木目調で落ち着いた雰囲気の店内。テーブル間隔にもゆとりがあり、暖炉と薪など心あたたまる誂え。非常に居心地が良いです。忠内秀哲シェフは鮨屋のせがれであり、イタリアの名店で研鑽を重ねた後、広尾の地で独立(以上、写真は食べログ公式ページより)。
スパークリングワインで乾杯。ワインは3杯~のペアリング(泡白赤)が3,000円台から用意されており、立地と店構えの割に良心的な価格設定です。
開幕投手はカルボナーラの再構築。黒コショウと炭の風味が漂う土台にチーズが含まれた温かい一口。実に手の込んだ作業であり、今後の展開へ胸が高鳴ります。
白インゲン豆のスープ。ドロリとした食感の豆のスープにカラスミの風味が心地よく響く。イカや豚肉を用いたポルペッティ(肉団子)由来のコクが豊かであり、すなわち旨い。
パンは3種。乾燥したフォカッチャ出して終わりのイタメシ屋が多い中、当店のパンは調味がされていたり、クルミやジャガイモを用いていたりと、それ単体で美味しいものばかりで満足です。
大根をウロコに見立てて寒ブリを彩ります。ソースはプッタネスカ(マリナーラ)調であり、トマトとニンニクの風味が程よいアクセント。魚が旨く、調味も上手い。
タラの白子のフリット。カラっとした歯ざわりにトロっとした舌ざわり、白髪ネギのツンとした風味。何とも小気味良い料理です。ソースはトマト主体のリボリータ(野菜の煮込み)であり、先の皿と味覚がやや重複するので、どちらかを変えた方が良いかもしれません。
まさかのアメリカの白がやってきました。樽がギュンギュンにきいたパワーあふれる1杯であり実にコッテリ。セクシーな白子の味わいにピッタリです。
スパゲッティには牡蠣をミンチにしたラグー。大根は出汁っぽい何かで炊かれており、どことなく日本料理を思わせる味わいです。量もたっぷりで大満足。お店としては少量多皿を謡っているのですが、それぞれのポーションは中々のものであり、中量多皿という新ジャンルを確立したかもしれません。
メインディッシュは猪のロールキャベツにフォアグラ。なんとも猛々しい外観と語幹の料理ですが、実にサクサクと食べ進めることができる調理です。フォアグラの濃厚の旨味は保ちつつ、軽い。猪の臭みも丁寧に除去されており、残されたのは肉の濃密な味覚。
合わせるワインはコチラ。先の料理を食べるために選抜された甲斐があって、まさに猪突猛進といった赤ワインでピッタリです。
デザートに入ります。まずはフランボワーズのメレンゲとルビーショコラのソルベ。何とも品の良い味わいであり、花畑のような味わいです。もっと量を食べたいなあと若干のストレスを感じましたが、それには大きな理由があったことを後に知ることになる。
デザート2皿目は燻製したチョコレートのソルベにコーヒー風味のパンナコッタ。ソルベに薫香が満ち満ちており興味深い味わい。パンナコッタも可愛らしい味わいの後にビターな余韻が残り、イタリア料理店でここまで手の込んだ甘味を楽しめるとは嬉しくなる。
じゃじゃーん、お茶菓子はお好きなものをお好きなだけでーす。これは凄い。20席程度の個人店でここまでやってのけるイタリア料理店は初めてです。イタリアンにとらわれずフランス系のお菓子も盛りだくさんであり、そのいずれもにいちいち手が込んいます。
コーヒーまで一切の手抜き無し。ごちそうさまでした!
お会計で驚愕。ハイレベルな料理を腹いっぱい食べ、泡白赤と3杯飲んでひとりあたり9千円程でした。何かの間違いじゃないかと思って明細を検算しても、うん、間違いない、9千円である。これはちょっとリーズナブルを通り越して、もはや尊いですね。広尾五丁目の方向に足を向けて眠ることができませんありがたやありがたや。
予約がいつまでたっても取れない上、何万円もする割に大したことのないお店が増えてきている最近の外食環境に、ここのところ嫌気がさしていたのですが、いやはやこういうお店が存在するのであればやっぱもう嬉しくなっちゃいますねウヒョヒョ。おーいみんな、広尾に抜群に旨くてそんなに高くない店があるぞ、と宣伝して回りたいレベルです。おーいみんな、広尾に抜群に旨くてそんなに高くない店があるぞ、と。
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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
- リストランテ カッパス(Ristorante káppas)/表参道 ←コスパ抜群。質実剛健。
- プリンチピオ ←こんなに有意義な6,800円があるか?
- ポンテ デル ピアット (PONTE DEL PIATTO)/広尾 ←少量多皿でどれも旨い。
- アッピア/広尾 ←客の注文力が試される偉大な店。すごく高いのが難点。
- RISTORANTE YAGI(リストランテ ヤギ)/代官山 ←都内の予約の取れないイタリアン・レストランの代名詞となる日も近い。
- リストランテ・オステリア/六本木 ←ベーシックにすごく美味しい。誰もが納得。
- サローネ2007/元町 ←ランチのポモドーロは絶品。グラム数が指定できるもの最THE高。
- トラットリア アマルフィターナ ←精神的にも費用対効果も本物のトラットリア
- ロッツォシチリア/南麻布 ←雰囲気良く客のレベル高し。ウイキョウのパスタが秀逸。
- カーザヴィニタリア/麻布十番 ←ゴージャスな店内と落ち着いた雰囲気。そのくせ高くない。
- アクアパッツァ/広尾 ←日本人向けイタリアン。誰が食べても納得の味わい。
- アンビグラム/広尾 ←肉塊に喰らいつく幸せ。やや割高なのが難点。
- サーラアマービレ/銀座 ←ランチのフリーフローがお得。