囲気の奴隷である。
もちろんこればっかりは誰が悪いとかいう話ではなくて、今後の移転や拡張、もしくは席数の減少などを通じて解消されていく話なのかもしれません。完璧よりも前進だ。
また、カジュアルな空間でポンポンとテンポ良く出されるため、料理に対するありがたみに欠ける部分があり、仮にこれらをより厳かな雰囲気の中で恭しく供されるのであれば更に美味しく感じるのではなかろうか。人は雰囲気の奴隷である。
もちろんこればっかりは誰が悪いとかいう話ではなくて、今後の移転や拡張、もしくは席数の減少などを通じて解消されていく話なのかもしれません。完璧よりも前進だ。
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白金高輪は粒揃いの佳店が多いです。ちょっと不便な立地も良いんでしょうね、若い子たちを寄せ付けることが無くて。