白金高輪からも広尾からも徒歩15分は要する遠い陸の孤島。しかしながらこのあたりは佳店が多く、例えば私の大好きなアルゴリズムなどはすぐお隣です。
カウンター7席という小さい店内。クラシックな割烹というよりは若干ポップな内装であり、気を張ることなく過ごすことができます。予約時間の正午にお邪魔するとすぐに6席まで埋まりました。
ランチのアラカルトメニューはコチラ。一品料理をいくつかに、食事として蕎麦で〆るのが一般的な模様。いずれも1,000円前後であり、高級居酒屋として気軽に楽しめます。もちろん夜のコースを注文することも可能です。お酒は1合1,000円がほとんどでした。
〆さば。1,000円でこのクオリティはリーズナブル。品の良い締まり方であり、酢よりも鯖の旨味が前面に出て好きなタイプです。
しかしこの時点で入店後20分が経過。開店と同時に入店した最初の客の最初の1口に20分を要するのはいかがなものか。我々などはまだ良いほうで、コース料理を注文していた他の客などは30分以上何も口にすることなくひたすら酒を飲んでばかりで実にヒマそうなので、こちらがハラハラしてしまいます。
海老芋の唐揚げ。いったん出汁のようなものに漬けてから揚げているのか、芋そのものに調味が感じられ美味しい。ホクっとした食感にねっとりとした舌ざわり。
この時点で12:30を過ぎており、なんと13:00予約の客が到着してしまいました。気がきく常連のようですぐにお店を離れて時間つぶしに出たまでは良いのですが、どう考えたってこのペースでは13:00に席を用意できるはずがありません。
さわらの幽庵焼き。この時点で12:45です。ガラス窓から外が見え、次の客が外で凍えながら待っているのがよく見えます。我々がチンタラしていたせいで入店が遅れたと思われるのは嫌なので秒速で平らげたため全く味わうことができませんでした。
ここでお店から驚愕の一言。「お酒のおかわり、お持ちしましょうか?」(゚Д゚)ハァ?何考えてんだ外で次の客が待ってるだろ!こんな珍プレーはサービス業では許されない。
ぶっかけ蕎麦。手打ちのものであり凛とした佇まいが実に旨そうなのですが、時刻は既に13:00をまわっています。支払いに時間がかかってもアレなので、気を使って先にお会計をお願いします。
カードを預けてさあ食べるぞと腕をまくるのですが、しばらくして「あの、もうカードを受け付けてしまいましたが、本来であればランチはカードを承っていないんです。今回はいいですが、次回からは現金で」と謎のお叱りを受けました。そんなルール、一見客の私たちは知らんがな。というか、もう済んだ話なんだから、わざわざ客に言う必要あるのかね?こっちが悪いような言い方しないでくれる?そんなやり取りの後ではせっかくの蕎麦の味わいも中くらいである。
連れはからすみ蕎麦。一口頂きましたがパンチのある味わいであり美味。ぶっかけ蕎麦はオクラのヌルヌル感が強烈で蕎麦の喉越しがぼやけてしまったので、蕎麦そのものを味わうのであれば、からすみ蕎麦をチョイスしたほうが良いでしょう。
お会計はふたりで7千円と少し。店構えや品質を考えれば悪くない支払金額です。が、オペレーションの悪さを考えれば全然ダメ。いや、オペレーションが悪いのではなく、「これだけ客を受けたらこれぐらい時間がかかる」のような車幅感覚が欠落しています。11:30開店にして入店時刻を平準化させるなり、昼の2回転目は予約を取らないなりすればすぐに解決する問題なのになあ。
今のところ飲食店として成立しておらず、間違っても接待などでは利用できません。夜遅くの予約で気の置けない仲間とのんびり酒を飲みに行くか、思い切って貸し切りにしてしまうかの、ゆるーい使い方でどうぞ。
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白金高輪は粒揃いの佳店が多いです。ちょっと不便な立地も良いんでしょうね、若い子たちを寄せ付けることが無くて。
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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。