深い深い地下にあり照明も薄暗いのですが、天井は高く開放的。席は200近くあり、とにかく箱が大きいという印象です。客層は(香港人にとっての)外人がほとんどです。
ちなみに当店は「Maximal Concepts」という会社の経営であり、当店以外にもいくつか中華料理店を出店しており、Mott 32はバンクーバーやバンコク、ドバイにも展開しているそうな。
ワインの値付けは市価の2~10倍以上と滅茶苦茶であり、ちょうど良いワインを探すのに骨が折れる。選んだ1本は中国のカベルネ。香りが華やかでバランスが良く、嫌なタンニンは全く感じられません。悪くない、どころか、かなり良い。当店で飲むと1万円程度でしたが、ネットで検索しても4,000円程度だったので、そう悪くない価格設定です。
カニと豚の小籠包。1ピース1,500円と鼻血が出ます。スープがカニの旨味で満ちており、肉を頬張ると豚肉のコクもしっかりとしており滅法旨い。ただし1ピース1,500円という価格設定は高杉晋作です。これならカニ缶買ってきて551に割って詰め込んだほうが満足度は高いであろう。
連れが予約時に注文しておいてくれたイベリコ豚のチャーシュー。個人的にイベリコ豚は生ハムとして食べるのが一番であり、その他の調理は好まないのですが、この皿に限っては話が別。ふくよかな香り、キラリと輝く照り、酷く柔らかい食感、脂の甘味、肉の深み、どれを取っても一級品であり、本日一番のお皿です。ボリュームもたっぷりでありもうこの皿と先の赤ワインだけで満足してしまいました。
スペシャリテの麻婆豆腐。ロブスターを麻婆豆腐の具材にしてしまうとは大した勇気である。小指の先ほどにカットされたロブスターの身がゴロゴロと加わっており、海老好きとしては最上とも言える状況です。調味は見た目ほど辛くなる素材の風味を邪魔しません。ただし豆腐は改善の余地あり。ツルンとした食感で奥行きが無く、もうちょっと上手くやれそうな気がしました。
「四季豆は日本で見かけることのない野菜だから、是非食べて欲しい」と、在住者。「干扁四季豆」という料理であり、平たく言うといんげんとひき肉の炒めものです。サヤインゲンに近い食材なのかなあ。サヤインゲンよりも凝縮感があって、ニンニクの芽に少し寄せたような風味があります。これは新たな発見だ。
酢豚。高級中華にありがちなゲンコツサイズのものではなく、いわゆる小間切れタイプです。パイナップルの使用は賛否両論ありますが、私は結構好き。酸味や甘味との出会いだけでなく、肉そのものも柔らかくなるもんね。
食中ならびに食後にはプーアル茶を頂きました。ミネラルウォーターは1,000円以上するのに、より手間がかかり付加価値が高いはずのお茶は数百円と、やはり当店の価格設定は謎であり、ポリシーが見えない。
香港まで来た甲斐がありました。この中華料理はちょっと東京には無いですね。先鋭的で、味覚が多様で、しっかりと美味しい。ここ数年における我が心のチャイニーズランキング1位かもしれません。今度はもうひとつのスペシャリテ、事前予約必須の北京ダックにチャレンジしてみようかしらん。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。
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