広尾の笄(こうがい)公園の目の前という好立地(写真は食べログ公式写真より)。窓が大きく開放的な間取りであり、桜の季節なんてもそりゃあもう凄いことになるでしょう。
岸本直人シェフは銀座「スエヒロ」、渋谷「ラ・ロシェル」経て渡仏。ロワール「ラ・プロムナード」、パリ「ジェラール・フォシェ」、ベズレー「レスペランス」で腕を磨き、帰国後しばらくして当店をオープン。
ドリンクメニューで最初に目を引くのは「シャンパーニュフリーフロー6,000円」。このあと運動に行く予定だったのでさすがに控えましたが、日時と人次第ではお願いしていたかもしれません。今回はおとなしく3杯のペアリング3,300円を。シャンパーニュが含まれるのが嬉しい。
「ポロ葱の温かいポタージュ トリュフの薫り」。まあよくあるスープだろうと高を括って一口含むとその美味しさは電力にするとメガワット級。こんなにも旨味が強く奥行きのあるポタージュは中々ない。「トリュフの薫り」とか言って薫りどころかザクザクとみじん切りされたトリュフがボンボコ入っておりこれまたご謙遜を。この時点でこのお店は凄いぞと確信。
色の薄いパンは見た目通りのプレーンな味わいであり、ちょっと物足りないかなあと思っていたところ、
有塩の発酵バターと合わせて食べればちょうど良い頃合いに。メーカー違いで有塩/無塩の提供を分けるあたり偏執的なこだわりを感じました。
「赤座海老とジャガイモのロゼット ディル風味のエマルジョン」。見て下さい、この研ぎ澄まされた感覚の世界。4,500円のランチコースでここまでやるかね。赤座海老を覆うのはインカのめざめ。ポールボキューズもかくやと思わせるウロコのような使い方であり、その1枚1枚がいちいち旨い。周囲を固めるマリネした野菜たちも最高品質。
見て下さい、この赤座海老のボリューム感。断言しましょう、このランチは絶対に儲かっていません。「赤座海老は別格ですね。季節によって仕入れはだいぶ苦戦することもありますが、この席数だからなんとか確保できます」。
基本はペアリングなのですが、いくつかのボトルを持って来てくれ、「お好みがあればお好きなものでどうぞ」というフリースタイル・ペアリング。私は赤座海老の甘味に敬意を表してやや甘めのピノロゼを。ルクセンブルグ産というレアキャラであり、女の子が好きそうなサクランボキャンディのような味わいでした。
「大山鶏のポッシェ フォアグラ 豚足 根菜のブイヨンスープ」。引き締まった味わいの鶏肉にアスパラガスのソース(?)が爽やかに光る。フォアグラにいやらしいクドさは全くなく、ブイヨンに溶かしながら食べればもう絶品。豚足のカリっとした食感と脂身は全体を印象付ける子気味良いアクセント。ほんの24時間前頃に同じ大山鶏の料理を食べたばかりなのですが、まるで別格。もちろん昨日は2,500円のコースであり本日と2,000円の差はありますが、2,000円では説明がつかない大いなる差を感じました。これが、料理だ。
程よく動物を感じる料理だったのでカリピノをチョイス。いつの間にかピノノワール縛りのランチとなってしまいました。何の気なしに3杯飲みましたが、これで3,300円というのも凄いこと。
甘味に入ります。「国産いちごのソルベとコニャックのグラニテ」。その名の通りの味わいなのですが、実はこの皿の主役は右上のクレームブリュレではなかろうか。濃厚かつ繊細。焦げたカラメルが大人の味わい。
小菓子には焼きたてのフィナンシェ。ゲストが口にするものに対していちいち愛情が感じられます。私はフランス料理における甘味をATMの暗証番号と同じくらい大事なものと捉えているので、この1皿のレベルの高さは有難し。
ミニャルディーズ、続く。ショコラのタルトレット(小型のタルト)にクグロフ型で作った焼き菓子。これが和三盆主体で誂えられた面白い味覚であり、シェフの演出家としての技量はかなりのものでしょう。
折り目正しいコーヒーを飲んでごちそうさまでした。
一通り食べて飲んで税サ込で1万円を切りました。これは筆舌に尽くし難い費用対効果の良さです。では、あまりにカリテプリに優れているのでまたランチに来たいかというとそうではなく、次回は夜に、最高値のフルパワーバージョンでお料理を楽しんでみたいとワクワクさせるランチでした。
お土産にケリーバッグ風の紙箱に入れられた小菓子を頂きました。シェフ・支配人そろって階下まで降りてのお見送り。うーん、この店は本物だ。食事が旨くて費用対効果の良いお店はそれなりにありますが、食材に対する愛情やゲストに対するおもてなしの気持ちがしっかりと伝わってくるお店は意外に少ない。こういうお店を知っていると人生を謳歌できること間違いなし。オススメです。
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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
- ガストロノミー ジョエル・ロブション ←最高の夜をありがとう
- アピシウス ←東京最高峰のレストラン
- ナリサワ ←何度訪れても完璧
- ナベノイズム ←世界観がきちんとある
- ル・マンジュ・トゥー(Le Mange-Tout)/神楽坂 ←接客は完璧。料理は美味そのもの。皿出しのテンポも良く、とにかく居心地の良いお店。客層も好き。
- SUGALABO ←料理だけなら一番好きかも
- エクアトゥール ←天才によって創られる唯一無二の料理
- ete(エテ) ←美食の行き着く先はお抱えの料理人
- レヴォ ←人里離れた場所にありながら、日本いや世界でもトップレベルのフランス料理店
- フロリレージュ ←間違いなく世界を狙える
- アサヒナガストロノーム/日本橋 ←そこらのフランス料理店とは格が違う。
- キャーヴ・ドゥ・ギャマン・エ・ハナレ ←世界を狙える日仏料理
- ティエリー マルクス ←料理の良さはもちろんのこと、ワインのペアリングが見事