リョウリヤ ステファン パンテル(Stephan Pantel)/丸太町

京都御所南に位置する京都フレンチの最高峰と名高い当店。食べログ4.17で銅メダル獲得(2018年11月)。シェフは店名の通りのフランス人であり、出身の南仏で研鑽を積んだ後に来日。
建屋は築100年を越える京町家をリノベーションしたもの。ハコはさておき、京野菜など京都の食文化とフランス料理の融合を目指す話題店です。
昼のコースは5,000円と格安なのですが、ワインの絶対価格が高い。となるとペアリングが気になり始めるのですが、5種で6,500円と食事よりも全然高いのが何だかなあ。このバランスの悪さは大阪「アニエルドール(agnel d'or)」を彷彿とさせます。
本題に入ります。美しく飾られた薄切りの柿をズラすと、
シメサバのタルタルが盛り付けられていました。ほう、シメサバ。フランス料理としては馴染みが薄いですが、よく考えるとサバと酢なので当然に美味しいですね。モロッコインゲンのサクっとした歯ごたえもグッド。魚の出汁で造ったジュレやスモーキーな泡ソースなどセンスを感じました。
パンは2種ありいずれも一般的なもの。ソースが多様なので、これぐらいプレーンな味わいものものでちょうどよいのかもしれません。
カボチャのスープ。大地の甘味が感じられる奥行きのある味わい。中央の茶色は牛テールとタマネギを固めたもの。動物的で勢いのある味わいで美味。牛乳にトリュフの風味を移した泡泡ちゃんも美味しいです。
いきなり赤。しかもジンファンデル。なのですが、先の牛テールの屈強な味覚を考えると悪くない組み合わせです。当店はシェフ自らワインを選びサーブならびに説明するのが良いですね。ワインに全く興味を示さない料理人は意外と多いので、このようなスタンスは好感が持てます。
海老のラビオリ。海老の食感がダイレクトに伝わる仕様であり海老好きには堪らない逸品。甲殻類の出汁を用いたソースも実に濃厚。右奥は菊菜とアーモンドのペーストであり程よい苦味が心地よいアクセントに。ちなみにシェフは「はなびら」と正しく発音できており(フランス人は「H」が発音できない)、相当の日本語力を誇るとみて間違いありません。
北イタリアのノジオーラという品種。店主はフランス人だというのにワイン選びが変幻自在である。
魚料理はタイ。一旦蒸してから更に焼く。身質には瑞々しさを湛えながらもバリっとした香ばしさも感じられ良いとこ取りの調理です。白眉はソース。たっぷりと柚子を用いたオランデージソースのような風味であり、付け合せの京野菜と共に至福のひととき。
ワインはブル白フランス人の本領発揮。海老の特徴的な味覚にピッタリ。加えて飲むペースが早まれば多少は注ぎ足ししてくれるのが嬉しい。
メインは鴨。目の前で丁寧に丁寧に火が入れられる過程を見ているので愛着が湧きます。ソースはマルメロ(カリンのような果物)。上品な甘さと酸味のバランスがいいですね。右奥はモモ肉をこれまたマルメロの自家製リキュール+赤味噌で煮込んでおり、ついつい赤ワインに手が伸びる、深みのある味わいでした。
あわせるワインはブルゴーニュ。こちらも先の鴨とは教科書通りの組み合わせであり、安心してグイグイと飲めました。
デザートは生の梨。レモンの風味を身にまとったムースやメレンゲがサッパリとして気持ち良い。他方、黒豆醤油のアイスクリームは濃厚で興味深い味わいでした。給食にもデザートが出るお国柄、5千数百円のランチと言えども甘味に一切の妥協はありません。
ミニャルディーズにも手抜きなし。カカオの風味の使い方が上手です。
折り目正しいコーヒーを頂きごちそうさまでした。これだけ食べて5,000円というのは物凄まじい価格設定です。土台がしっかりとしたフランス料理に京都の食文化のテイストが折り重なり独自性も感じられます。したがって、やはりワインの値段が相対的に高く感じてしまいます。もちろんシャンパーニュ含め割に良いものをたっぷり飲めるので、6,500円という価格設定もワインだけにフォーカスすれば充分にお得です。そう、やはり料理が安すぎるのだ。
その他、料理を出すテンポはやや悪く(入店してから最初の料理まで20分以上を要した)、ランチは現金しか使えないのも不便です。ワインまで飲めば、なんやかんやで2人で3万円近くはかかるのに、旅行者にATMで金をおろしてから来いというのはさすがに面倒。マダムの冷たく威圧的な雰囲気も気になるところ。およそゲストをもてなそうという真心が感じられません。

色々と書きましたが、全体としてはとても満足。しっかりとしたフランス料理に京都のエスプリ。観光客はもとより地元の方でも充分に楽しめるお店でしょう。オススメです。


このエントリーをはてなブックマークに追加 食べログ グルメブログランキング

関連記事
京都はとにかく和食がリーズナブルですね。町全体の平均点が高いのはもちろん、費用対効果も良いことが多い。その文化に影響を受けてか、欧米系のレストランにも目が離せない魅力がある。
JR東海「そうだ京都、行こう。」20年間のポスターから写真・キャッチコピーを抜粋して一冊にまとめた本。京都の美しい写真と短いキャッチフレーズが面白く、こんなに簡潔な言葉で京都の社寺の魅力を表せるのかと思わず唸ってしまいます。