成清毅シェフは大分の割烹料理店から料理人としてのキャリアをスタートさせ、四ツ谷オテル・ドゥ・ミクニ(HOTEL DE MIKUNI)でフレンチの基礎を学んだ後に渡仏。グランメゾンやネオビストロで研鑽を重ね、2013年に満を持して当店をオープン。私の自宅からそう遠くないため必ず行きたいリストに入れていたのですが、なかなか機会を得ることがなかったのです。
「お誕生日おめでと。遅くなってゴメンね」本日は私の誕生日からちょうど2か月を経過した日。彼女も私も海外を飛び回る系なので、なかなか予定が合わなかったのです。
「ここ、初めてなんだ。家近いし、絶対来たことあると思ってた。あなたと食事するのって、ほんと店選びに困るんだよね」偶然にも先週の同じ時間帯に全く同じセリフを言われたばかり。うーん、そんな厄介なつもりはないんだけどなあ。
最初の一口はモヒート。黄緑色の球体に一息で歯を入れると、ドゥヴァーと想像以上にたっぷりな液体が流れ出てきます。この食前酒は面白い。一本取られました。
ロシア式の黒パンにミモレットを塗します。下に敷かれた石の一粒一粒が温かく、球状のパンが丁寧に岩盤浴されていました。シンプルながら品のよいピザのような味わいでありわかり易く美味しい。彼女との前回のデートは偶然にもロシア料理店だったのですが、その店のどの料理よりも美味しかったです。
牡蠣。一口サイズの小さな牡蠣にオイル主体で軽く火を通しています。しかしこの味わいが里中的小さな巨人というか、凝縮感に溢れた個体であり実に旨い。それに寄り添う調味も完璧。加えてアミューズの時点でこの手の込みようは、料理人の姿勢として素晴らしい。
カツオの藁焼きの再構築。ニンジンなどの野菜を炭化させ黒く彩り、健康的なカツオに塗します。燻製のような香りに筋肉質なカツオの旨味。やや酸味のあるフォアグラのソースもグッド。本日一番のお皿です。
合わせるワインはシチリアのトレッビアーノ。自然派のものであり冒頭からヒネってきます。
南仏系のスープ。白インゲンや生ハムを主原料として8時間も煮込んだそうな。素朴ですが滅法旨い。一般的にフレンチとは絵のような皿を想像しがちですが、その真髄とはこのような料理にあるのではないか。おかわりもOKで幸せなひととき。
お次はフランスのシャルドネ。想像していたよりも酸味が豊か。個人的には先の料理に合わせるのであれば、もう少しボリューム感のある樽香のきいた1杯で楽しみたかったです。
パンはメゾンカイザー。仕入先を公開するその割り切った姿勢は爽快感すら感じられます。カルピスバターと合わせて当然に良し。
今が旬のヒラスズキ。料理法を選ばないプレーンな味わいであり、料理人の腕が試されます。モリーユを主体とした複数種のキノコで香りを与え、鰹節で旨味を添加。ありそうでない面白い調理でした。
メインは豚肉。清澄な肉質で甘みが強く美味しい。特有な臭みなどもなくスイスイ食べることができます。スティックセニョール(長いブロッコリー)の青い味とクレソンの苦味も程よく、ジュ(肉汁)のソースとも相性も良かったです。
カリフォルニアの赤。太陽のパワーは感じつつも品の良い味わいであり、先の豚肉にぴったりです。
お誕生日のプレートをご用意頂けました。やはりお互いを思いやる関係は尊い。
続くデザートはイチゴにフロマージュブラン(フレッシュチーズ)、グリーンピースのペーストです。イチゴの風味が強く、フロマージュブランがその勢いを優しく受け止めます。グリーンピースが興味深いアクセント。
チョコ風味の生地やムースにサクサクとしたスナックをふりかけ、キノコを突き刺します。これは美味しいですねえ。キノコの土のような香りがカカオの風味にベストマッチ。これは丼いっぱいで食べたいレベルです。
オーガニックティーはMighty Leaf Tea Company(マイティーリーフ)。カリフォルニアにある紅茶専門店です。試験管に入った茶葉を自由に嗅ぎ、好みの一品を選びます。最近ここのお茶を用いる飲食店が多いですね。
お茶菓子も出来合いのものでなく、きちんと手が込んでいます。ライチ風味のギモーブ(マシュマロ)が美味しくて、そのままマットレスにして昼寝したいレベルです。
素晴らしいお店でした。最初の1~2皿の時点でこのお店は本物だろうと薄々感じていましたが、その後の料理からデザートまで一切の妥協の無い完璧な流れが感じられました。内装は落ち着いており客層も良く、程よく居心地の良さを感じさせる雰囲気も好き。大事なデートにもってこいのお店でしょう。次回は夜にお邪魔したいと思います。
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