ちなみに今夜は女の子たちのお食事会にお呼ばれです。「友達に『明日はタケマシュランとゴハン行くんだ』って言ったら、『でたー!愛人枠!』ってバカにされちゃってさ。ムカついたからコレ買ってきた」
恭しく差し出された箱にはピエール・エルメの新作が。「へへへー、今年のバレンタイン第1号でしょ?愛人なめんなよ」もちろん彼女と私が愛人関係にあるというのは冗談であり、むしろ私のほうが良くしてもらっているので、どちらかというとヒモです。
「このまえスガラボ行ったんだけどさ、あれ、ちょっと高すぎじゃない?ひとり10万円よ10万円」「え~!?あたしオープンしてすぐぐらいに行ったから、3万円ぐらいだった気がするんだけど」最近の東京における飲食業界のバブり方は異例を通り越して異常ですね。私はいい加減うんざりしてきており、そろそろ戦線離脱するつもりです。
山形牛サーロインのブレザオラ(生ハム)。コンドームのように薄く薄くスライスされた牛肉の生ハムが、舌の上に乗せた瞬間に溶けていく。旨味が強く、甘い。この食感は中々ないぞ。野菜もたっぷりであり満足度大。先頭打者ホームランです。山形牛特製手ほぐしコンビーフ。カトギューの代名詞。コンビーフと言えば缶詰のコンビーフ味が一般的ですが、本来のコンビーフとはこういうものを指すのでしょう。肉と脂の味が強い。「銀座店だとアツアツのゴハンの乗せてくれるの。脂がスっと溶けて最高なんだから」
カブのスープ。ショウガの風味がきいて内臓が温まる味わいです。
飲食店バブル化こんな状況にいつまでも付き合ってられるかよ問題、続く。その一食に何万円もかけるのなら、地方都市(もしくは安近短なアジア)のローカルな旨いもの屋にでも行った方がよほど満足度が高い。あるいは上質なホテルに泊まってダイビングやゴルフなどのアクティビティに興じるとか。ここまで飲食代が跳ね上がってくると、別のお金の使い道が見えてきます。壊れた蛇口のようにレストランに金を払うのはもうやめよう。
山形牛頬肉の赤ワイン煮込み。仕込みに3日を要するという力作。なるほど旨い。牛頬肉の赤ワイン煮込みは調理に裏技といったものが存在せずどの店も似たようなレシピであり味も似通ってくるものですが、当店のそれは素材が良い分もう1段階上のレベルように感じました。
酒が安い。先の生ビールは600円で、ワイン3杯セットなど2,500円です。加えてワインのスタイルに合ったグラスでの提供を心がけており、リーズナブルながらもワインに対する愛情が感じられました。
山形牛100%のハンバーグ。細かく挽かれており粗挽き原理主義者としては物足りなさはあるものの、それを差し引いても肉の存在をはっきりと感じられる、威風堂々としたハンバーグでした。備え付けのヤングコーンやシイタケが地味にめちゃんこ旨い。
素朴な疑問なのですが、5万円も10万円も取る料理店の店主たちに一度問うてみたい。本当にそんなことがしたくて料理人になったのか、と。地球の裏側から食材を持ってくる必要ある?試験管で食べる必要ある?周りが値上げしてるからって追随する必要ある?何もかもが馬鹿らしい。将来的に、美食というエンターテインメントは美術品などと同様、一般人とはかけ離れた存在に昇華していくのでしょう。
メインは赤身部位とサーロインの食べ比べ。赤身はカメノコ。肉質がキメ細かく赤身の美点が凝縮されています。サーロインも当然に美味しいのですが、脂の量がデロイトトーマツであり、ちょっとしつこく感じました。
〆の炭水化物は山形牛たたきご飯。赤身を炭火で仕上げており、肉ながらサッパリとした味わいです。醤油ベースのタレや爽快感溢れるワサビなど、日本人であれば誰もが好きな味でしょう。
味噌汁は赤味噌ベース。肉の味の濃さに負けないタフな味覚であり、ちょうどよいバランス感覚でした。
「沖縄にひらまつのホテルができたらしいから、みんなで行こうよ」近年ひらまつはホテル事業に力を入れており、昨年に宜野座にオープンしたオーベルジュはすこぶる評判がよろしい。20室程のスモールラグジュアリーリゾートであり、もちろん1人1泊5万円を超えるウルトラ高級ホテルではありますが、一流の料理も込みと考えると悪くない支払金額です。
デザートもたっぷり。アイスはハーゲンダッツのイチゴ味に匹敵する味わいであり(ハーゲンダッツはアイスとして相当旨い)、ミルフィーユ生地と共に食べ応え抜群です。
「ひらまつ、安いじゃん。スガラボ1回行ってお釣りくるよ。いま決めようよ。勢いって人生において一番大事よ」ということで、女子3人と私1人の女子旅が決定しました。部屋も予約したし、飛行機も押さえた。人生は決断の連続だ。
息の臭いオヤジが風俗嬢に法外な金額のメシを奢っている間に、私は沖縄での女子会を楽しんできます。みんなで水着でジャクージにつかってシャンパーニュで乾杯するイメージです。飛行機代を含めても10万円程度でお釣りが来る。
ビットコインだの不動産投資だの、お金の増やし方ばかりがフォーカスされる今日この頃、私はお金の使い方について、今一度真剣に向き合いたいと考えた夜でした。
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