KNOCK/六本木

もう少し飲もうか、ということで、六本木界隈で勢いのあるイタリアンにフリーで入店。我々はギリで入店できましたが、後続の客は肩を落として帰ったり、テラス席で待ったりと、ひっきりなしに客が訪れる人気店です。
赤のグラスで乾杯。前菜としてパテを注文。「他にご注文は?」と店員に問われたので、パテをツマミながらじっくり考えます、と答えると、店員の顔色がみるみるうちに変わります。

「いえ、あの、ただいま大変混みあっておりまして、ある程度まとめてご注文頂かないと、提供にお時間を要してしまうので」と店員は言う。時間がかかっても構いませんよ、飲みながらじっくり考えますので、と私は返します。

「それでは、もう少しお考えがまとまってから、注文を改めて取りに伺いますね」と彼は食い下がります。まるで私の考えがまとまっていないかのような物言いですが、私の考えはあくまで『前菜をつまみにのんびり飲みながら、ゆっくりと考えたい』でまとまっています。
そんなやり取りの後で食べる料理の味は中くらいである。
何だか気持ち悪いなあ(画像は公式ウェブサイトより)。アラカルト注文が原則のお店なのに追加注文を認めないってどういうこと?「お時間を要する」「お待たせする」というのは理解できますが、待つのは別に構わないと客が言ってるのに、なおも食い下がってくる真意がわからない。

「バラバラと注文されると、僕がキッチンに怒られるんですよ」が本心なのかもしれませんが、それならそうと、懐に飛び込んでそう言ってくれればいいのに。一見、客のことを心配しているように見せかけて、結局は自分の都合を優先する。人はそれを偽善と言う。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いのか、客層もあまり良くは映りませんでした。大人数のグループが大声でゲラゲラと笑い手を叩きあう様は騒音以外の何物でもない。明らかに周囲のおしとやかな客は迷惑そうな顔をしているのに店員は黙認。追加注文は許さないが乱痴気騒ぎはOK。そういうポリシーのお店なのでしょう。ルールブックは店にある。
「追加のお飲み物はいかがですか?」食べ物の追加注文については嫌な顔をされますが、飲み物については積極的に売り込んできます。イタリアのクラフトビールを注文。エールタイプなのですが、色は淡い。それでも度数は7.5%とヘビー級。桃のような香りも感じられ、味わいに深みがある。良い意味での違和感が続く、魅力的な1杯でした。
キノコ山盛りクリームパスタ。ミッドタウン店にお邪魔した時も思いましたが、やはり当店はパスタがいいですね。そういう意味ではランチでパスタだけを注文するというのが、最も効果的かつ効率的に当店の美点を楽しめるのかもしれません。
というわけで、費用対効果は良いがサービスと客層はイマイチという、評価に揺蕩う食後感となってしまいました。解決策としては宴会利用ですね。5人以上集まれば、コース料理に飲み放題をつけて6,000円にまとめてくれるとのこと。加えてこちらが騒ぐ側にまわってしまえば客層について気になることも無いでしょう。物理的にも論理的にも場を統べる声の大きさが満足度を左右するお店だと感じました。


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六本木は難しい街です。おっと思えるリーズナブルな店から、高くてギラギラしてるだけのハリボテのようなお店も多い。私が好きなお店は下記の通りです。
レストランの在り方に迫るというよりは、六本木の今にクローズアップした特集。ラグジュアリーで儚い夜の街へと誘うガイドブック。紙媒体は売り切れちゃうのでお早めに。