sisi煮干啖(ししにぼたん)/新日本橋


私の愛読書であるこの本は、きちんと着席するレストランが掲載されることが多いのですが、2019年度版でひときわ異彩を放っていたのが当店「sisi煮干啖(ししにぼたん)」。神楽坂の肉イタリアン「カルネヤ」や西麻布の熟成肉レストラン「カルネヤサノマンズ」のオーナー、高山いさ己シェフが日本橋にパスタ専門店をオープン。
店名からして恐らくは煮干系の味わいなのでしょうが、それにしても変わった店名。実際に訪れて合点が行きました。ロゴが花札の「獅子に牡丹」。ししにぼたん、sisiにぼたん、sisi煮干啖。駄洒落である。
カウンターは10席ほど。まさに鰻の寝床と称して良い長細いレイアウトであり、恐らくはラーメン店の居抜きか何かでしょう。正午ちょうどにお邪魔した際には満席であり、その性別は全て男。その後も断続的な待ち順列が絶えないという印象。12:30頃には売り切れ閉店のこともあるそうです。
まずはサイドメニューで200円の「にぼ吸い」が到着。煮干のお吸い物というよりは、煮干の風味が漂う緩めのポタージュという味わいです。海苔の香りがとても良い。ただし真打の価格設定に比べて200円というのは割高に感じました。100円だと嬉しいのだけれど。
主題の「にぼたん」。中~太目の生麺をアルデンテに茹で、煮干主体の出汁ならびにバターと共にフライパンで炒め、仕上げに煮干フレークを混ぜ込んでいるように見えました。ムチムチとしたワガママボディな麺の歯ごたえに、覚悟していたよりも遥かにマイルドな煮干の風味。ややもすると混ぜそば的な味わいであり、男性客に人気があるのも頷けます。

トッピングのチャーシューは「とみ田」のそれと方向性が同じであり、つまり美味しい。ぎょっとするほど柔らかい豚肉の伸びやかな味わいは棒で買って持って帰りたいほどです。うずらの卵は無味無臭で期待はずれ。何かの味に漬け込んで欲しいところ。
味や食感に変化を加えたい方は、卓上の皿から追い煮干しましょう。その他、山椒もおかえれており、これが煮干の風味に実によく合う。
このクラスのパスタを食べて1,000円でおつりがくるのは最高ですね。脳汁が出るほど絶大に旨いかというとそれは違いますが、日々の生活に寄り添う、親しみやすい味わいです。その親しみやすさ故、自宅での再現も可能かもしれません。

昼しか営業しておらず売り切れ仕舞いなのは扱い辛いですが、ちょっと早めにオフィスを抜け出して、もしくは遅めの出勤時(営業は10:30~)にどうぞ。


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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
十年近く愛読している本です。ホームパーティがあれば常にこの本に立ち返る。前菜からドルチェまで最大公約数的な技術が網羅されており、これをなぞれば体面は保てます。

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